第9話 鉱山町バーグヴァーグ!
「……むぅ」
安宿【止まり木亭】の個室。
ベッドの上に仰向けになりながらボクは唸り声を上げた。
「【呪われ村ハイムヴィ】か……」
先程ネット掲示板で仕入れた情報を頭の中で整理する。
そこはライラさんとココノさんの故郷だった。
でも二年半前に起きた大地震の影響? で森にモンスターが溢れて食料源である野生動物が取れなくなった。この町【バーグヴァーグ】も生命線である鉱山が落盤に遭い、ハイムヴィと共に絶体絶命のピンチへ。
追い打ちを掛けるかのように村を何者かが襲い、石化の呪いを村人全員に施した。
難を逃れたのはライラさんとココノさんの二人だけ。
「……おっも……」
アイセさんもココノさんもハイムヴィに関して何でもないように話していたから油断していた。まさかこんなシリアスな話が待ち受けているだなんて。
それに呪い自体も強いらしく、解呪の目途が立っていない。
恐らくボクと淫紋と同じ、ランク8~9の浄化魔法が必要になるとか。そう言えばココノさんが、ボクの淫紋を解除するのは諦めた方が良いかもしれない――みたいな事を言っていたけど。
「ココノさんとライラさんは二年半、解呪の手がかりをずっと探し続けて来た、って事だよね」
んで未だに呪いを解く方法が見付からない、と。
そりゃボクの淫紋もすぐ解呪出来る――なんて言えないよねぇ。
「ボクと似た妹さん、か……」
トリィさん、だっけ。ライラさんの妹。
ライラさんは――石化してしまった妹さんとボクを重ねていたのかなぁ?
そしてそれを悟られるのが嫌で、ボクに対して『村に来るな!』って釘を刺してたのか。
えへへ、ライラさん思ったよりも繊細♪
なーんて、笑っちゃいけないよね。不謹慎だ。
むしろ……
「何か、してあげられないかな……」
一応僕も『シックステール』のファミリーだ。
ライラさんの弟分なのだ。
――――あ、ボク女になってるから妹分か。
兎に角、血の繋がりは無いけど家族には違いない。
特に僕はライラさんからあんまり良く思われていない節があるから、好感度を上げておきたい。
……むぅ。言葉が悪い。
難しく考えず! 単に仲良くなりたいだけなの!
「その為には~」
ボクが悶々と頭を悩ませている時だった。
コンコンと、ノックの音が響く。
『ハル、居るか?』
「アイセさん? どうぞ」
扉が開く。顔を出したのは我らがリーダーアイセさん。
但し、胡散臭い黒ローブを装備している。片手にはドクロのマスク。変装を施した余所行きの格好だ。
「何処かにお出かけですか?」
「あぁ。ここは鉱山町らしく商店には武器の強化素材が種類豊富に販売しているらしい。一緒に買い物でもどうかな、と」
!? これは! デートのお誘い!(違う)
「行きます!」
そうだ。武器の強化素材って、ライラさんにプレゼントしたら喜ぶんじゃないのかな? ライラさん剣二本も持ってるし、強化素材はある分には困らない筈だ!
「行きますっ!!」
「む? 何故二回返事を?」
「細かい事は良いですから! さあ行きましょう!」
ボクはメニューウィンドウから装備画面を開けると愛銃【デリンジ】を装備。すると何処からともなく銃が収まったホルスターが腰に装着される。
この世界【リリアレス】はポケットやバッグに物理的に物を仕舞う事に加え、謎空間にもアイテムを格納する事が出来る。貴重品などもまとめて、バックとかじゃなくてこの謎空間に放り込んでおけば盗難の心配も無し! 手だって塞がらないし、便利な世界だぁ~♪
「それじゃ行きましょう!」
意気揚々と部屋から出ていくボク。
と、宿二階の廊下に出た途端、看板娘のミースさんと出くわす。
「おや。お出かけっすか?」
「武器素材の買い物です♪」
「はー。ハルさんもちゃんと冒険者やってるんすねぇ」
言いながら感心した様子で、ミースさんはボクの腰に吊るされたデリンジを見遣る。
「えへへ。これでも一応、シュタットを救った英雄なんて言われてますから」
「あ、そうっす! 忘れるところだったっす!」
言うとミースさんはスカートのポッケから何かのチケットっぽい紙を取り出した。
「これを使うといいっすよ」
「これは?」
「商店で使えるクーポンっす。なんと! 一万Z以上のお買い物で5%の割引になるっすよ!」
「……安くなるのは嬉しいけど」
一万Zも買わせておいて5%だけ安くなるとか微妙ちゃう?
「ちゃんと使って下さいっすよ!? 約束っすよ!? はい! アイセさんにもどうぞ!」
「あ、ああ。ありがとう」
「っしゃ二枚もはけたー! ママー! アタシ出来る子っすよ!」
えぇ……。クーポンを渡しただけでなんでこんなに喜ぶの?
――と、顔にもろに出てしまっていたらしい。
ミースさんは苦笑いをしながら説明してくれる。
「あー。実はですねぇ。ここ最近、税の締め上げがヤバいんすよ」
ボクとアイセさんは思わず顔を合わせた。
あらま。大変だ。
「えーと、それとこのクーポンとどういう関係が…?」
「クーポンには発行店が記載されてるっす。で、徴税の際にこのクーポンの使用枚数によって納める税が減るっす。あ、渡せるのはお一人一枚までっす。もし同じ人に複数枚渡してるのがバレたら豚箱行きっす」
あー……多分、控除って奴かな。
一定条件で納めるべき税が緩和されるっていう仕組み。
「その、気分を害したなら申し訳ないのだが――随分とアコギな町なのだな」
「そうなんすよ! それもこれも二年半前のあの日、領主様が新しくなってからっす!」
二年半前? それって確か――
「――アンフォーシュ大陸北部大地震」
「それっす! ご存じだったんすね」
「ええまあ」
ついさっきネット教えてもらったところやからね。
「その地震でこの町は、そりゃーもう再起不能になるとこまで落ちたっすよ。鉱山は潰れる。お隣のハイムヴィも呪いで全滅。食べる物も金も無かったっす」
「それが良くここまで復興できたものだな」
「お国から復興支援の為に貴族様がやって来たっすよ」
ほう。貴族とな。
「あー、大陸の南側に【グラナトゥア】って言う王国があって、そっから派遣されたらしいっす。【ペドフィ=ヒドニスター】っていう偉く美人な侯爵様なんすけどね。町の復興の為に資金を提供してくれたっすよ」
「良かったじゃないですか」
「当時は皆そう思ってたっすよ」
げんなりとした表情を浮かべるミースさん。
「当時のペドフィ様って人当たりも良くて、お金持ちだったっす。何より町を救った功績が大きかったすからねぇ。女神様同然の扱いだったっす。それで去年の今頃、気を良くした町長さんがペドフィ様を正式に【バーグヴァーグ】の領主として認められて、晴れて【バーグヴァーグ】は【グラナトゥア王国】の領地になったっす――それからっすよ」
大きなため息を一つ。
「晴れて領主となったペドフィ様は豹変したかのように住民から税を毟り取るようになったっす。街中央の商店なんかは人入りが多くなったんで平気なんすけど……ウチみたいな弱小店じゃ生活するのでもー手一杯なんすよ」
「……うわぁ」
「酷い話だ」
「そうっすよね!? 昔はそんな事無かったんすけど、今バーグヴァーグは富裕層と貧困層でバックリ分かれちゃってるっすよ。貧しいお店は人も雇う余裕が無い。でも設けているお店とかは国から派遣されたお貴族様が取り仕切ってアタシら地元民が働く隙間は無いんすよぉ。だから今、働けない人達があぶれてるっす。そうやって生活できなくなった人達が盗みとかの犯罪をするようにもなって……今バーグヴァーグは治安も悪いんすよ」
治安が悪くなるほど税を絞るとか……領主様は町の事をないがしろにしすぎやろ。ただ単に金の生る木、くらいにしか思っとらんやんけ。
「あー……」
と、そこでミースさんの口が急に重くなった。
口をまごまごと動かしている。なんだろう。言おうか言うまいか迷ってるみたいな……
「実はっすね。アタシの一個上の友達に【ラッテ】っていうハーフリングの女の子が居るんすけど」
「ハーフリング?」
って何ぞや? 聞いた事無いぞ。
「あー。黒髪で、めっちゃ背の低い種族っす。エルフほどではないにしろ魔法に適性があって、ドワーフ程じゃないにしろ鍛冶仕事が得意な種族っす」
低身長黒髪で、エルフとドワーフを足して割ったような種族って事ね。オッケー、覚えた。
「昔はよく一緒に遊んだ仲なんすけど、町がこんなになってからは疎遠になって……あの子の家ビンボーだったから心配なんすよ。手癖が悪くて万引きした事もあるっすから……今頃きっと……」
「えーと。それをボクらに聞かせてどうしろって言うんです?」
ひょっとして……探して出して安否を確かめて欲しいとか?
ミースさんも暇じゃないだろうし。地元の人間は今、生きていくのに精一杯で他人の心配をする余裕も無いだろうし。
だから代わりにボクらにラッテさんを探して欲しいのかな。
なんて思ったらミースさんが冗談めかしながら言うのだ。
「いやいやー。盗みにお気を付け、って話っす。折角買ったお高いアイテムも、お金と一緒に消えちゃった――なんてのは今どき珍しくないっすからねぇ」
こっわ…! ってかボクらの心配をしてるんかい!
「肝に銘じておこう」
「わ、分かりました。忠告、有難うございます」
「あ、まだ話に続きがあるっすよ」
「え?」
「実は、若い女子ばかりを狙った行方不明事件が起きてるっす」
なんやて。
「若い、っていうか幼い、って言った方が良いっすね。大体12~15歳くらいの子ばかり狙われてるっす」
このロリコンめ!! なんてふてー奴だ! 捕まってしまえ!
「まあ、こんなご時世っすからね。単に変質者や悪ーい人達が女の子を攫った、っていうのが正解だと思うんすけど……親が口減らしに子供を売った、とか言われても信じちゃうっすよ」
あー、この町の実情を聞いていると確かにありそうな話だ。
「まあそんな事がここ二か月くらいずっと続いていたんすけど……今は収まってるっす」
ほ……。まあ、またレベル1に戻っちゃったとは言え、そこらの痴漢や強盗なんかには負ける気はないけどね(ドヤァ
「ま、今は謎の石化事件が起きてるんすけどね」
一瞬、思考がフリーズする。
――石化事件、やと?
ボクらヴェイグランツとしてはタイムリーな話題に、アイセさんと思わず顔を見合わせてしまう。
「まるで行方不明事件と入れ替わりになるように起き始めたんすよ。小さな女の子ばかりが石にされてるっす」
「それって、アイテムとかで治せないものなんです?」
「無理っす。強力な呪いみたいで普通の石化解除アイテムは勿論、町にいる神父様にもお手上げみたいっす。ランク6の浄化魔法を使う、結構な使い手らしいんすけどねぇ」
高ランクの石化の呪いって、最近聞いたばかりやぞ!
「ミースさんそれって……ハイムヴィの石化の呪いと関係が?」
「ああ、そこまで知ってるんすね。皆言ってるっすよ。今度はバーグヴァーグが狙われてる! って」
ライラさんとココノさんの村を全滅させた呪い使いが、この町に潜んでいるかもしれない、って事!?
まさかたまたま立ち寄った町でこんな大事件が起きてるなんて。
「まあそういう事っすから。お二人とも充分気を付けるっすよ。それからお渡ししたクーポンは絶対使うっすよ! 約束っすよ!?」「あはは……分かりました」
「心得た」
「頼むっすよ♪ さあーお仕事お仕事♪ あ、お二人とも長々と引き留めて悪かったっす。気を付けて行くっすよー♪」
気を取り直してお部屋の掃除に取り掛かろうとするミースさん。
「――ミースさん?」
「? 何すか?」
その背中に声を掛けた。
今の話を聞いて、流石のボクもミースさんのお友達が気掛かりになった。
前科持ちの女の子で現在は音信不通。しかもハーフリングの女子って事は【幼い女の子】に見えるって事で、行方不明事件や石化事件の犯人に狙われる可能性だってある。
……或いはもう……
さっきは何でもないような素振りだったけど……友達であるミースはきっと気が気でない筈だ。
「ハルさん?」
「ラッテさんの事、もう少し話してくれませんか? ちょっとくらいは役に立つかもしれません」
ミースさんはポカンとした顔を浮かべると。
綺麗なエメラルドグリーン色の瞳にじんわりと涙を浮かべた。
「ハ、ハルさあぁぁぁん! なんていい子なんすか!? アタシが間違ってたっす! ちょっと料理が上手いだけのスケベでビッチなサキュバスだと思ってたっす! メッチャ良い子じゃないすかぁ! ピンク髪は皆淫乱だなんて嘘だったっす!」
「けなすか褒めるか謝るかどれかにしろや!!」
ってな訳で、ボクとアイセさんは買い物に行くついでに軽ーくラッテさんの捜索も行う事になったとさ。
***
Topics!
『=================
ハーフリング
=================
STR;ふつー VIT:ふつー
DEX:すごい AGI:ダメ
INT:すごい MND:ふつー
DES:ふつー LUC:ダメ
=================
種族アビリティ
=================
【職人気質】
同じスキルを使い続ける事によって
スキルレベルが上昇しやすくなるよ。
何か一つの事を極めるには便利な
能力だね。
=================
解説
ステータスだけならバランスの取れた
種族だね。黒髪黒目短身が特徴の
可愛らしい種族だよ。
種族アビリティの影響で何か一つの
スキルに特化している子が殆どだね。
手先が器用で魔法も使える。足が少し
遅い(歩幅的に……)のとちょっと
幸薄い事以外には弱点も無いかな。
冒険者をするにしても前衛、中衛、
後衛なんでもござれ。
鍛冶や錬金などのクラフト系の職業や
商人なども全然いけるよ。
================』
***
「黒髪、黒目、背が低い、釣り目、やさぐれてる感じ。おしゃれには興味なし……」
ブツブツと呟きながらバーグヴァーグの町を歩く。
羅列している言葉はミースさんのお友達であるラッテさんの特徴だった。どうしても片手間にはなると思うけど……自分から言い出した手前、出来る事はしておきたい。
『簡単には見つからないな』
声を掛けてくれたのは全身黒ローブを羽織り、ドクロマスクを被った変装アイセさん。うん。いつ見ても怪しい。何なら「この人が誘拐事件と石化事件の犯人です!」って言われてもしょうがない見た目だった。
「うーん……ですねー」
道行く人に探し人の姿を求めながら、ボクは返事をする。
時間はお昼前。丁度人が多くなる時間帯だ。
バーグヴァーグは鉱山町だ。
2、3密集している小高い鉱山の隙間を埋めるように町が形成されている。お陰で町全体の高低差が大きく坂道が多い。
あちこちから鉄を打つ鍛冶の音が聞こえ、町全体からどこか煙い空気を感じた。
その中で見かけるのはボク達同様の冒険者か、仕事をしているドワーフ、エルフくらいで――
「――あっ!」
「【クォーツ】~♪【クォーツ】はいかがですかー! 武器強化の必需品ですよー!」
バーグヴァーグの中央通り。
武器素材の露店商が密集している所で、子供のような背丈をした黒髪の店員さんが客引きをしていた。
あの人、ハーフリングじゃないかな!?
「あの、すみません!」
「はい、いらっしゃいませー! 強化素材をお求めですか?」
可愛らしい店員さんだ。ボクよりも背が低いし、童顔だし。ほっぺはぷにっぷにで大きなお友達が大興奮する事間違いなし。
格好も、パフスリーブの白いブラウスに若葉色のベスト。それにベルトを通したハーフパンツ。長い黒髪の上にはベストと同じ色のキャスケット帽子を被っていた。
どれも上品なデザインで、良い所の商売人と言った風情が――
『ハル。恐らくこの子では無いと思うが……』
「あー」
ミースさんから聞いていたラッテさんのイメージとは真逆だ。
それに――
よく見ると O P P A I がぺたんこやんけ!!
この子、男の子やん……
「あの、少しお聞きしたいんですけど」
でもこの際だ。聞くだけ聞いてみよう。
「はい? なんでしょう?」
「ハーフリングで、ラッテ、っていう女の子を知りませんか?」
「ラッテですか。うーん――」
「釣り目でちょっとやさぐれてる感じの子、なんですけど」
「――あー、いや。やっぱり知らないですねー。ハーフリングと言ってもこの町には結構いますから」
「そう、ですか」
むぅ。やっぱりすぐには見つからないか。
「ところでお客さん♪」
「はい?」
……おう。ハーフリングのショタ商人君バッチバチの笑顔やん。
『何か買え』オーラをビンビンに発しとるけどな!
むしろ『は? 買わんと殴る』くらいの威圧感を感じる!
「――えーと。お買い物させてもらいますねー」
「毎度ありー♪」
なんだか流された感じもするけど……
強化素材を買うのが目的のお買い物だし。別にいいかな?
***
Topics!
『=================
クォーツ
=================
武器強化に必要な素材アイテムだね。
半透明の綺麗な鉱石だよ。
これを持って武器屋に行くと、武器を
【強化】してもらえるよ!
【強化】した武器は性能がアップ♪
ただし【強化】する度に武器のランク
が上がるので注意!
自分のスキルレベルと武器のランクを
相談しながら強化しよう!
折角強化したのにスキルが足りなくて
使えなくなったとか、そんなお間抜け
な話をたまーに聞くよ!
また武器のランクが高ければ高い程、
純度の高いクォーツとランクに
応じた個数が必要になるよ。
ランク1~3の武器には【低純度】が
1~3個必要。
ランク4~6の武器には【中純度】が
1~3個必要。
ランク7~9の武器には【高純度】が
1~3個必要になってくるよ。
純度によって値段にかーなーりー
差があるので購入する際には注意!
他にもランクの高い【伝説の武器】
と呼ばれるレア武器には
【クリスタル・クォーツ】と呼ばれる
特別なクォーツでのみ強化する事が
出来るよ。
================』
***
「毎度ありがとーございましたー♪」
ハーフリングの男の子に見送られながらボクらは歩き始める。
『ふふ。まんまと金を使わされてしまったな』
「ですねー」
まあ、無事クーポンを使う事は出来たけど。
ボクは【低純度クォーツ】一個と【中純度クォーツ】を二個。
アイセさんは【中純度クォーツ】を三個。
武器の強化に必要なこの【クォーツ】。実は結構お高い。
他の町でいくらするかは知らないけど、今買った【低純度クォーツ】は一個4,950Z。【中純度クォーツ】は一個9,950Zもするのだ。
ボクがシュタットの街で買ったランク1の銃、【デリンジ】――ベルトやらホルスターやら込み込みで――が確か5,000ちょっとだったから一番安い強化素材と武器の値段がほぼ一緒。
しかもクーポンを使おうと一万Z以上の買い物をしようとすると【低純度クォーツ】二個でも【中純度クォーツ】一個でもぎりぎり一万Zに届かないという、いやらしい値段設定なのだ!
まあ、ボクもアイセさんも結構稼いでいるから割と遠慮なくお金を使ってしまったけど。
『折角強化素材を買ったんだ。武器屋に行こうか』
「そうですね」
ボクの武器、デリンジのランクは1。そしてボクのハンドガンのスキルは2だ。つまり【低純度クォーツ】一個を使って一回だけ強化出来るのだ。
購入した【中純度クォーツ】一個はライラさんへのプレゼント。
ライラさんの片手剣スキルと両手剣スキルはどっちも4という話だし、ランク4の武器を装備しているだろう。ランク4の武器の強化に必要なのは【中純度クォーツ】一個。二つあればライラさんの使う剣二本とも強化できるだろう。
ふふ。武器の強化かー。楽しみだなぁ。
このデリンジ、使い勝手はいいけど攻撃力がひっくいからなー。可能な限り強化したいよね。
なんて考えていた時だった。
「――可哀想に。また被害者が出たってよ」
ん? なんか裏路地の入口に人だかりが出来てる?
「被害者って?」
「例のアレだよ」
「ああ、石化の……」
ボクとアイセさんは思わず顔を見合わせた。
近くで話しているドワーフらしき男子(三頭身のSDキャラやん!? 声も顔も女の子やし可愛い♪)の話を盗み聞く。
「今度はハーフリングの女の子だってよ」
「若くて可愛いい女の子ばっかり狙ってるって話じゃねえか。胸糞悪いったりゃしねぇ」
「まあけどよ。今回は自業自得かもよ」
「どういうこった?」
「盗みの常習犯だとよ。今さっき【モルガナイト】を盗んだところに奴さんと鉢合わせしたらしい、って話だ」
「はあ。救えねえなぁ……」
「……ハーフリングの女の子」
『……盗みの常習犯』
嫌な予感がする。
「ボクちょっと見てきます!」
居ても立っても居られない。
ボクはちっちゃな翼を広げると、人だかりを跳び越すように【跳躍】で裏路地に飛び込んだ。
次回投稿は2/14(日)AM8:00の予定です。
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