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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

君はかぐや姫、その色は深い藍

 

 悲しいこと!浅いシャワーから落ちた時、私の目の前にあった夢の結晶はシャボン玉のよう。月の石のような冷たさは彼女の涙。死んでいる。私の白さは私が白であった日々のことを記している。空白は融解するように、愛は蠕動するように。憂鬱な溜息は硝子越しに結露する。

 嗚呼!貴女が今、月に居るというのなら!どんなエーテルの海に浮かんでいるのか。(きっと貴女は浮かんでいる。時間、空間、はたまた他の何か)

 もしも貴女が祁門を飲まなかったから、貴女はどこにいるのだろうか!

 私は寒い。嗚呼。私は悲しい!

――fi vis“di tlisi seo altemis”.

 ホワイトキューブが、空間的に優れているのはその幾何学性に於いて。無機物は晶出する、鋭く。それは三時の光。目を覚ました時、私は白い部屋の中に居た。コンクリートは冷たい。氷のよう。

 坂道があればガラス球は転がり続ける。慣性など無視して。残念なことに部屋の中心にあるのはアクリル板で作られた人工銀河だけだった。(アマノガワハナイロンデデキテイル)点滅します。鋭く、回転が速くなるにつれて。赤、青、緑が混ざりあって透明になった時少女はその中に居た。

「溶けるよ」

彼女は笑いながら消えていく。そして再構成、私の隣に、傾いた鉄塔のように。

 いつの間にか部屋の壁は宇宙色になっていた。星が瞬いている。私達は銀河の中に浮いている。

「息を吐くの。目を瞑って」

彼女はエーテルの海を泳ぐ。銀色の氷は緩かに昇華する。双子星が互いの重力に惹かれて砕けるように。

「だから、スケートしなきゃいけないの」

満月の夜に凍りついた湖面で。もしくは海王星。液体水素の海には水仙が浮かんでいる。白い絹を折り畳むようなアイスキャンディーの味。バニラに包まれて窒息死したい。

 彼女の吐息はミモザの香り。黄色い女の子、優しい男の子。

「始まるよ、ほら」

引力、彼女達は互いを求める事で自分を殺すのです。花弁はいつしか黄色の球体になっていた。

「ここから来たの、私は」

彼女は愛しそうにその月を舐めた。(レモンは私達の周りに浮く。衛星のよう)

――ab klson'

「左様なら三角。私は球体が好き」

 白い三角錐は回転しながら浮いている。抛物線が美しいのは何故?教えてパスカル。(キミハカグヤヒメ)その色は深い藍。

 三角座の人の言葉。

di nelse se faliso leclesa. faliso…… moli malet faliso. fi n'esa cyalis'.

 正方形を左に。白い三角錐は回転しながら浮いている。浮いている!明日もこの720m四方に存在する限り!

「恋する六角形は」

きっと肺臓を毒す。藍色は、硝子の少女のインク。角砂糖のよう。

「恋する六角形は」

きっと平方根。青い糸を紡ぐ、眠るために?ステンドグラスのように。

「恋する六角形は」

きっと、蛍光灯。

「始まるよ、融解が。空間の融解が」

彼女の言葉は晶出する。水晶のように、彼女の喉を貫く。燐灰石のシャワー。恋する六角形はきっと翡翠色。

――889011257

 鏡が、仮に私が人形なら氷の球体の温度は。銀色の少女は白百合に溺れる。鈴の音は鋭利です。

「飛んでいる。水色の紙飛行機」

 機械仕掛け、彼女の声はオルゴール。琥珀色の液体を飲んで眠りに着く。

「それでも、祁門が好き」

 彼女は陶器の肌。姫袖の白いワンピース。

「薔薇は嫌い、刺があるから」

 織月姫はそう言って透明な薔薇を噛み砕く。電離した白百合の花束、銀色の薔薇のナイフ、白いフリルのジャンパースカート。彼女は飴玉のように。

 朔月姫はピンクと水色の錠剤を飲む。無機的な眠りは死のイミテーション。幾何学的な夢は彼女を永遠に凍結させる。

「望月姫はお嫌いでしょう」

 彼女はあまりにも眩しすぎるのです。

――fetta mau

 薔薇の毒であなたを殺すの。セイレーンの歌声は水色なのも、彼女の瞳が翡翠色なのも。そう、きっと春のせい。

「アンドロメダの銀木犀の香り」

 甘い花の蜜は殺されても華やかに香るでしょう。或いは嘘。私の愛を微分して。だって明日は二十二世紀だから。きっと今日から平行世界は六面体。(バラノドクデアナタヲコロスノ)

 一方、多くの場合であなたは五次元人。彫刻室の中は−27℃。アップルパイが凪いでいたら。或いは、そっと乙女らしく。それはきっと春のせい。

「ねぇ、生きている。星まで」

 夜の歩道橋の上で割れたワルツを踊る。優しく、40度に。蛍光灯の下で弾けます。朔月姫の歌は鈴のように鋭く。(バラノドクデワタシヲコロシテ)

「ねぇ、生きている。星まで」

 空白を愛して、白百合はそこでしか生きれないから。



 そして、彼女は藍に呑まれたのです。八分音符が割れた最終楽章の夜です。私は青に、彼女はもはや黄色に還ってしまったの?ねぇ、解析中です。

「計算のように綺麗な五次元球をあげる」

 彼女はそう言って私に口付けをしてきえました。そう、窒素はきっと塩基性。感覚的なまでに。

 小銀河を融解?それとも嘘。結局私は後ろ向きにスケートをします。だって私は金星人だから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめてこの小説を拝読したとき、それはいまからちょうど一年ほどまえのことなのですが、ひどく打ちのめされたことをよく覚えています。これはなんだろう、アナグラムの詩だろうか。あるいは自動筆記の…
2017/03/22 20:31 退会済み
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