第12話 黒い騎士の正体って?
「それにしても、さっきはびっくりしました~」
「イノシシに追い掛けられるたぁ、面白い体験をしたもんだな」
バーグヴァーグへの道すがら、ライラとスズランは他愛のない会話をする。怪しさ爆発の仮面の聖女様。性格的にも馬が合わないだろうな、とライラは思っていたのだが……気が付けば世間話をしてしまっていた。
(毒っ気を抜かれるっつーか。イライラするするどころかこっちが心配になっちまうんだよなぁ)
「はわうっ!?」
「っと危ねぇ」
(ほら見た事か)
スズランが木の根に足を取られ転びそうになり、それをライラがヴェール越しに首根っこを引っ掴み、助ける。
「ぐえっ」と女の子が出してはいけない声が聞こえたがライラは聞かなかった事にした。
「げほっげほっ! あ、有難うございます」
「アンタ一人旅向いてねぇなぁ。てか、山道が苦手なのか?」
緑色のドレスも白いジャケットも所々汚れている。
きっと何度も転んだのだろう。
「うぅ仰る通りですぅ。実は、この辺りには前に一度訪れた事はあるのですが……普段は【グラナトゥア】を中心に活動しているので……」
「まあ、冒険者や山師でも無けりゃこんな辺鄙な山には来ねえだろうけどよ」
(ってか一度来た事あんのか。こんな田舎に)
「野生の動物は恐ろしいですね……お恥ずかしい話なのですが……実は私、今でも少し怖いですぅ…!」
象マスクは装着者の感情もトレースするのか、円らな瞳の部分が(> <)に変わる。露出している小さな口元はきゅっと横一線に絞られており
(> <)+( _ )=(>_<)
こんな顔をしているのがマスク越しでも良く分かる。
(ってかこのマスク、ゾウをモチーフにしたもんかと思ったが……よく見るとタコっぽく見えんなぁ)
色は赤で、象の特徴的な耳も無い。表面にはびっしりと魚の鱗のような物に覆われている。象と呼べる部分は長い鼻くらいだった。
変わったデザインの仮面だ。
「この前来た時はああ言った動物は見かけなかったので、本当に怖かったのですよぅ」
「……そうかい」
「でも、ああ言った動物が沢山居るなら、この辺りで誰かが飢えるような事は無いのでしょうね」
「そりゃそうだ」
今は、ゴブリンが動物を狩り倒していた二年半前とは違う。
「動物さん達には悪いですが……良い事です♪」
(なんつーか……無邪気な奴だな)
いや、無邪気、というより無垢だろうか。
食料となる動物達を気に掛けるような物言いに、呆れると同時に感心する。その優しさは流石聖女と言ったところか。
「……アンタ、こんな所まで何しに来たんだよ」
尋ねてからライラは後悔する。
通りすがりの怪しい聖女に深入りする気など毛頭無かったのに、ついうっかり口が滑ってしまった。
人懐っこい子犬のような性格をしたようなスズランの事だ。
きっと「よくぞ聞いてくれました♪」と目を輝かせながら1から10まで丁寧に説明してくれるのだろう。
と思ったのだが。
「あー……」
言い辛そうに顔を背けてしまった。
かと思えば腕を組み「うーんうーん」と唸り出す。
「……悪かったよ。無理に聞くつもりは、」
「あっ、そうだ! そうです! えへへ♪ 実はですねぇ、バーグヴァーグで活動している信徒達の様子を見に来たのですよ♪」
(あからさまに今適当に考えたヤツ…!)
「そりゃご苦労なこった」
適当に相槌を打って会話を終わらせた。
もう無駄話もいいだろう。遠くに町の城壁も見えて来た。
ここからなら子供でも迷う事は無いだろう。腹も減ったし一足先に帰らせてもらおう。
そう思い立った時だった。
キーンコーン。
[メールだよー♪]
「あん?」
リリウム様のアナウンスと共にメールが届く。
ウィンドウを開いてみると――差出人はアイセ。タイトルは『緊急会議』。中身は――
―― ライラ今何処に居る? 実は町で小さい女の子ばかりを狙った誘拐事件と石化事件が起きているらしい。我々ヴェイグランツはこの事件の犯人を捕まえるように町の自警団より依頼を受けた。今、皆で話し合って今後の対応を決めているところだ ――
(は? アイセの野郎、また勝手に面倒事を引き受けやがって)
が、気になる事もある。
『石化事件』。この単語にライラは反応せざるを得ない。
(ハイムヴィのお隣で石化事件、ってのは聞き捨てならねぇな。同じ犯人の仕業、って考えなくもねぇが――あんだけ派手にやらかした隣の町で、同じ悪さをまたするかフツー?)
悪質な愉快犯、模倣犯の仕業だろう。
大体、小さな女の子ばかりを狙う、という手口から見ても別の犯人の仕業のように思える。
きっと別人だろう。そう考え、改めてメールを読み進める。
―― それと落ち着いて聞いて欲しいのだが。町で『例の黒い騎士』らしき者を、 ――
そこまで読むとウィンドウを閉じた。
「聖女様。わりーけどここまでだ」
「……急用でしょうか?」
自身から殺気が漏れ出しているのをライラは自覚していた。
「ああ。バーグヴァーグはこのまま真っすぐ進めば良い。城壁が見えてるだろ」
「あー、はい。確かに」
「じゃあな」
「あの! お世話になりました! ご縁があればまた何処かで!」
走り出したライラの背中にスズランの声が響く。
わざわざ振り返るような事はしなかったが、ライラは片手を上げて彼女に応えた。
***
「――ほーん成程。自警団捜査隊の隊長殿が直々にねぇ」
里帰りから宿に戻って来たライラさんに事情を説明しながら、ヴェイグランツの面々は昼食を取っていた。女の子ばかりを狙った誘拐事件と石化事件のいきさつと現状についてである。
「で。新しい領主の護衛に黒い騎士が付いていた、って事だな――」
ライラさんはパリパリに焼いたチキンのステーキをモシャモシャと食べ――
「うし。殴り込みに行くか」
「ライラちゃんの馬鹿! そんな事したら黒騎士を張り倒す前に私達がお尋ね者になっちゃうよ! ちょっとは頭使いなよ!」
ココノさん? それ、どの口が言ってらっしゃるんで?
「馬鹿はどっちだ! 石化事件に黒い騎士! ここはハイムヴィからも近い! 村に呪いを掛けた本人に決まってるだろーが! お尋ね者になる前に殴り倒して犯人だって証明すりゃーイイんだよ!」
「同じ犯人だったら尚更こんな近くの町で同じ事をしませんよ。疑われるって分かり切ってる事じゃないですか」
「そりゃ、そうかも知れねえけどよっ。居たんだろ!?『あの黒い騎士』が!」
「落ち着けライラ。遠目からでは『黒い騎士』というだけで『透明なマントを装備した黒い騎士』かどうかは分からなかった。別の黒い騎士だという可能性も捨てきれない」
そう言えば。
「ちょっと気になったんですけど。『黒い騎士』って言うのは珍しいものなんですか?」
「【前衛職】系の【中級職】に【ブラックナイト】っていうクラスがあるね。闇魔法と魔法防御に特化したクラスだよ。それの基本装備が黒い鎧だったと思うけど」
「他にも【ウルフラム】製の剣や鎧は黒いな」
「【ウルフラム】?」
「鉱石の名前だ。鋼よりも重く、硬い。これを素材にした武器は重厚で力強い物になるらしい。STR特化ビルドには必須の物という話だな」
「【ウルフラム】……別名『狼鉄』」
「へぇ……」
【ブラックナイト】に【ウルフラム】製の鎧、か。
「だから『黒い騎士』が珍しい、って言われると――別に? って感じかな」
「全身【ウルフラム】製の鎧ともなるとそこそこ値が張るだろうけどよ……確かにまあ、そこまでレア、って訳でもねーな」
「うーん。だったらますます別人の可能性も捨て切れませんね。やっぱり予定通りに行きましょう」
ボクが考えた二通りのプラン。
正確には、二つのプランを平行にやっていく、というもの。
「昼間はボクとアイセさんで町を歩いて情報収集。ネロ君はネットで情報収集」
兎に角情報が足りない。ライラさんやココノさんには歯がゆい想いをさせてしまうけど、今は地道に情報を集めるしかない。
問題は夜。
「そして夜になったら、ボクが囮になって犯人をおびき寄せます」
小さな女の子ばかりを狙っているなら、それを利用してやろうという考えだった。ボクは見た目なら十代半ば、下手したらもっと幼く見える。小、中学生くらいにしか見えないからね。
多分、犯人のターゲットにされる可能性がある。
夜中、人通りのない所をフラフラと歩けば、犯人の方からやって来る、という寸法である。
「私は反対だ。ハルが危険過ぎる」
「いえあの…? 皆さんも隠れてついて来て下さいね?」
村一つ滅ぼした得体の知れない黒い騎士と一対一で戦おうだなんて流石に思わないよ? 前回戦ったミラーカちゃんよりも強いかもしれないし。誘い出しが成功したら隠れていた皆とボクで囲んでボコボコに、
「うん?」
少し、違和感を覚えた。
「どうしたのハルちゃん?」
「村を襲った黒い騎士って……【レイドボス】ですよね、多分」
人々が住む拠点というのは、大体の場合モンスターなどの侵入や攻撃を受けない。女神様の加護があるからだ。しかし【レイドボス】は例外で、村や町と言った拠点を襲撃し、それどころか襲った拠点の判定をダンジョンへと変えてしまう性質を持つ。つまり【レイドボス】に襲われた拠点はモンスターが自在に出入り出来るようになってしまうのだ。
「そりゃ、そうだろうよ」
「そもそも【呪い】が他者を攻撃する行動として扱われているからね。拠点の中じゃ使えない筈だよ」
そう。この世界、殴る蹴る程度の事なら何の音沙汰も無いけど――剣や魔法を使った『殺傷行為』はバトル以外では禁止されている。
あとキスによる吸精とか、Hな事もね!
まあ正確に言うと、出来ない、って話だ。
例えば、道行く人にいきなり剣で切り掛かろうとすると、女神様が不思議な力でそれを阻んでくれる、らしい。
そういう喧嘩以上に他者を攻撃する場合は【バトル】という手段を用いないと成立しないのだ。
ちなみにそう言う制限を緩和して、人を辻斬り出来るようになるアビリティもあるらしい。
が、ハイムヴィでは村一つ丸々。それも話を聞く限り1,2時間やそこらで、村人全員を石に変えてしまった。
だから【レイドボス】の仕業かな、と考えていたんだけど。
「村を一つ丸々呪ってしまうような凶悪なボスなら、冒険者ギルドで討伐対象になりますよね?」
「あ……言われてみれば、そうだね。ハルちゃんの言う通りだ」
「しかしそんなモンスター、私は聞いた事が無いぞ?」
「確かにな。んなエゲツねー【レイドボス】が居たらギルドが【白金級】や【金剛級】ランクの奴らに依頼出してるよな」
「……そんなの見た事無い」
って事は、そもそも『黒い騎士』が【レイドボス】じゃない?
「仮に黒い騎士が【レイドボス】であったとして。騎士が【レイドボス】になれるものなんですか?」
「【レイドボス】になれるのは『モンスター』が『闇の眷属』だけ。普通の人間とか、エルフとか、亜人とか、人畜無害なのは無理」
サキュバスであるボクとダークエルフであるネロ君は『闇の眷属』だから【レイドボス】になれる資格はあるって事ね。
なら『黒い騎士』の正体は『闇の眷属』?
でも【レイドボス】かどうかも疑わしい。
なんだかこの事件、ボク達が考えているよりもずっと複雑な問題を抱えている気がする。
気のせいだと良いんだけど……
「あー! 畜生面倒臭えなぁ! もっとこう……パパっと殴って切って終わり! ってなんねーのかよ!」
……流石幼馴染。ライラさんとココノさん、思考回路一緒か。
「はー、ライラちゃんは短絡的だなぁ。もっと冷静にならないとダメだよー?」
そしてここぞとばかりにライラさんにマウントを取っていくココノさんである。だからどの口が(略
「短絡的にもなるぜ。村の皆の仇が、近くに居るかもしれねえんだからよ」
どすりっ、とチキンにフォークを突き立てるライラさん。
目を瞑ってもイライラが伝わってくる程不機嫌なのが分かる。
うーん、大分感情的になってるなぁ。
一人で先走ってトラブルを起こしちゃわないだろうか。
――――よし、決めた。
「……ライラさん。ご飯が終わったら、調査するのに一緒に付いて来てくれませんか?」
「あん? さっきアイセと一緒に行くとか言ってなかったか?」
確かに言ったし、アイセさんとイチャコラする時間をちょっとでも増やす為に一緒に居たいと思うのはここだけの秘密。
けど今はライラさんの方が気掛かりだ。
「と思ったんですけど……調査のついでに武器の強化もしたくて、それと変装用の装備も揃えたいんですよ。そう言うのライラさんの方が詳しそうですから。単純な戦闘能力も、『今は』ライラさんの方が上でしょうし。ボディガードとしても期待出来ます」
「うぬ」と呻き声のようなモノを上げるアイセさん。
午前中の戦いを見ていて思った事だ。アイセさんの強さは【陽炎】を使った瞬間移動と無限コンボだけど、レベルが下がった今は使えない。
それでも持ち前のスピードと反射神経からくる回避能力は確かにアイセさんの方が高い。
けど――洞察力、って言うのかな? 戦いの最中、敵がどんな行動を取って来るのかを予測する力はライラさんの方が高い気がする。
刀で斬るだけのアイセさんと違って蹴りも投げナイフも使うライラさんは対応能力にも優れていると思うし。
攻撃力にしたって、両手剣と片手剣の二刀流だよ? 刀一本のアイセさんよりも絶対強い。
「ほーん――悪い気はしねぇな。いらん気を遣われてるだけかと思ったけどよ。それなら付き合ってやってもいいぜ」
「ライラがそう言うのなら、私も構わない。宿で待機していればいいのだな?」
「はい。何かあれば連絡します」
「心得た。連絡があれば飛んで行く」
「うし。じゃあ決まりだな」
食事もそこそこにライラさんが席を立つ。
「時間が勿体無え。証拠とやらをさっさと掴んであのクソ野郎を殴り倒しに行こうぜ」
ライラさんの言葉に賛同するように、その場に居た全員が力強く頷いた。
「ちなみにどうでもいい事なんだがよぉ――――ありゃ何だ?」
親指で店内の木窓の一つを指差す。
――――そこには、
「じぃーーーーーーーーーっ」
窓越しに、店の外から事の成り行きを覗き見る自称パラディン【オリー】ちゃんの姿があった!
「自称パラディンの変な子だよ」
「は? パラディン? 確かめたのかよ?」
「ステータス画面、見せてもらえませんでした」
それで「身分を証明出来ないなら出ていって下さいっす♪」ってミースさんが追っ払ってくれたんだけど……それっきり窓の向こう側からこちらを伺っているのだ。
「もう衛兵さん呼んじゃうっすか?」
「とんだ扱いね! 私は何も悪い事はしてないわよ!」
窓越しに自信満々の声が届く。
「営業妨害っす!」
「あら! おかしな話ね! このお店が繁盛しているようには見えないのだけれど! 私が一体どんな妨害をしている、って言うのかしら!」
「あのクソ女一発殴って来るっす!!」
「ミースさん落ち着いて…!」
パラディンちゃんアホっぽい喋り方なのに言う事が的確やん!
「あー……関わらねー方が良いヤツだなありゃあ」
「ふふっ! 私に恐れをなしたと言う事ね! 当然の反応、」
「うし。行くか」
「はい」
「……」
セリフを途中で遮られ閉口するオリーさん。
その顔は――――なんとドヤ顔したままだった!?
まあ無視するんですけどね。
ボクとライラさんは宿を出ると商店通りへと向かって歩き出す。
「で? どっから手を付けるよ?」
「先ずは防具屋で変装用の装備を買います。なんだかんだでボクも有名になっちゃってるみたいですし。自警団の皆さんから捜査は出来るだけ目立たないようにするよう、頼まれていますから」
「確かに有名人みたいだな。シュタットの英雄様よぉ」
「もう。厭味ったらしく言わないで下さいよぅ」
「バーカ。胸張ってりゃ良いんだよ。事実なんだからよ」
他愛もない話をしながらライラさんと歩く。
「……」
「あん? どした?」
「いえ。何でもありません」
ライラさん、情緒不安定になってないか心配だったけど。今の調子なら大丈夫そう、かな?
黒い騎士の正体とか、領主様の秘密とか、事件の真相とか、分からない事だらけだけど――あんまり悩んでいてもしょうがない。
今は兎に角、動くのみ!
けど……
視線を感じて肩越しに振り向く。
「――貴方は何でついて来るんですか?」
そのすぐ先に仁王立ち+ドヤ顔を決めるオリーさんが居た!
「勿論! 悪逆非道のサキュバスが悪さしないか監視する為よ!」
「何ゴツい声で誤解を招くような事言うとんねん!」
「貴方は馬鹿ね! 人と話をする時は! 大きな声で! 相手の目を見て! はっきりと喋るように! ってパパとママから教えてもらわなかったのかしら!」
駄目だ。殴り倒したい。
かつてない暴力的な衝動がボクを襲う!
「それは兎も角サキュバスなんて悪さしかしないんだから! 見張るのは当然よ! 本当は今からでもアイセのサインをねだりに行きたいだけれどね!」
「どうぞそっちを優先してもらって結構ですよ!」
掲示板のレスを見てて思ったけど――この人、アイセさんのファンだし、悪い人では無いとは思うんだ。
何というか――脳と口が直結しているタイプの人だと思うし。隠し事とか人を騙すような子じゃない気がする。
けどなぁ。居るだけで迷惑なんだよなぁ。
ボクがサキュバスじゃなかったらこうはならなかったと思うんだけど。
ちっ、とライラさんが舌打ちするのが聞こえた。
「おい。パラディンさんよ」
「何かしら! 帽子がナンセンスな剣士さん!」
ビキリ! とライラさんのこめかみに青筋が浮かぶのを見た!
やっぱり! この子、ナチュラルに人の事を煽ってくる!?
「邪魔だ。迷惑だ。俺達の近くに寄るな」
「お断りよ! そこのサキュバスの監視が出来ないじゃない!」
「じゃあバトルで決めようぜ。俺とアンタの一対一。【乱入】無しの条件だ。【パラディン】様なんだろ? 相手にとって不足はねぇ」
ライラさんはレベル90代の【中級職】。オリーさんは――彼女の言う事が本当ならレベル200越えの【一級職】。勝負をすれば、ライラさんに勝ち目は無い。
と思う。
「まさか断らねえよなぁ? 格下からのバトル要請だぜ? 勝てて当然だ。お前に何のデメリットも無ぇ。引き受けるのが当然だよなぁ?」
その時ボクは見た。
ドヤ顔するオリーさんの額に、冷や汗が薄っすらと滲むのを!
「ふふ…! 貴方の申し出を受けてあげたいところだけど! 急にお腹が痛くなってきたら今回は貴方の不戦勝って事にしてあげるわ! 運が良かったわね!」
捨て台詞を吐くと、オリーさんは宿に向かってダッシュして行った。
……うん。分かってた事だけど。
「何がパラディンだよ。今どきマジで腹痛を理由にバトルを拒否る奴が居るかっての」
「案外本当に腹痛だったりして」
「なら運が良かったのはアイツの方だな。俺にボコられずに済んだんだからよ」
「ですね♪」
さて今度こそライラさんと二人っきりである。
別に浮足立つような事でもないんだけど――これを期にライラさんと少しは仲良くなれればいいな。
次回投稿は3/4(木)AM8:00の予定です。
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