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異世界は1日1時間までです。  作者: Glanzio
チュートリアル
1/97

毒島 健太【職業:暴走族】 転生初日

 良い異世界ライフをお楽しみ下さい──その言葉を最後に俺の意識は暗闇に落ちていく。

 何をしていたんだっけか……そうだ、族同士の抗争があって、宗治(そうじ)の野郎を庇って……目を覚ますと目の前に羽根の生えた銀髪巨乳の姐ちゃんがいて──何かを、説明された。


 異世界がどうとか転生がどうとか言ってたな。これはあれか、俺は仲間を庇って死んで、最近流行りのラノベみたいに異世界に転生っていうパターンか。

 ヒロ辺りが聞くと興奮しそうな内容だ。この手のラノベは大体アイツに借りていたからな。

 そういえばいくつか返し忘れていたような気がする。まあ遺品として返ってくれるよう願おう。あっちは嫌がるだろうがな。


 毒島健太(ぶすじまけんた)17歳──短い人生だった。俺達の作り上げた覇李飢怒紋朱咫亜(はりうっどもんすたあ)の奴らともお別れか……喧嘩喧嘩喧嘩の人生だったが、悪くなかった。

 心残りはある。仲間たちだ。まあ単純な奴らだからすぐに立ち直って覇李飢怒紋朱咫亜(はりうっどもんすたあ)を日本一の暴走族にしてくれるだろう。


 ん? 暗闇が晴れてきた。中々騒がしい音が聞こえてくる。香りも感じるようになってきたが……血なまぐさい。一瞬光が強まって目を閉じる。しばらく目を閉じて黙っていると、突然尻の辺りを叩かれて思わず「おぎゃあ」と叫んでしまった。


「こいつはどっちだ?」


「男ですぜお頭。母親の方はくたばっちまいやした」


「ふん、貴族の女ってのはどいつもこいつも貧弱な野郎だ」


「まったくその通りでさ、へっへっへっ」


 いかにも小物といった男の声が聞こえて目を開けると、まず目に入ったのはなんとも言えない表情をして、刻まれた皺をさらに深くして横に倒れている半裸の女性──恐らく俺の母親──を見ている老婆だった。その姿を見て無性に悲しくなってきた俺は泣く。甲高い声を薄暗い洞窟の中に響かせた。


「うるせえぞ!! さっさと黙らせろババア!」


 小物男が叫ぶと、老婆が睨み返す。

 それに怯んだ小物男は、ツバを吐いてその場を去っていった。


「おーよしよし……赤子なんだから泣くのは当たり前さね。そんなことよりこの子に名前を付けておやりよバルドデアス。アンタは一応父親なんだ」


 老婆の腕の中で揺られ、泣きながらも周囲の話はなんとなく頭の中に入ってくる。俺は赤子に転生して、ここは洞窟で、父親の名はバルドデアスで、母親は死んだ。


「ふん、勝手にできたガキだ。テメエが適当に付けとけババア」


「なんて親だい。この馬鹿者が」


 呆れたように老婆が言うと、長いヒゲに傷だらけの顔をしたバルドデアス──親父は俺と老婆を睨みつけ、下っ端を連れて洞窟を出て行った。残ったのは俺と老婆と、お産の時に付いたのか血で汚れた布1枚に包まれた女性2名だけだ。


「あの男は必ず地獄に落ちるよ。あの子の無念もアタシたちの恨みも必ず……必ずね」


険しい顔をして男たちが去っていった出口を睨むと、腕の中の俺に向き直り優しい表情を見せる。

なんか安心してきたのか眠たくなってきた……。


「さて、アンタに名前を付けてあげないとねえ。そうさね……アンタの名前はケイラス。母親の苗字と合わせて、ケイラス・コルハートだ」


毒島健太改めケイラス・コルハート。それが俺の異世界での名前らしい。その後の言葉を聞くことなく、俺の意識は落ちていった。

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