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異世界は1日1時間までです。  作者: Glanzio
チュートリアル
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ケイラス・コルハート【職業:山賊見習い】 選魔の儀

 8歳になった。季節はもうすぐ冬になる頃で、洞窟の寒さが一段と厳しくなってきている。この世界の暦は俺のいた世界と同じ月日で表されるそうだ。

 1年が12ヶ月で1月が30日ぴったり。1日の時間は24時間だが、時計はないらしく大体朝時昼時夜時でしか判断していない。

 貴族や王族といった高貴な身分の者は時計を持っているが、職人が少なく希少な鉱物を使うため滅多に市場に出回らないそうだ。何度か略奪品の中に品自体はあったみたいだが、使うよりも闇市場に流して売った方がどう考えても儲かるとのことでこの隠れ家では使っていない。 


 この3年間で訓練に訓練を重ね、モンスターはまだ厳しいものの、子供グループ4~5人でかかれば獰猛な肉食動物を狩れるほどになっていた。肉は食堂に回され規定以上の量が回ってこないが、使えなかったり余った毛皮はこちらに回ってくるので寒い時期に洞窟内で凍死しないように、荒い作りではあるが人数分の毛布を作っておいた。


 ヤデュンやドルといった年長組は12歳を超え、本意ではないが生き残るために大人達とともに本番の狩りに参加している。今は冬前に物資を売り込もうとする商人の移動が活発になるとのことで、遠征時期ということもありそれに参加していた。


 そして今日は待ちに待った日である。この世界の人間のほとんどは8歳になると体内の魔力が安定する。このタイミングで魔力を用いて魔法を使うことができるか、どんな属性の魔法が使えるのかを賢者によって調べてもらうのだ。

 8年間一度も見たことがないがこの隠れ家にも賢者が2人いるらしく、俺やアルミナといった8歳組は『選魔の儀』を受けることになっていた。


 「わくわくするねケイラス! 今日から魔法が使えるようになるかもしれないよ!!」


 ポニーテールを揺らしながらアルミナが体を揺すってきた。100%使えるようになるわけじゃないのにすごい喜び様だ。使えるようになったらどうなるんだ? 気絶でもするんじゃないだろうか。それくらいテンションが上がっている。

 と言いつつ俺も内心テンションが上がっている。別にオタクってわけでもないが特殊な力を使って活躍するのは男のロマンなんじゃなかろうか。使い方はともかく。使い方はともかく、だ。


 魔法使いの山賊。賢者の1人であるオーニールに連れられ大人連中が住む中央区に入る。さらに中心部分へと進み、貴族が住むような、山賊の家ですと言っても信じられないような豪邸の前に到着した。


 「いいかい、これから合う賢者様とは絶対に話してはいけないよ。聞かれた時だけ答えるんだ」


 このオーニールという山賊。山賊か? と疑うほど子供には優しい。よく飯を奢ってくれたり(朝昼夜食以外で食べると有料である)、略奪品のお菓子をこっそり洞窟に持ってきてくれたりする。

 なんでこんなところにいるんだ。

 子供達が頷いて黙ったのを確認して豪邸の門を開け敷地に入る。大人は大体遠征に出ているからか、元々人がいないのかわからないが敷地に入ったところで俺たち以外の人影を見ることはなかった。


 そのまま正面の家に入る……わけではなく、左折して端にあった小屋の方へ向かう。

 その見た目は煙突から紫色の煙を上げ、家の外には蜥蜴やサソリ、猿の手のような物といったゲテモノが干されていて、なんというかもう見るからに魔法使いの家といった感じだ。


 「入りますよ先生」


 ドアをノックすると自動で扉が開く。

 中に入ると、明らかに外見以上の広さがある大広間が広がっていた。白い大理石のようなものでできた柱と床、中心には大きな魔法陣が書かれており、そこに真っ赤なローブを着た老人が立っている。


 「子供たちをお連れしました」



 「ご苦労。今年の子供たちは大人しいな」


 「去年のようにされてはバルドデアス様に怒られてしまいますから。ちゃーんと言い聞かせてあるのでご安心ください」


 「去年のは良い薬になった」


 それは反省点としてなのだろうか。


 「辺境の貴族どもに良く売れたからな」


 違うみたいだ。

 もしかして外にあった猿の手みたいなのって…………考えるのはやめておこう。


 「さて、子供たちよ。魔法陣の中に立つのだ」


 老人に言われた通り魔法陣の中に立つ。

 オーニールは魔法陣の外に立ち待機している。


 「『我、アードヴェグ・ウル・ブレアスの名において、世界よ彼の者の運命に名を与えよ』」


 賢者アードヴェグが短い文を告げると、魔法陣が発光する。

 次いで俺やアルミナの足元に別の魔法陣が出現し強く発光した後右手のひらに縮小しながら移動。一瞬の熱さを感じた後魔法陣の光は消えた。

 どうやら儀式は終わったようだ。手のひらを見ると黒いインクで書かれた魔法陣が刻まれている。


 「さあ順番に手のひらを見せるのだ。魔法適正を確認してやろう」


 無表情のままそう言い子供たちの手のひらを取りながら確認していくアードヴェグ。

 隣のアルミナの順番になる、彼女は引きつった表情で体をカチコチにしながら手のひらを出した。

 ぼそぼそと2人でしかわからない声量で話しているため内容はわからない。あとでなんの属性だったか聞いてみよう。

 やがて話が終わりアードヴェグが手を離すと、アルミナは露骨にホッとした表情をしてこちらを見てはにかんだ。どうやら無事魔法を獲得できたようだ。


 「それ、手を出せ」


 アードヴェグが目の前に来たので手を差し出す。

 その紋章を見て無表情だった彼の目が見開かれ、そのままこちらの顔を見てきた。ギョロッとした目がカエルのようで不気味だ。


 「黒色の8段魔法陣……これは…………」


 わなわなといった感じで肩が震える。やがてオーニールの方を見て彼が別の子供の相手をしているのを確認すると俺の手を取っている方とは別の手をかざし何かを唱えた。

 淡い光が輝くと手を話告げる。


 「お主の属性は陰。第5段階の上位魔法まで極めることができるであろう」


 そう言って次の子供の元へ行く。

 手のひらを確認すると、さっきよりも魔法陣の図柄が減っているような気がした。


『残り時間は17510時間です』

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