第4話 アバター作成 パート2
いつもありがとうございます。
「と、その前に、このゲームを始めるにあたり、貴女の同意が必要となります」
「……同意、ですか?」
「はい、大まかに説明すると2点あります」
女神様が指をならすと私の前に四角い画面が現れた。
そこには
・フルダイブ下でのゲームプレイにより不慮の死亡事故が発生する危険性があることを認識した上でゲームを続行することに同意します
・フルダイブ下での脳波や血圧、心拍数などのバイタルデータを個人の特定されない形で利用されることに同意します
と書かれていた。
「フルダイブ下においては、五感や痛覚といったものさえも再現されます。それにより、人によってはショック死を引き起こす可能性があることが報告されています。リスクの高い人には医師の許諾、異常な血圧や心拍数の増大などをトリガーとして強制的にログアウトさせる安全装置も装備されていますが、絶対に安全ということは誰にも言えません。そのため、ゲームを始めるにあたりこの同意を得ることが規約で定められているのです」
なるほど。
確かに目の前に本物のドラゴンとかが出てきたら、ショック死する人も出るかもしれない。
これは必要なものと思えた。
「えーっと、二つ目は何の意味があるのですか?」
「はい、二つ目は本ゲームを基本料金無料でお楽しみ頂く代わりに、ゲーム中のバイタルデータを我々の企業で個人の特定されない形で利用させて頂くことに対する同意です。バイタルデータは脳波を含む心拍数、血圧などがどのような状況下でどのように変化するかということを示す学術的にも貴重なデータなのです」
ほぉ、そうなんだ。
脳科学は専門じゃないし、VRとか全然やらないから知らなかった。
「そうなんですね、納得しました」
「ご理解頂けましたら、画面をスクロールして下さい」
言われた通りに画面に指で触れ上にフリックした。
「では、署名欄にサインをお願いします。サインはフルネームでお願いします。指で書いて頂いて大丈夫ですが、必要でしたらペンをお出しすることもできます」
私は署名欄と書かれたスペースに指で名前を書いていく。
ちゃんと書いてる感覚がある。
一連の騒動で忘れていたが、ちゃんと重力も感じるし、立っている感覚もある。心臓の鼓動が速くなるのも分かったし。
なにこれハイテクじゃん。
これが仮想空間とは誰も思わないよ。
「はい、署名ありがとうございました。これで、正式にプレイヤーとして登録させて頂きました」
「では、これよりアバター作成に移りますね。えぃ」
可愛らしい掛け声と共に、目の前に光が円柱状に広がっていく。
円柱状の光のなかに自分の姿が立体映像として映し出された。
「おぉー」
「こちらはフルダイブ時にスキャンした貴女の身体データになります。ここから好きなように変更を加えることが可能です」
光の横には、また画面が現れていた。
そこには身長、バスト、ウエスト、ヒップと書かれており、ボタンをスライドさせることで変更できるようだ。
「念じることでも思い通りに変更出来ますが、初めての人の場合はスライダー方式が扱い易いようなので。あ、ウエスト1センチというような人間として無理な設定はできませんのでご留意下さい」
なるほど、じゃあこれはどうなのかな。
おもむろにバストのスライダーを最大にする。
バストがミサイルのごとく巨大化した。
「……ぷっ、ククッ、ヤバい、なにこれっ、魔乳の私、酷すぎぃ」
スライダーを動かして遊んで笑っていたが、全て元の位置に戻した。
「ハハハ、いやーめっちゃ笑った。」
……
…………さて、どうするか。
ひとしきり遊びまくったがこれから付き合っていく体だ、真剣に考えないと。
うーん、身長は今が少し高めだから、低めにしようかな。
バストも今がCカップだから、Bカップ位で。魔乳は当然なし。
そんな感じで、スライダーをスライドさせていく。
おぉ、なんかいい感じにできてきた。
……いいねぇ、か弱そうで、守ってあげたくなる感じだ。
あ、ちなみに顔は私の顔ではないよ。
日本人らしい、凹凸の少ない顔だけど、普通に可愛い顔でした。
これはゲーム内での個人特定を防ぐためらしい。
「アバターは満足いくものになりましたでしょうか?」
女神様が尋ねてきた。
「あ、はい、体の方は今ので良いと思うんですけど、髪型とか髪色は変更出来ないんですか?」
デフォルトの髪型は黒のセミロングだった。
「後ほどご説明させて頂く予定でしたが、髪型、髪色は課金要素の1つとなっておりまして、現在は制限させて頂いております」
なるほど、考えてみれば、バイタルデータの収集だけで開発費や維持費、広告費を全部捻出できる訳ないか。
基本料金無料でもアイテムなんかを課金対象にして課金してもらうことで利益が出せるのね。一時期流行ったソーシャルゲームもそんな感じだったな。懐かしい。
「えっと、課金で出来ることは何があるのですか?」
これは聞いておかなければ。
後から課金で出来たのに、とかなったら後悔しそう。
「はい、大きく分けますとアバターの制限のアンロック、女神のギフト……つまりガチャのアンロック、特別アイテムショップのアンロック、種族のアンロックの合計4点が可能になります」
ふむふむ。
「まず、アバターの制限について。この機能をアンロックすると髪型、髪色、瞳の色、顔の骨格の四点についてアバター作成時に変更できるようになります。各要素をアンロックするのに500テロル、つまり現実世界の500円が必要となります。髪型、髪色はアースに点在するお店や自分自身によっても変更可能ですが変更可能な髪型、髪色は店やご自身の持っているスキルのレベルによって異なります。瞳の色、顔の骨格はアバターの決定後に変更は出来ませんので、ご注意下さい」
なるほど、そこそこの値段だ。でも後から変更できないなら瞳の色は変えたいかもしれない。
「次に、みんな大好きガチャですね。本ゲームのガチャは武器を対象としています。すべての武器種が出ますが、レアリティの高いものは総じて出にくいですね」
ここでふと疑問。
「レアリティって何種類に分かれているんですか?」
「はい、レアリティは下から一般・高級・希少・至高・伝説の五種類に分かれています。レアリティが上がるにつれて入手難易度が上がります」
「ちなみにガチャは一回400テロルです。」
400円か、後で回そうかなー。
「次の説明に移りますね。特別アイテムショップのアンロックについてです。通常、武器や防具、衣類、アクセサリーはスタート時は一般クラスのものを全ての方に支給しております。しかし、戦闘スタイルや見た目の関係で変更したい場合、一般的には武器や防具、服装、アクセサリーはご自身で用意して頂かなければなりません。用意といっても素材を集め、お店に依頼する、もしくは自作するという流れになります」
なるほど。手間がかかるのね。
「しかしながら、民族衣装や伝統衣装などマイナーなものは、惑星アースに存在するそれぞれの大陸に訪れなければ作成することができません。その手間を解決するのが特別アイテムショップなのです。特別アイテムショップではレアリティ至高クラスまでの防具や衣類、アクセサリーの販売の他、精霊との契約も斡旋いたしております。本ショップ限定の装備もあるので是非ご利用ください」
お手軽に見た目を変更できるってわけね。特別アイテムショップ限定商品とかあるなら、後で覗いて見ようかな。
と、ここで、またまた疑問。
「すみません、精霊ってなんですか?」
「はい、精霊は惑星アースに存在する知的エネルギー生命体のことです。一般的に契約者以外は触れることすらできません。契約と呼ばれる魔法を使うことで契約者とパートナーとなり、契約者は様々な魔術が使えるようになります。また、精霊には火・水・土・風・光・闇・星・月の8種類の属性があり、属性によって使える魔術が異なっています」
……属性が多すぎ問題。すぐには覚えられないよ。
「あ、覚えなくても大丈夫ですよ。契約できるのはひとりに対し1精霊までですし、初期の属性はランダムかつ、多少難易度が高いですが属性は変更可能ですから。また、精霊1体につき2つまで属性を持つことが出来ます」
ふーん。要するに精霊の属性はランダムで、後から変更可能ってことね。あと、使える魔術は最大2つまでっと。
ところで。
「精霊との契約って誰でもできるものなんですか?」
「はい、プレイヤーの方は全員可能です。しかし、この世界の一般的な話をすれば、精霊は気まぐれで魔力の相性の良い人としか契約をしませんので、契約している人はそこそこ多いですが全員が契約できているわけではないですね」
そうなのね。へー、なんか格差とか生まれないんだろうか。
「一応、補足しますと全人類は魔力を有しており、魔法と呼ばれる基礎的な魔法は上手下手はありますが全員が使えます。戦闘にしか使えない魔法、この世界では魔術と呼ばれる類のみ精霊との契約が必要となってきます。すべての人が戦闘員というわけではありませんし、武器やスキルの存在によって魔術が必ずしも必須というわけではないんですね」
「そうなんですね。疑問が解決しました」
「では最後に種族のアンロックについてです。種族は後ほど説明をさせて頂きますが、5種類から選択をして頂きます。ですが課金をして頂くことで魔人族と呼ばれる特殊な3種族を選択の候補に加えることができます。課金に関しての説明は以上ですが、何かご質問等はありますか?」
「いえ、大丈夫です。詳しく説明して頂いてありがとうございます。」
「いえいえ、それよりもアバターはこのまま決定でよろしいのでしょうか?」
おっふ、そういえばもともとはその話だった。脱線しまくりじゃん。
「うーん、どうしようかなー」
体は完璧あとは首から上。
たかがゲーム、暇つぶしにお金を使うなんてばかばかしいと思う人もいるだろう。
されどゲームである。自分がこれから訪れるのは憧れのファンタジアの世界だ。変なところで妥協はしたくない。もう気持ちは既に決まっている。
「すみません、課金します」
読んでいただき、ありがとうございます。