そして、物語は始まっていく
3話 愉快なギルドへ
「ああ、そうだ。酒場へ行けば誰か一緒に行ってくれるかもしれないぞ」
しばらく街を回りながら、思い出したようにおじさんがそう言った。
「酒場ですか。酔っ払いしかいなさそうですけど」
「それが、やたらと強い2人組の格闘家がいてな。さすがに3人ならギルドまで辿り着けるだろう。さあ、ここが酒場だ」
やけに洒落た看板が目立つ。中に入ると、思ったよりも落ち着いた雰囲気に驚かされた。
「その2人組ってのは、どこに?そんな格闘家みたいな男たち見当たりませんが」
「今はいないのかもな。やつらの強さは国王も認めていて、魔物を討伐してもらう代わりに、報酬を払っているんだ。もしかしたら討伐してる最中かもしれない」
そんな強いのか。さっきのラツ爺さんといい、強キャラ続々出てくるな。
「おーいマスター、いつもいるあの格闘家たち、どこに行ったか知らないか?」
「ああ、あの人たちなら、ウルフェン討伐へ出掛けてるよ。もうじき帰ってくるんじゃないかな」
「もうじき帰るそうだ。ここでもう少し待とう」
「そう言えば、さっき話してた、どんなに強くても1人では魔物には勝てないってどういうことですか?」
少し気になっていた疑問をぶつけてみた。
「まあ肉弾戦だけならあんたは勝てるだろうが、ブレスをはいてきたり、魔法を使ってくるんだ。いくら体が強くても、魔法やブレスの耐性は持ってないだろう?」
「ああ、なんだ。そういうことなら、防具屋で装備を整えればいいのでは?」
「まあ、それはそうなんだが、あんた、金持ってるのか?」
あーー……そう言えば、お金持ってないんだ。現実では、そこそこお小遣いをもらっていたので、いつもあるのが普通だった。
「魔物を倒さないとお金は手に入らないんですかね?」
「いや、街でなにか仕事をしたり、依頼を受けて達成すればもらえるが、急いでいるなら、買えるようになるまで稼ぐのは時間がかかるからやめた方がいい。武器や防具は高価だからな」
「そうですか。ならついてきてもらった方が早いですね」
「そういうこった」
ガヤガヤガヤ……
突然静かだった酒場が、騒がしくなった。
「トルバーとトイカが帰ってきたぞーー!」
「今回も報酬たんまり貰ったみてぇだな!パーっとやろうぜ!」
ここにいる人は、みんな格闘家たちの知り合いのようだった。
「おいおい、おめぇら、また俺達が奢るのかよ!しょうがねぇやつらだ。ハッハッハ!!」
「全く、都合のいいヤツらだぜ!フハハハハ!」高らかに2人は笑う。
「なあトルバー、トイカ。帰ってきて疲れてるところ悪いんだが、あんたらに客だ」
マスターが声を掛けた。
「はじめまして。マサールです。ギルドへ行きたいんですけど、一人で行くのは危険と言われたので、お力を貸していただきたいのですが」
「ああ、それくらい、すぐ連れて行ってやるよ。トイカ。お前はここで酒でも飲んでろ。俺が行ってくるわ」
「そうか。早く戻ってこねぇとお前の分も全部食っちまうからな!フハハハハ!」
「おうよ!さあ兄ちゃん、行こうぜ」
トルバーは酒場を出ると、足早に歩き出した。後ろから見る背中は、ガバジにも引けを取らない、筋骨隆々の体だった。
まあ、この格闘家が一緒なら、さすがに大丈夫だろう。
-ロンデス王国国領-
城下町を出ると、広大な草原が目に飛び込んできた。だが、魔物は見当たらない。眠りこけてるのだろうか。
「魔物どこにもいませんけど、何かあったんですか?」
「それがな、魔神軍の魔物狩りペルーシスによって、ほぼ殲滅されたみたいなんだ。戦わずにギルドに着けそうだな」
魔神軍がなぜ、魔物を倒しているんだ……?仲間じゃないのか?
「魔神軍と魔物って、仲間じゃないんですか?」
「いや、そもそも魔神軍とは、人間の軍隊なのだ」
「え!そうなの!?」
驚きすぎて変な声が出てしまった。魔神軍と言うから、てっきり魔物をまとめる悪の魔王みたいなものを想像していたんだが。
「だが、魔力によって人間とは比べ物にならない強さを持っているのだ」
「なるほど」
と、その時だった。黒い羽根を持つ、カラスよりも大きな鳥の群れが、頭上を飛び回り出した。さっきまで気づかなかったが、ずっと尾行されていたようだ。
ギャー!ギャー!
喧しい鳴き声が、脳にガンガン響く。
「なんだ、こいつら!」
「ギャラスは、ペルーシスが飼っている魔鳥だ。大方、君のことを偵察にでも来たのだろう。私が倒すから、そこで待っててくれ」
トルバーが前に立つ。しかし、偵察とは一体何なのだろう。僕のことを魔神たちは、知っているというのか?
「せいやっ!」
トルバーは、その大きな体からは想像もつかないほど素早い回し蹴りを放った。
ギャー!ギャー!ギャー!
魔鳥たちは、打ちのめされ、逃げていった。
「ふう。ウルフェンに比べれば、こんなの、ドラクエで言うスライムみたいなもんだな」
ど、ドラクエ……?なんでこんな中世の世界に、ドラクエなんて言葉が存在してるんだ?
「あのー、ドラクエって言いました?」
「ん?ああ、言ったが、それがどうかしたのか?」
なんだこの人。当たり前のように言ってるけど、あんたドラクエに出てきそうなツラしてるぞ?と心の中でツッコミをいれてしまった。
「おい、君、井戸はこっちだぞ!」
我に返ると、その格闘家とは真逆の方向に歩いていた。ん……?体が勝手に
「おい、どこへ行くんだ!」
トルバーが叫ぶ。だが、何かに導かれるように、井戸とは逆方向に歩いてしまう。
「クヒヒヒヒ!まんまとハマったわね!」
「あの子、やっぱり何かを感じたけど、ディアマグロス様にとっての脅威になりそうね。ここで潰しておくのが吉よ」
メドとゾダイシスが微笑む。
トルバー「なんてこった、これは、魔神軍か!?」
マサール「体が思い通りに動かない!」
意志とは裏腹に、森の中へと入ってしまった。
「ウフフ、また会ったわね」
女騎士ゾダイシスが微笑む。
「くっ……くそっ!身体が……」
「私の魔力に抗うことは出来なくってよ?さっきも私に見とれていたじゃない」
「ぐ……何が目的だ!」
「そんなに殺気立って怖いわ。遊びましょうよ。ウフフ」
そう言うと、またさっきの魅惑の魔法を使ってきた。ああ、綺麗だ……そのまま 僕は意識を失った。
「これで、邪魔者は1人減ったわね」
ヘビ女メドが呟いた。
「ちくしょう。俺がついていながら、やられてしまった。マサールと言ったな。必ず救ってやる!待ってろ!」
「クヒヒヒ!そうはさせないわ!」
トルバーの前にメドが立ちはだかる。
「あんた腕が立つみたいだけど、ただの脳筋でしょ?クヒヒ!」
無数の蛇がトルバーに襲いかかる。
「一応これでも、王国一の格闘王と呼ばれた男だ!舐めてもらっては困る!」
そう言って、トルバーは蛇たちを打ち倒していく。
「なかなかやるじゃない!これならどう?」
-ジャイアントスネーク!-
シャーー!!
「ぐわあぁ!」
「クヒヒ!これで終わりよ!蛇槍-スネークジャベリン!-」
ジャイアントスネークが槍と化し、トルバーに一直線に飛んでいく。
場面は変わり、森の中。
「はああ、とても美しい……」
妖艶な女騎士から目が離せない。
「あら、さっきまであんな怖い顔してたのに」
「あああ……なんて美しいんだ。なんて綺麗なんだ」
「そうでしょう?もっと見ていていいのよ?ウフフ」
「あれ……??なんだか違うような……」
「どうしたの?」
ゾダイシスが尋ねる。
「……はっ!!騙されていたのか!!さっきと同じように!くっそぉぉお!自分が情けない!」
「あら?もう解けちゃったのかしら。つまらないわねえ?」
「もう許さん!覚悟しろよ!」
「フン。あんたもさっきの脳筋と変わらないように思えるけど?ウフフフフ」
「トルバーさんに何をしたんだ!!」
「あんたが知る必要ないでしょ?……あーあ、大人しく騙されておけば痛い目に遭わなかったものを」
「なめんなよ!これでも喧嘩は誰にも負けたことねーんだ」
「あたしが本気で殴り合うつもりだと思ったの?バカねえ。この世界には魔法があるのよ?アニメ好きならそれくらい知ってるでしょう?」
「ぐっっ……そうだった。俺は今異世界に来てるんだった…」
「今更思い出しても遅いわ!-ハートブレイク-!!」
「うおおい!?」
一方そのころ王国では-
結界魔法-バリアシールド!!-
王妃「長くは持たないわ。なんとか追い返して!」
騎士「しかし王妃様。次々と仲間がやられており……」
「何を言ってるの!この国が落とされたら、現世が滅ぶのも時間の問題なのよ!」
騎士「は、はあ!こんな時にガバジ団長は何をやってるんだか…」
-魔封宝物庫前-
ガバジ「くそっ!いくら倒してもキリがねえ!」
ガバジの前方には無数のゾンビ兵がいた。
「魔封石を奪ェェェ!」
ゾンビ兵長が叫ぶ。続々と湧き出るゾンビ兵。
「ラツの爺さん、何やってるんだこんな時に!」
ゾンビ兵長「グバハハハ!さあゾンビ兵たちよ、さっさとあの王国騎士団長を殺すのだ!」
ゾンビ兵たち「グビビビビ!」
-王の間-
ロンデス「ラツ爺よ。こんな所で何をしておる。お主の魔術で魔神軍共を追い返してくれ!」
ラツ爺「まあまあ、ロンデスよ。少し落ち着いたらどうだ」
「こんな状況で、落ち着いていられるか!なあラツ。今日のあんた、何かおかしいぞ?」
「そうか?ワシは落ち着いて戦局を整理し、合理的に敵を追い払おうと考えておるだけじゃよ。それに…」
ゴホン!と、ひとつ咳払いをしてから、こう言った。
「ワシの魔力を、いつまでも頼られてものう……?」
「そうは言っても、落ち着いている間に、魔神軍の侵略は進んでいるのだ!確かにお主を頼りすぎていたところがあったのは認める」
「まあよい。今しがた、考えがまとまったところじゃ。よいか、ロンデス。何もしなくて良い。ワシの推理によれば、魔神軍は何もしなければ勝手に去っていくじゃろう」
「なんと!?正気かラツ爺よ!」
「まあ見ておれ。そのうちわかることじゃ」
-魔封宝物庫前-
ガバジ「くっそぉ!もう耐えきれねえよ!」
ゾンビ兵たち「グビビビビ!グビビビビ!」
王妃「騎士団長!もう食い止める必要は無いわ!」
「王妃様!なぜです…?」
「実は魔封石は、もうここにはないのよ」
「な、なんとっ!左様でございますか!?」
「ええ。それに、ゾンビ兵たちは、魔封石がないことが分かれば、勝手に去っていくでしょう」
「ほう…それはよかった…では、戻るとしましょうか。おうひさ…ま…?」
突然、王妃の姿が変わった。その身は光に包まれ、ブロンドの髪は黒髪へと変わり、赤いドレスは赤と黒のローブへと変わった。そして、見た目はかなり若く変わり果てた。
「私は、魔道士キャメノ。伝説の勇者と共に現世を脅かす魔神を討ち滅ぼすものなり。勇者はどこだ。騎士団長?」
「ま、魔道士キャメノ!?あの、偉大な魔道士が本当に存在したってのか!??」
「私の質問に答えろ。さもなくば吹き飛ばすぞ。チンピラめ」
「ち、チンピラって!ひどいじゃないですか!」
「吹き飛べ!」
「うおおおおおおーぉぉ」
ガバジは遥か彼方へ飛んでいった。
「まったく。役立たずめ。やはり王国一の魔道士を当たるしかないか」
-ロンデス王国国領-誘惑の森~
ゾダイシス「さあ、私の下僕たちよ、働きなさい!」
マサール「はあい、ゾダイシス様ぁ」
「とろいわね!脳筋かと思えばナマケモノね!お仕置きよ!」
ビシっ!バシッ!
「すいませーん。あなたに夢中で、集中できまへん…」
ドサッ。
僕は、暗闇に堕ちた。とても心地よい。まるで天国に来たかのようだ。このままずっとこうして、綺麗なあなたと一緒に過ごしていたい…
-ロンデス王国城下町-酒場~
酔っ払い男「なあトイカ、トルバーのやつ、やけに遅くねえか?」
トイカ「確かに遅いな。あいつに何かあったのかもしれねえ。様子を見に行ってくらあ」
「早く連れて帰ってこいよ!お前らがいないと盛り上がらねえんだからよ!」
「おう!一瞬で連れ帰ってくるぜ!!」
-ギルドの井戸の前-
トルバー「ぐっっっっ…ゴホッ!ッペェ!ゼェゼェ…はぁ、はぁ、マサール!ど、どこだ…ぐはぁっ!」
トルバーは必死になって叫んだが、その声は虚しく、夜の草原に響き渡る。
???「ねえおっちゃん。大丈〜?」
「ん…?なんだ、君は…?」
振り返ると、そこには小さな女の子が。
「血だらけじゃない。あたしが治してあげる!-キュアー-!」
トルバーの傷はたちまち元に戻った。
「おお!君は…もしかして…」
「あたしのこと知ってるの?おっちゃん!」
「回復術士、マカロンではないか?」
「へえ〜、ギルド外であたしのこと知ってる人いるんだねえ〜うふっ、嬉しいなあ〜」
「一応俺はギルドメンバーと何度か共闘したことがあってな。名前を聞いたことがあったんだ」
「ふう〜ん!そうなんだねえ〜!あのさあ、おっちゃん。マサールってどこにいるの〜?」
「マサールを知っているのか!そうだ、大変なことになってるんだ!女騎士に誘惑され、誘惑の森の中へ連れ去られてしまったんだ!」
「ありゃりゃ〜…それは大変!ラジルダ姉ちゃん連れて助けに行かなきゃ!」
「なあ、マカロンちゃん、私も連れて行ってくれないか?足でまといにならぬよう尽力するから」
「いいけどお〜、ラジルダ姉ちゃん加勢する前に終わっちゃうと思うよ〜?うふふっ」
「ありがとう!私はマサールをギルドへ連れて行く約束をしたから、義理は守りたいんだ!」
「おっちゃん見かけ通り暑苦しいね〜クスクス」
「暑苦しいとか、いいから!まあ、早いとこそのラジルダって姉ちゃん連れて助けに行こうか!マサールの心が完全に奪われる前に!」
「もちろんだよ〜。ねえケミナ。テレポートして〜?」
「ん?他に誰かいるのか?ケミナ…聞いたことあるような、ないような…」
ブワワン……
マカロンの後ろに、青髪ツインテールの少女が現れた。
「うわっ!びっくりしたな…ギルドのメンバーはやっぱり、王国の連中とはレベルが違うな。まるでただのスライムと魔王レベルのスライムだ」
「何言ってるのよ〜うふふっ。魔王レベルのスライムなんているわけないじゃない〜」
ケミナ「じゃ、じゃあ、テレポートしますわね!-テレポート-!!」
キュイーン!シュン…
ケミナ「じゃ、じゃあ…私寝ますわね…ふわ〜あ…」
マカロン「ありがとうケミナ〜ラジルダ姉ちゃんもそろそろつく頃かな〜」
キュイーン!シュン…
ラジルダ「おう、マカロン。マサールやっと見つかったな」
マカロン「ラジルダ姉ちゃん〜早くしないと、心奪われちゃうよ〜」
「任せろ。やつらの好きにはさせねえよ。-ライトニングアックス-!!」
光り輝く斧を構え、ゾダイシスに斬り掛かる。
ゾダイシス「ウフフフフ。私がそんな簡単に倒せるとでも思ったの?-フォームチェンジ-!!からの、-テンプテーション-!!」
マカロン「残念だったねえ〜?-守護魔法、パラディンスクエア-!!」
ゾダイシス「な、なに!私の誘惑を無効化するなんて!」
マカロン「無効化とはちょっと違うかなあ〜。うふふっ!」
ラジルダ「くらえええ!おりゃああああ!!!」
ゾダイシス「いやぁぁぁ!!」
ハートブレイクの効果が切れた。
マサール「ん…あれ?何やってんだ俺」
ラジルダ「まったく、心配かけやがって、勇者様よ」
マカロン「ホントだよ〜、このまま助からなかったら、今度こそ現世滅ぼされちゃうところだったよ〜」
トルバー「マサールすまん!俺がついていながら!不甲斐ない…」
マサール「へ?誰あんた達」
ラジルダ「まあ知らないのも無理はないか、まだ来たばっかだもんな。俺は伝説の勇者のお供をするために選ばれたギルドメンバーの一人、ラジルダだ。あ、おっぱいでかいからって触ったら殺すからな?よろしく」
確かに胸は大きい。金髪の野生感溢れる強気な姉御って感じだな。
マカロン「あたしも、ギルドメンバーの、マカロンだよ〜うふふっ!勇者様が来るの、ずぅ〜っと、みんなで待ってたんだよ〜」
ほう…ロリコン好きには人気が出そうな美少女だな。俺は興味ないけど。
マサール「ラジルダに、マカロン。よくわからんけど、よろしく。で、俺が勇者って冗談か?」
マカロン「冗談じゃないよ〜うふふっ」
ラジルダ「立ち話もなんだから、ギルドでほかのメンバーも紹介しながら、この世界のこと詳しく話してやるよ」
トルバー「なあ、おい。俺の事忘れてないか…?ハハッ」
ラジルダ「ああ、おっさんもう用済みだから、気をつけて帰れよ」
トルバー「突き放す中にも慈悲が…余計虚しいよ!マサール!この世界と現世を頼むぞ!」
マサール「ほんっとにありがとうございました!お気をつけて!」
トルバーを見送り、ついにギルドへ。
-ギルド-
「キャッ!キャッ!」
「いやん!ちょっとー!」
ギルドとは思えないくらいの騒々しさだ。しかも、女が多いように思う。そういえば、ラジルダもマカロンも女だし…
ラジルダ「おーいみんな!勇者様連れ帰ってきたぞー」
女たち「ええ!?あの勇者様ー?」「ついにやったのね!」
マサール「は、はは…」
一体どうなってしまうのだろうか…