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第5話  AFC! 

遅れて申し訳ありません。ネット環境の都合で昨日は投稿出来ませんでした。

無線LANよ、もうちょっと頑張っておくれ。

あと前回のあとがきでアイセのパーティメンバー(ハーレム要員)が登場すると言ったが。

あれは嘘だ。

ごめんなさい。次回登場に持越しです。プロット的な問題で。

後書きで次回予告的な事を言うのもやめようかな……微妙にネタバレですもんね。

 私は浮かれていた。

 同じ転生人であるハルと出会えた事が、それだけ嬉しかったのだ。


 私はアイセ=シックステール。

 旧名は神代藍星かみしろあいせ。二年ほど前にこの異世界【リリアレス】にやって来た転生人だ。

 歳は今年で19になる。季節の巡りやこよみの数え方が転生前と同じで助かった。


 そう。転生してからもう2年だ。その間に、存外この世界も悪くは無い、と思えるようになった。

【リリアレス】に来たばかりの頃は今のハルのように驚きの連続だったが。

 多くの理不尽に開いた口が塞がらなくなった事も幾度と有ったが。

 住めば都とも言う。


 ――いや、正直に言うと、実は私はこちらの世界の方が性に合っている(・・・・・・・)とすら思える。


 前世で取得した剣道の技術が生かされる――事は無かったが(何分真剣と竹刀では使い勝手が違いすぎる)、昔からの夢だった『居合い切り』を実際に取得出来、それを実践する事も出来る。

 しかも誰かを殺す事も無く、そして自分の力で誰かを救う事も出来るのだ。


 こんなに嬉しい事は無い。


 いや、実はそれ以外にも前の世界よりも今の世界の方が良い、と思える要因が一つあるのだが。

 ――いや、語るまい。

 煩悩退散! 煩悩退散!


 さて、それは兎も角。 

 私は剣士であり武人であると、自負してはいるがそもそもそうなろうとした原因は子供の頃に読んだ漫画が原因だ。

浪人剣真ろうにんけんしん』。

 上の兄が勧めてくれた、週刊の少年漫画誌で連載していた人気漫画。

 今でも根強い人気を持っている作品で、当時の私ものめり込んだ。

 私のバイブルだ。

 の主人公のように強く優しく、格好良くなれればどれだけ良いかと夢見た子供時代があるおかげで今の私がある。


 話が逸れた。

 

 兎も角、昔夢見た漫画の主人公のように、今では冒険者をしながら人助けをしている。

 とても充実していると言っていい。夢が叶ったようなようなものだからな。


 だが、ここは異世界。

 私が住んでいた所とは何もかもが違いすぎる。

 仲間は居る。

 信頼も出来る。

 だが、この、ホームシックという感情だけはどうしようもない。


 何よりも。

 そう! 何よりも!


 和食が食えんのだ!!


 香ばしい味噌汁の香りも!

 白飯の進む鮭の塩焼きも!

 歯切れの良い沢庵たくあんも!


 この世界では未だにお目に掛かった事が無い!


 いや、ひょっとしたら食材は揃っていてレシピが無い、という状態かもしれない。

 和食を知っている者が居たら作れるかもしれない。

 ちなみに私は――料理は駄目だ。

 この前自分で調理をしようと試みたがまな板ごと食材を真っ二つにしてしまった。


 これが高レベルの弊害と言うものか…!


 私と同じ境遇の者、それも日本人の転生人が居れば和食だって作ってもらえるかもしれない。

 徐々に馴染んできたとは言え常識があまりにも違うこの世界では、やはり自分は異世界の住人だと思う事もある。

 そしてそれにはとてつもない疎外感が伴うのだ。


 いつしか私は自分と同じ境遇の者、転生人を探すようになっていた。


 そんな時だ。女神【リリウム】様から秘密のメッセージを受け取ったのは。

 内容は、『貴女の探し人が見つかるかもよ♪』というものだった。


 探し人。それが何なのか詳しく教えてもらう事は出来なかったが、それが転生人だと直感した。


 是非も無い。私はその探し人とやらの救出を決意する。

 探し人の居場所はメッセージに添えられていた。

 幸いだったのが、討伐クエストの為、その探し人の居場所からそう遠くないところに来ていた事だろう。


 仲間に断りを入れ、単身でその場所へと向かった。

 そこでハルと出会ったのだ。


 探し求めた転生人。それも私と同じ日本人!

 正直、運命を感じた。年甲斐も無くはしゃいでしまったのも、いたしかたないと言うものだ。


 む。この辺りの事情、まだハルに話していないな。後でそれとなく話しておこうか。


 少し捻くれているところもあるようだが、ハルは可愛らしく、とてもいい子そうだ。

 しかしこの世界でよりにもよってサキュバスに転生するとはな……

 この後の事を想像すると、全てを正直に話すのも気が引けてしまった。

 ステータス、特に『DES』に関してはサキュバスであるハルにといって生命線とも言えるパラメータだ。

 だがなぁ……正直に話すのも酷と言うものだろう。


『DES』が欲望――それも性欲の数値だなんて、私には言えない。


 しかしレベル1で『DES』が400を越えているとは……

 ああ見えて、ハルは存外――助平な娘、なのか?


 ――いやいや! 馬鹿な! 初対面の、それもやっと見付けた仲間てんせいびとだぞ!

 不埒な妄想は失礼というものだ! 

 

 さて。またまた話が逸れてしまった。

 結論を言うと、私はハルとの出会いが嬉しくて嬉しくてたまらなかったのだ。



 だから自分が良くも悪くも目立つ――転生前の世界で言うならアイドル同然の存在・・・・・・・・・だという事をすっかり失念していた。



 ***



【簡易転移石】の光が収まる。

 目に痛いとすら思える強烈な光はいつの間にか消えていて、恐る恐るボクは目を開いた。

 

 地面には半円を描くように植えられた花壇。

 広い間隔で植えられた木々。

 地面は石畳で、背後からは水音が聞こえた。

 ボクらの真後ろには【簡易転移石】のような菱形のクリスタルをさらに巨大化させたものが存在した。

 厳かな台座の上に浮遊するそれは優に3メートルを越えている。

 さらにその向こうには大きな噴水が見えた。

 

 きーんこーん。お知らせのSEと共に、ボクの正面にメッセージウィンドウが現れる。

 

[発展途上の辺境町【シュタット】にようこそ~♪]

 

 女神【リリウム】様の音声が響いた。

 示し合わせたかのように噴水装置(?)から水が吹き出し、月光を浴びて輝いた。


「うわ。綺麗」

「ああ、そうだな。噴水の仕組みやカラクリには全自動の魔法が使われているらしい」

「ようやく、ファンタジーっぽくなってきました♪」

「もう少し、見ていくか?」


 アイセさんのそういうちょっとした気遣いが、とっても嬉しい。


「いえ、大丈夫です。どうせこれから、何回でも見られるでしょうから。

 ボクの事はいいんで。アイセさんの用事を優先して下さい」

「ああ、助かる。なら早速移動し、」


「本物だわーっ♪」

「ほらあそこ! アイセ様よ!」

「きゃー!! ほんとだああぁぁぁっ!!」


 な、何? 周りから、いきなり黄色い悲鳴が……


 ボクとアイセさんの周りには瞳にハートマークを浮かべた女の子がどんどん集まってくる。

 ってなんだこの数!? 十人やそこらじゃきかないぞ!?

 集まった女の子達の格好も色々だ。

 剣や盾で武装したファイターっぽい女の子もいれば、ローブと杖のマジシャンっぽい女の子もいる。

 どころかいかにも町娘風の女の子や飲み屋のねーちゃん風の色っぽい女性まで。

 本当に色んな女の子が集まっている。


「あの? アイセさん? これは……」

「済まないハル。しくじった。安易に転移石を使うべきでは無かった。

 こうなる事は分かっていた筈なのだが」

「大層な人気っぶり、ぶえっ!?」

 

 至近まで近づいていた騎士風の女の子に問答無用で叩き倒され大きな転移石の根元に無様に転がる。


「は、ハル!?」

「アイセ様っ!! お会いしとうございました!!」

「いつからこちらにいらっしゃったのです!?」

「宿はどちらに!? まだ!? でしたら是非うちの、」

「アンタ抜け駆けはずるいわよ! お泊りは是非わたくしの、」

「お夕食は済まされましたか!?」

「ま、待ってくれ! そんないきなり言われても困る!」


 控えめに抗議するアイセさん。

 だが一度勢いづいた女子達は止まらない。

 そもそも『女三人寄ればかしましい』なんて言葉があるくらいだ。

 十人二十人も集まればもうちょっとしたイベントかお祭り状態だった。


 うわこれ、収拾つかないぞ。

 アイセさんも優しいから、強引に振り払うような事もしない。

 しかも女の子達はどんどん増えていく!

 ってあれ? にしても何で女の子ばっかり?

 アイセさんみたいな強くてかっこよくて可愛いサムライガールなんて男にも人気はあるだろうに。

 けど起き上がって周りを見てみると見事に女の子しかいない。

 一番下は小学生くらい、上は三十路くらいのおねーさん。

 そう言えば、森の中で戦ったゴブリン達も皆女の子の姿だった。


 ――え? ひょっとして。いや。いやいや。まさか。まさかねぇ……

 ふと思い立った仮説をそんな馬鹿なと否定する。


 それは兎も角この状況、一体どうしようか、と考え始めた時だった。


「『AFC会員規約』第一条ぉぅっ!!!」


 それは、噴水広場を満たす喧騒を吹き飛ばすような声。

 鋭く、張りある声がまるで拡声器に掛けられたように辺りに響き渡る。

 同時にキーン、とメガホンのハウリングのような高音波が耳朶を打ち、思わず耳を抑える。


「『アイセ様に絶対ご迷惑を掛けてはならない』っ!!!」


 その圧倒的な音量のせいか、さっきまで騒がしかった噴水広場は水を打ったように静かになった。

 冷静になった子達が次々と声の主へと視線を向ける。


「ミスティか……助かった」


 ほう、と安堵の息を漏らすアイセさん。


「ミスティ、さん? 誰ですか?」

「ああ。『AFC』会員No1、つまり『AFC』の創設者であり会長だ」

「あの。その……『AFC』ってやっぱり」


 会話の流れで何となく意味は想像出来たけど、聞かずにはいられなかった。


「『アイセ・ファン・クラブ』。略して『AFC』らしい」

「やっぱりですか。モテモテじゃないですか」

「か、勘弁してくれないか……」

 

 軽口を言いながらも内心ボクは穏やかじゃない。

 よく考えれば、いや考えなくとも想像出来た事だけど、アイセさんみたいな人は人気者に決まっている。

 優しい。強い。カッコいい。可愛い。

 アイセさんに惚れる子はごまんと居るという事で、それ即ち、皆ボクの恋敵という事でもある。

 アイセさんゲット(言葉悪いかも)の競争率、一体どれくらいなんだろう?


 なんて考えている間にメガホンボイスの『ミスティ』さんが女の子の集団を掻き分けて近づいてきた。

 

 歳は二十歳くらいだろうか?

 リーフグリーン色の長い髪。レオタード上の黒いインナーの上に純白の軽装鎧。

 その上からゆったりめの深緑色の外套を羽織った出で立ちだった。

 腰に提げているのは刺剣レイピアかな?

 メガホンは持っていなかった。きっと魔法で声を大きくしたんだろう。多分。


「ごきげんよう。アイセ様」

「ああ、久しぶりだな」

「そうですね。直に顔を合わせるのは二カ月ぶり程でしょうか」


 育ちが良かったか、責任感の強い人なのだろう。

 丁寧な言葉遣いとピンと伸びた背筋。上に立つ者特有の、立ち振る舞いというのを感じた。

 見た目は清楚系剣士。アイセさん程ではないけどカリスマもありそうだ。

 いきなり手強そうなライバルが出現したなぁ。

 いや、ライバルって言える程ボクは偉くないけど。


「ところでアイセ様。ご自身が良くも悪くも有名人だという自覚はおありでしょうか?」

「う」

「こんな夜中に【転移石】を利用しての移動などすれば目立つに決まっていると、私は思うのですが」

「軽はずみな行動だったとは自分でも思うし、反省もしている。騒ぎを起こして済まなかった」

「ま、まあ、その事については別に構いません。問題なのは――」


 と、ここでミスティさんの視線がボクに向けられた。

 ミスティさんの疑心がありありと見て取れる。

 そりゃ、怪しまれるよね。

 ゴブリンも言ってたけど、サキュバスは冒険者とかを襲う、悪いモンスターに分類されるみたいだし。

 そんなのが夜の街に、しかも有名人であるアイセさんと一緒にいるのだ。

 怪しむな、と言う方が無理だろう。


「ああ、この子は――」


 と説明の途中でアイセさんが固まる。

 あれ? まさか、まさかとは思うけどボクの事、第三者になんて説明するか考えてない、とか?


「この子は?」


 ミスティさんに催促されて額と頬に汗を流すアイセさん。

 これ、完全に思考がフリーズしてますねぇ。助け舟、出しますか。


「あの。ミスティさん」


 と、ボクからミスティさんに話しかけた。

 少し不愉快そうな顔をしながらもミスティさんはボクの方に体を向けて話を聴く態勢を取ってくれた。


「始めまして。ボクはハルと言います」

「……【ミスティ=フォーエスト】よ。『AFC』の会長をさせて貰っているわ。

 それで? 何の御用かしら?」

「ボクは記憶喪失でレベル1の貧弱なサキュバスです」

「レベル1? 本当に?」

「はい。【女神リリウム】様のお怒りに触れるような事をしたせいで、記憶を取り上げられた挙句にレベル1になる呪いを掛けられたんじゃないか、って。

 アイセさんと話をしてそんな結論になりました」

 

 これは転生人のボクがこの世界で上手くやって行く為に考えた設定・・だった。

 いきなり転生人だと言っても信じてくれない人も居るだろうし、記憶喪失って事にした方が動きやすい。

 しかし自分でもびっくりするくらい嘘がすらすらと出てくるよー。

 リリウム様のお怒りでレベル1にさせられてしまったとか流石に無理があるような気がするけど。

 これで信じてもらえるだろうか。


「まあ、あの【リリウム】様ならあり得るわね」


 あ。信じるんだ? ありなんだ?


「ボクは気が付いてすぐに森の中でゴブリン達に襲われて。

 何もわからずにもう駄目だ、って諦めかけていたところで、」

「アイセ様に救われたのね?」

「そうです」


 さて。嘘を信じさせるコツは真実を混ぜる事だ。

 記憶喪失云々は兎も角、ゴブリンに襲われてアイセさんに助けられたのは本当だしね。


 記憶が無いから悪さは多分・・しない。

 絶体絶命のピンチに救われた為、多分・・アイセに惚れてる。

 これで人間には多分・・無害なサキュバスの出来上がりである。


「また貴女のファンが増えたようですよ?」


 茶化すように言うミスティさんにアイセさんはバツの悪そうに視線を泳がせた。


「まあしかし、そういう事でしたら問題無いでしょう。

 アイセ様に助けられた御恩を決して忘れないように。何か悪さをしたら承知しませんからね。

 まあ、レベル1なら悪さの程度も知れているでしょうが」


 記憶喪失云々よりもレベル1ならどうとでもなる、という意味合いの方が強いっぽいね。

 まあけど、取り敢えずの当面の危機は去ったらしかった。


「私はこれで失礼します。何かあったら連絡を下さい。可能な限り、ご協力致します。

 ほら! 貴方達もいつまでもたむろしてずにお帰りなさい!

 ご近所様にもアイセ様にも迷惑が掛かります!」


 ミスティさんが声を掛けると渋々ながらも女の子達は背中を向け、歩き出す。

 噴水広場の熱気が、冷めていく。


「済まないミスティ。助かった」


 例を言われたミスティさんは顔を綻ばせた。


「いえ。礼には及びません。AFC会長として当然の事をしたまでです。

 ――ですがその。どうしても、とおっしゃられるなら」 

 

『ハ』の字になる眉根。もじもじしながら顔を俯き、頬をほんのり赤く染める。

 これは……完全に恋する乙女ですね。

 

「な、何か…ご褒美、を……」


 ぼそぼそと呟く声は最後の方は聞き取れなくなっていた。

 両手の人差し指同士をつんつんと合わせている。

『カリスマ』が『かりしゅま』になった瞬間だった。

 あー、でもこういうギャップのある女の子の方が可愛いよね。


 ――そう言えば、ミスティさんと付き合いの長そうなアイセさんは、彼女の事どう思ってるんだろ?


 と、思ったらアイセさん、右手をゆっくりと伸ばし、ミスティさんの頬に添える。

 この時点でミスティさんは顔面発火。

 だというのにそれに追い打ちをかけるようにアイセさんは顔を寄せて!?


「――ちゅ」


 ミスティさんのおでこにキス!?


「いつもありがとうミスティ。これからもよろしく頼む」


 そしてにっこり笑顔でそんな事を言うのだ。

 ミスティさんは眼を回しながらトマトのように真っ赤になった顔をぶんぶんと縦に振った。


「――む。ミスティ? 大丈夫か? 顔が赤いぞ? 熱でもあるんじゃないか?」


 言いながら再び顔を近付けおでこ同士をピタリ。

 ぶしゅー! と言う擬音が聞こえた気がした。


「だだだだだだ大丈夫ですわ!? ぼぼ冒険者たりゅ者! 健康管理はきっちりと行っていましゅ!」


 舌が回っていませんがな。でも気絶しなかっただけ立派かも。

 っていうかアイセさん? あなた天然ジゴロですね?

 素面でおでこにキスとか普通しないですよ。それなのにまるで呼吸するように自然にキスしちゃって。

 きっとアイセさん本人が気付かない間に女の子を泣かせてますよ?


 あとそれと、おでこにキスした辺りから周囲から穏やかではない空気がですねぇ。

 折角お家に帰ろうとしていた女の子達が物凄い勢いで曲がれ右して噴水広場に戻ってきているんですが。


「ミスティ様ばっかりずるい!」

「そうよそうよ!」

「私もアイセ様にキスして欲しい!!」


 再び姦しくなる噴水広場。

 折角、ミスティさんが鎮めてくれたというのに、アイセさんが台無しにしてくれました。


「あ、あれ?」


 今更ながらその事に気付いたのかアイセさん珍しく間の抜けた声。


「ちょ、ちょっと、皆さん落ち着いて!」

「はあ!? アイセ様にキスしてもらって何が『落ち着いて』よ!! ざっけんなー!!」

「会長だからと言って何でも許されると思ってるの!?」


 やいのやいの。

 今度は皆さん、ミスティさんの言葉に耳を貸しません。当然だけど。

 噴水広場は謎の熱気に包まれ、もうアイセさんが全員にキスしないと収まらない程ヒートアップ。


「さあ私に!」

「馬鹿!! 私が先よ!」


 アイセさんに女の子達が一斉に詰め寄る。

 戦士風の女の子がアイセさんの手を掴む。空いていた手を剣士風の女の子が掴んだ。

 ミスティさんもボクの隣まで追いやられ、どうしましょうどうしましょうと顏を蒼くしている。

 もう会長さんでもどうにもならないらしい。


「な、なんたる…!?」


 あー。アイセさんもテンパってるな。強引に振り払う事もしないし。

 しょうがない。


 すう、と大きく息を吸い込んで、

 絶叫するように大声で言った。


「これからアイセさんが皆さん全員にキスしまあああああすっっっ!!!」


 びくり、と全員の動きが止まり、噴水広場に静寂が戻る。


「え!? ハルっ!? 何を言って!?」


 アイセさんの困惑気味の声を無視して更に続けた。


目を閉じた人から(・・・・・・・・)順番にキスをしまあああぁぁぁすっっっ!!!」


 効果てきめん。

 噴水広場の女の子達はほぼ全員目を閉じたかと思うと胸元で手を組んで唇を突き出し、乙女のキス待ちポーズ。


 しかし何故ミスティさんまでキス顔になってるのか。

 ああ。カリスマなんて最初から無かったのか……


 それは兎も角このチャンスを逃す手は無い。

 ボクは引き攣った顔をしているアイセさんの肩を叩き、耳元で小さく囁く。


(今のうちに逃げましょう)


 ボクの意図が伝わったのかアイセさんは頷く。

 すぐにしゃがみ込んでボクの腰と膝の裏に手を回して――持ち上げられて!?

 え!? こ、これお姫様抱っこ!?


(行くぞ)


 コートをはためかせる音を残しながら、ボクとアイセさんは噴水広場から一足飛びで脱出した。




読了お疲れ様です。やっぱりこれくらいの分量が読み易いですかね。

あ。お知らせが二つあります。

ネット環境が不安定なせいで今回のように、特定の曜日、タイミングで投稿する事が不可能な場合があります。え? 予約投稿をしろって? 予約できる量が書けていればそうしますが現状、書き貯め(ストック)はありません。完全リアルタイム連載です。

なので一つ目のお知らせ。

一旦、『不定期更新』という体裁を取らせて頂きます。

その上で可能なら『金曜夕方4時』と『月曜朝8時』に投稿させて頂きます。

――おや? 投稿回数が増えているぞ?

これが二つ目のお知らせ。一回の投稿分量が連載物のネット小説と呼ぶには長すぎるので分割して投稿する事にします。筆が乗ればゲリラ的に週三回の更新があるかもしれないのでなおさら『不定期更新』とさせて頂きます。

お知らせ終わり。

良かったら次回も見て下さい!


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