肝試し
俺は見てしまった。白い袴を着て、血の付いた凶器で何かを滅多刺しにしている女性を。肝試しとかいって真夜中に危ない噂のある森へ入るから。
みんなと逸れ、ミカの悲鳴が聞こえたかと思い、声の方へ行ったら女性はいた。タクロウは大丈夫だろうか。とにかく、森から出ようと必死になって走った。
忙しく鳴る足音と荒い息だけが森の中に響く。一本道だからか、追いつかれそうで怖かった。恐怖を抱え、森を抜けるとタクロウがいた。
「はぁ、はぁ......」
全速力で走ったので上手く声も出ないし、何から伝えるべきかもわからなくなった。
「あははは!」
そんな俺を見て、タクロウは笑い転げた。俺は訳がわからず、その様子を呆然と眺める。
「あははは......はぁ、まぁ、あれだ。ドッキリってやつだよ」
「う、嘘だろ⁉︎」
俺は恥ずかしくなり、赤い顔を上げて笑った。ということは、あの女性はミカということか。
「それで、ミカは?」
「すぐ来るはずだよ」
数十分経ってもミカが帰ってくることはなかった。
「全然来ないけど大丈夫?」
「そうだな、迷子にでもなってるのかもな。探しに行くか」
さすがに心配になって2人で森へと戻った。俺たちはドッキリの余韻に浸りつつ、会話しながら歩いた。そして、俺がさっき女性を見たところまで来た。
道から少し外れたところ木の陰に光を当て、ミカがいないか確認すると、そこには血の海が広がり、服が木っ端微塵にされ、原型を留めていない死体があった。
2人は口を押さえる。めまいと吐き気に板挟みされて動揺する。服や髪、周辺に落ちている物、かろうじて確認できる顔の輪郭からそれがミカであると確信した。同時に、背後に気配を感じた。
鋭く光る刃物が2人を襲った。