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17/23

「マブチの所在は**町3丁目か。そうだな、明日の昼にでも俺と工藤、そして田原君の3人で行ってみるか」

片桐は言った。


「私も行きます」これはレイナだ。


「レイナちゃん、危険な相手だよ。場合によっては戦闘になるかもしれない。君は待機したほうがいいよ」

工藤が引き留めようとする。


「私の走査(スキャン)能力は、現場に近いほうが精度が上がります。行かせてください」


「では水上君にはマブチの居所を特定したら帰ってもらおう。明日の正午に**駅に現地集合だ。本日は解散だ」

心配そうな顔をしている工藤をよそに、片桐が言い放った。


「田原さん、ちょっといいですか?」


部屋を出ようとした藤太に神谷が声をかけた。


「田原さんは例の人狼を日本刀で斬ったということですが、胴体を完全に切断するとは人間業とは思えない。私は田原さんの能力がもっと知りたいです」


藤太はチラリと片桐に目をやった。

片桐はまたしてもまったく顔に似合わぬウィンクを藤太に投げた。

仲良くしていても、片桐は部外者には藤太の能力を隠しているらしい。


「あれはコツがあるんだ。山犬を斬った経験からね、毛並みの逆方向から斬れば簡単に斬れる」


神谷はまだ納得いかない表情であったが、それ以上は追及しなかった。


県警本部からふたたびタクシーを使って藤太は自宅アパートの部屋に戻った。

部屋にはすでに姫香の姿はなかった。


・・・そもそも深夜に呼び出す意味があったのか?まったく無粋な奴らだ。


藤太は少し腹立たしい思いで眠りについた。




翌日は午前10時ごろに目を覚まし、パンと牛乳の簡単な朝食を済ませ部屋を出る。

身支度を済ませ11時過ぎに近くの駅から電車に乗り、**駅にはちょうど正午に到着した。


駅改札を出ると、工藤と片桐がすでに待機していた。


「保久、レイナはまだか?」藤太が声を掛けると工藤が答えた。


「あそこですよ」


工藤が指さす駅前広場では、巫女姿のレイナがアイドルのようにポーズをとり、数名のオタク風の青年たちと代わる代わる写真を撮っていた。

まるで撮影会のようだ。


「面子が揃ったところで行くか。おーい、水上君。そろそろ行くぞ」

片桐が声をかける。


「はーい。みんなごめんね。これからお仕事なの。またね~」

レイナは撮影していた青年たちに丁寧にあいさつする。


「レイナ、君のその恰好はちょっと目立ちすぎじゃないか?」

藤太が言うとレイナは答えた。


「霊力を発揮するときは巫女の正装の方が上手くいくんですよ」


「しかしどう見ても本職の巫女には見えないぞ」


たしかに童顔にヒメカットのレイナの巫女姿はどこから見てもコスプレイヤーだ。


「だからどこに行っても撮影会になっちゃうんですよね。せっかくだから断るわけにもいかないし」


・・・いや断れよ。


と藤太は思ったが、レイナの趣味に口を出すこともあるまいと言葉を飲み込んだ。


気が付くと工藤はレイナの姿をぼーっと見つめていた。藤太は笑みを浮かべた。


・・・なるほど、陰陽師の生まれ変わりの保久の女の好みが巫女というわけか。。まあお似合いかもな。




5課チームはしばらく歩いてレイナの特定した**町3丁目に到着した。

その周辺は住宅地で、マンションやアパートなどが多く立ち並んでいる。

戸建ての家もまばらにあるが、そう多くはない。


「水上君、走査(スキャン)してみてくれ」片桐が言った。


「はい」と答えたレイナは直立して柏手を二度打つと目を閉じた。

そのまま2~3分ほど動かずじっとしているのを一同は見守っていた。

やがてゆっくりと目を開けたレイナは口を開いた。


「へんですねえ、見つかりません。というか走査(スキャン)が上手くいかないです。霊波がちゃんと飛びません。なんでだろう」


「ふーん?工藤はどうだ?何か感じないか?」片桐が尋ねる。


「いえ、何も」あたりを見回しながら工藤が答えた。


藤太はを歩き回りながら周辺の様子を観察していた。


近所の中学校の下校時間のようで、学生服やセーラー服の中学生たちが歩いている。

その中に気になる集団を発見した。


女子中学生のグループであったが、ひとりだけやけに目立つ身なりの少女がいる。

公立の地味なセーラー服の女生徒たちと歩きながら、その少女だけがチェックの短いスカートを履いている。

短いボーイッシュな髪形で、目の縁を黒く塗った小悪魔的なメイク。耳にはたくさんのピアスが光っていた。


不良少女のグループかとも思えるが、それにしては他の少女たちは普通の真面目そうな女生徒たちだ。

藤太は工藤にささやいた。


「保久、あそこの女子中学生のグループを霊視してくれ。何か見えないか?」


工藤は目を半眼にして、そのグループをしばらく凝視してから言った。


「藤太さん、特に変わったことはありません。普通の女の子たちですよ」


「そうか・・・」


藤太は何か釈然としないものを感じながら、女子中学生たちの会話に耳を澄ませた。

これは隠している能力のひとつで、藤太は常人の20倍程度の聴力を持っている。


『ハヅキ様、麻衣はダメだったのですか?』


『あの子は汚れていたのよ、それに弱い。がっかりした。もっとピュアで力のある子を見つけないと』


・・・ハヅキ様?なんだこの会話は?気になる。



「田原君、どうした?浮かない顔をして」


「片桐さん、ここはどうもおかしい。どうしてレイナと保久の能力が発動しないんだ?もしかすると・・・」


「もしかすると・・何だ?」


「これは敵の罠だ。みんなあたりに気をつけろ」


藤太の声で一堂に緊張が走る。


「たしかにおかしい。見ろ、通行人が消えている」


片桐の言う通り、下校する中学生たちを含めすべての通行人が消えていた。


「敵は一種の結界を張ったようですね。俺たちの霊力も何らかの力で妨害されていたようだ」


そう言って工藤は怯えた顔のレイナをかばうようにして身構えた。

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