表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある高校生の異界転生  作者: 飛牙
1/4

迷い込んだのは中世の街

第1話 異界と現世


僕は、マサル。萬斎高校に通うごく普通の高校二年生。勉強は大嫌いだけど、スポーツは大好き!そんな僕が、まさかこんなことに巻き込まれるとは……


8月17日 PM16:29。


僕は、いつも通りの帰路を、いつも通りに歩いていた。先週再開したばかりのアニメの続きが気になって、ぼーっとしていたんだ。はっと気付いた時には、もう遅かった。横転したトラックが、急に目の前に突っ込んできたんだ。それで僕は死んだ--はずだったんだけど。


なぜか、僕は中世の世界に入り込んでしまったみたいだ。あのトラックは、中世の世界への入口だったのだろうか?何もわからないまま、頑丈な石で造られた城下町を歩く。とても大きな城下町、そして立派な城。見ていたお気に入りのアニメも、中世の設定だったから、すごく気分が乗っている。もういっそ、現実に戻れなくてもいいんじゃないか……?


ドタドタドタドタ!!!!!!


背後から、物々しい足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには恐ろしい姿をした化け物たちがいた。慌てて物陰に隠れる。瞬発力だけは、人よりも優れていたので助かった。しかし、まさかあんなものまでいるなんて……


ドドドド……


足音は過ぎ去り、ほっと一息ついた時だった。

「おい君」

誰かに声をかけられた。魔物か……?

「ここで何をやっているんだ。魔物の軍勢が現れたから家に入れと知らせがあったはずだぞ」

魔物かと思ったその巨大な影は、いかにも中世と言うような綺麗な顔立ちをした銀髪の男だった。

「すみません、何も知らなかったもので…」

あまりの大きさに、すこしたじろいだ。

「何も知らなかった…?そんなことは無いはずだ。全国民に知らせがいっているはずだ」

男がそう言う。国民ではないから、僕が知らないのは当然のことなのだが、そんなことを言ったら何をされるかわかったもんじゃない。この大男の威圧感には、声を出すことすら憚られるのだ。

「もしや君は、新入りか?」

男は少し考えてから、そう言った。

「え?」

思わぬ言葉に、拍子抜けしてしまう。まさかこの人も、トラックに轢かれ入り込んだのだろうか。

「そうか、新入りなら何もわからないのも無理はない。ついて来なさい」

そう言って男は歩き出した。

「は、はいっ!」

慌てて僕もついて行った。



「さあ、ここだ」

僕は、シングルベッドが置いてあるだけの部屋に案内された。これから、中世での新しい人生が始まるんだ!なんだかウキウキする。

「ハハッ、珍しいな」

男が笑う。

「新米兵士だと言うのに、これほど目を輝かせた者は見たことがない。王国の兵士として、尽力するんだぞ」

そう言うと男は出ていった。新米兵士?王国に尽力……?そうか!僕は、王国の兵士という役割を与えられたんだ!でも、兵士か……いや、頑張れば兵士長なんかになれるかもしれない!でもなんなら、主役級の役割が欲しかったなあ。英雄なんかに選ばれて、パーティを集めてさ。


そんなことを考えているときだった。


ゴゴゴゴゴ……


突然、窓の辺りに紫色の禍々しい渦が渦巻き始めた。


「な、なんだっ!?」


そこから現れたのは、どす黒い鎧に身を包んだ、女騎士。どこか色気を感じるその瞳に、僕は釘付けになってしまった。


「フフフ、みいつけたぁ」


そう言って微笑むと、こちらに近づいてくる。うっとりしてしまうその唇。たわわな胸にすらっとした脚。僕はもう、その女性の虜になっていた。


ガンッ!

後ろから、頭を殴られた。兜を被っていたので少しの痛みで済んだが、かなり痛い。

「新入り、そいつは誘惑のゾダイシスじゃ!気を付けい!」

かなりの高齢だろうか、しゃがれた声が部屋に響く。

「誘惑のゾダイシス?」

「あらおじいさん、まだ生きていたのね。フフフッ」

高らかに笑うと、女騎士は消えた。消えた!?魔法かなんかなのか!?

「ふむぅ、危ないところじゃったな」

フードを脱いでやっと顔がハッキリわかった。とても強い目をしている。見たところ杖を持っているから、魔道士と言ったところか。

「誘惑のゾダイシスは、魔神軍の第1部隊の筆頭じゃ。対象の男の好みの女を自己に投影し、魅了された心を奪う、強敵じゃ」

「あ、あの……何が起こったのかよくわからないんですけど」

僕は、次から次へと移り変わる場面に、ついていけないでいた。

「まぁ無理もないだろう。今日から入った新米なんじゃからな。じゃが、最近はやつらの気配が強くなっておるから、一人でいるのは危険じゃ。わしについて来なさい」

言われるがままついていくと、とても大きな広間に出た。大勢の鎧を着た兵士が、深刻な顔をして話し込んでいる。

「これから、軍の会議が執り行われるから、座って待っていなさい」

魔道士は去っていった。

「あ、さっきはありがとうございました!」

後ろから声をかけると、振り返らずに手を挙げた。

「ああ、こんな所にいたか、新人」

さっきの大男だ。遠くからでも、飛び抜けているから顔を見なくてもすぐわかる。

「ラツ爺に助けられたらしいな」

「ラツ爺?」

「ああ、さっきの爺さんだ。強かっただろう?」

「いや、女騎士が消えました。魔法みたいなもの使って」

「爺さんはこの国一の魔道士だからな。逃げるのも無理はないだろう」

「そんな強いんだ……」

「強いなんてもんじゃない。魔神軍の参謀、デモウスとも渡り合えるほどだ」

「あのー……さっきから言ってるその魔神軍ってなんなんですか?」

「この王国を滅亡させようと目論んでいる軍隊だ。その女騎士ってのは、ゾダイシスのことだろう。俺たち王国騎士は、魔神軍を根絶するため戦っているんだ。この世界、そして現世を守るためにな」

「現世?」

「 なんだ。本当に何も知らないんだな。この王国は、魔神軍を倒すため造られたものだ。そしてこの世界は、魔神ディアマグロスが創り出した、仮想の世界。この世界を拠点にして、現世を我がものにしようと企んでいるんだ」

「現世って、僕がさっきまでいた、あの現世ですか!?」

「さっきまでいただと!?新米兵士じゃなかったのか!?」

「さっきまで現世にいて、トラックに轢かれて死んだと思ったら、この世界にいたんです」

「そんなことがあるのか……?ディアマグロスの魔力はそこまで強力になっていたのか……早く国王様に知らせなければ!君も一緒に来てくれ!」

「え!?あ、はい!!」


話についていけない。だが、少しわかったことがある。思ったよりも事態は深刻だという事だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ