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第4話  アイセVSライラ!

 アイセさんVSライラさん。

 シックステール流刀剣術の使い手二人のバトルが始まった。


 ど、どうなるんだろうっ。

 およそ8メートル四方の、半透明のバトルフィールドの内側。アイセさんとライラさんは互いに得物を抜き放ち、構えている。

 その二人距離は、恐らく3メートル程。いくらレベルダウンしているとしてもアイセさんなら一息に懐に入り込める。


 レベルはライラさんの方が20以上高いみたいだけど……ボクはアイセさんの強さをこの目で何度も見ている。あのスピードはライラさんにとっても脅威の筈。多分、レベル差20程度、アイセさんには関係無いだろう。


 対するライラさんはアイセさんよりも装備が固い。AP(アーマーポイント)もアイセさん70に対し、ライラさんは220もある。

 APはゲームで言う所のHP(ヒットポイント)だ。攻撃が当たる度に削れていき、0になった時に特定の攻撃を受ける事で敗北となる。

 そのAPが、アイセさん70に対してライラさん220。

 この差は、かなり大きい。


 しかもライラさんが装備しているのは攻撃力が高めの【両手剣】タイプの武器。しかもライラさんのクラスは、連続攻撃に特化した

【ソードマスター】。一撃でも直撃を受ければ、そのまま【アーツ】による連続攻撃を受けて、アイセさんのAPは吹き飛ぶだろう。


 つまりこの戦い。アイセさんが勝つ為には、一度もライラさんから攻撃を受けてはならないんだ。しかもライラさんはアイセさんよりも三倍以上もタフ。


 アイセさんかライラさん、どっちが勝つのかボクには想像もつかない。


「「…………」」


 いやそれにしても二人とも動かんやんけ。 

 ボクもっと激しい戦いになると思ったんだけど。こう、ライラさんが突っ込んで、それをアイセさんが回避して、みたいな。

 ところが実際は得物を正眼に構えた二人が見合い、微動だにしていない。


 けど、退屈、とは思えなかった。


 何せよ二人の『圧』が凄い。元々二人は相当の使い手だ。傍観者のボクでも、息を呑むような緊張が伝わってくる。

 見ているこっちの手に汗が滲んできた。


「……ふっ。どうしたライラ? 先程は随分と息巻いていたようだが……腰が引けているのではないか?」

「へっ。慌てんなよ。せっかちな男は嫌われるぜ?」


 ざぁ、と風が吹いた。

 この世界、今は5月らしい。暖かな風が吹き込み、周りの木々を、葉を、草を揺らす。

 

 いくつか、葉が風に攫われた。

 鮮やかな新緑の色を纏った葉が空を舞い――アイセさんの方へと落ちて来る。

 

 その葉っぱがアイセさんの鼻先を掠める、その瞬間――


 ライラさんが踏み込んだ!


 まるで獣が地を這うように姿勢を低くしながら、アイセさんの足下目掛けて斬撃を放つ!


「っ!?」


 アイセさんの反応が遅れた! ひょっとしてさっきの葉っぱが視界を遮ったの!?


「っらぁっ!」


 両足を切り落とす勢いの薙ぎ払い! 重い筈の両手剣を使いながらもその斬撃は――馬鹿みたいに速い!


「――っ!」


 けどライラさんの下段攻撃をアイセさんは軽く跳躍して回避!

 チャンスだ!

 両手剣は一撃の威力が高い分、重く、取り回しが悪い。

 それに眼下には、斬って下さいと言わんばかりにライラさんの頭がある!

 アイセさんはお返しとばかりに真上から刀を振り下ろ―― 


 ライラさんの体が旋回する。

 下段への薙ぎ払いの勢いのまま回転する!


 そして今まさに刀を振り下ろそうかとしているアイセさんへ――回し蹴りを繰り出した!?


 ライラさん蹴りも使うの!?


「なんっ――」


 しかしそこはアイセさん。

【クラスアビリティ】【空舞術エア・マスター】を使用し、空中ジャンプ! ライラさんの蹴りをギリギリでかわす!


 あ、危なかった…っ。少しでも反応が遅れてたら蹴りをまともに食らってたよ!? ライラさん普通に強いやん!?


 まあでも、空中はアイセさんの独壇場だろう。

 連続攻撃に特化した【ソードマスター】であるライラさんに対して、アイセさんはスピード特化、それも空中戦が可能な【ソードダンサー】だ。

 ちょっと前までは【ソードダンサー】の更に上位クラスである【ソードクイーン】だったんだけど……ボクが先の戦いでアイセさんのレベルを1になるまで吸収してしまったせいで【初期職スタートクラス】である【ファイター】からやり直しになってしまったのだ。

 更にクラスがダウンしてしまった弊害で、『チート』と言われていた【ユニークアーツ】【陽炎かげろう】も今は使用不能となっている。あ、【陽炎】はロックオンした標的の眼前に一瞬で移動する、いわゆるワープ技。これを使った疑似的な無限コンボがアイセさんの十八番おはこだったんだけど。残念ながら今は出来ないらしい。


 しかしそれでも。持ち前の集中力と身体能力が組み合わされば、空中にいるアイセさんに食いつける人なんてそうそう……


 ――蹴りを空ぶったライラさんが、自身の腰へと右手を伸ばしていた。

 ちらりと覗く、三つの白刃。それは――


 投げナイフ!?


 回し蹴りの勢いを更に利用し、ライラさんは右手に持つ3本のナイフをアイセさんに向けて投擲する!


「――たるぅっ!!」


 空中で刀を一閃し、飛来するナイフを纏めて叩き落とす!


「……着地、頂きっ!」


 アイセさんの落下地点目掛けて踏み込むライラさん。

 

 ――まずい。アイセさんは【空舞術エア・マスター】による空中ジャンプを使っている。ライラさんのような手練れに着地際を狙われたら、いくらアイセさんでも――


「……っ」


 ――と、どうした事だろう。

 今まさにアイセさんの足下目掛けて突っ込もうとしたライラさんの足が止まり――振り下ろそうとした剣を構え直す。

 それはガードの態勢だった。


 なんで? と疑問に思いつつ今まさに地面に降り立とうとしているアイセさんを注視し――


「……っ」


 ゾクリとした。


 自由落下するアイセさん。

 その瞳は、ライラさんを見ていた。

 まるでそれは、捕食者が得物を狩る時の目だ。

 少なくとも追い詰められている者のする目じゃない。


 今からライラさんを殺す――そう思わせるくらいの殺気が滲んでいた。


 そしてそれははったりでも何でもない。

 アイセさんの左手は鞘を持ち、右手は刀の柄へ。

 そう。居合いの構えだ。アイセさんは投げナイフを刀で弾いた後、すぐに納刀し、居合いの構えを取っていたんだ。

 

 着地後、すぐに居合いを放てるように。

 そしてそれは現実のものとなる!


 シュバッ!!


 地面に足が着くと同時に、アイセさんの体が急加速。

 着地の硬直など無いと言わんばかりに居合いを放つ!


 ぎぃんっ!


「つっ……!」


 咄嗟に防御の態勢を取ったライラさんはアイセさんの一撃を防いだけど――ガード越しにも18のダメージが入っている。


「なろっ…!」


 ライラさんの反撃。

 ビュオン! と風を切る音を響かせながら両手剣が閃く!

 

 ――が、大振りの袈裟切りに対して潜り込むようにライラさんの懐に飛び込み、渾身の突きを――


「っ!?」


 繰り出す直前に全力で右へと回避ローリングする。

 間を置かず、今さっきまでアイセさんの頭があった空間を、両手剣の柄頭えがしらが撃ち貫いた。


 ライラさんは闇雲に大振りの攻撃を繰り出したかと思ったけど違ったんだ。アイセさんが懐に飛び込む事を想定して、大振りの斬撃から素早く、柄による打撃へと連携したんだ。


 柄による攻撃は、攻撃動作の重い両手剣とは思えない程素早い。アイセさんでなかったらまともに食らっていたのではないだろうか。


「……すごい」


 思わずボクは呟いてしまった。

 単純に二人の技量に驚いているのもある。

 ボクのレベルが100を越えていたとしても、今のアイセさんとライラさんには敵わないだろう。


 そして何より凄いと思うのは――二人ともまだ一度も【アーツ】を使っていないと言う事だ。


【アーツ】はこの世界で言う所の必殺技のような物だ。SP(スタミナポイント)MP(マナポイント)の両方を消費し、強力な技を放つ事が出来る。技後硬直が存在するけど、その硬直をキャンセルし、再び別の【アーツ】へと連携させる【チェイン】という技術も存在する。


 二人とも【チェイン】はおろか、【アーツ】すら見せていない。

 だというのにこの迫力、この緊張感。

【アーツ】も使い、全力でぶつかりあったら一体どうなるのか。


「……今のも当たんねえか」

「いや、危うかったぞ。蹴り技といい投げナイフといい、私が知らぬ間にどんどん多芸になっていくな」

「はっ。テメェにとっては小細工だろうよ」

「それはどうか測りかねるが……そもそも出し惜しみをしているだろう?」

「……え?」


 ライラさんが、出し惜しみしている?

【アーツ】を使わない事に対して言っているの? いや、でも【アーツ】を使っていないのはアイセさんも同じだよ?

 だったら――


「両手剣一本だけで戦うつもりか?」


 両手剣一本だけ(・・・・・・・)

 一本だけ、ってどういう事? まるで「二本持たないの?」とでも言いたげなニュアンスだけど。でも両手剣は両手で持つ物だから

他に何も装備できないよね?


 現にライラさんの持つ得物は全長2メートル程度の大型の曲刀だ。これを片手で振り回すには少し無理が……


「へっ。こいつ一本でどこまでやれるか試したい気持ちもあるが……まあ、流石に無理か」 


 何でもないように言うと、ライラさんは両手剣を左手一本で持ち直し――右手で腰の後ろに差していた片手剣を引き抜いた!


「に、二刀流!?」


 しかも左手に持ってるの、さっきまでぶん回してた両手剣だよ!? 片手で振り回せるものなの!?


「うし。準備運動はこれくらいにして……」

「あぁ。ここからは……」


「本気で行くぜェ!」

「本気で行かしてもらう!」



 ***


 Topics!


『=================

        両手剣

 =================

 文字通り、両手で使う事が前提の

 大型の剣だね。

 片手剣に比べて重く、攻撃力が高い。

 特徴は相手を怯ませる力が強い事と、

 攻撃時に強めの怯み耐性(スーパーアーマー)が付く事。

 重装備で防御を固めて、敵の攻撃を

 受けながらも手痛い反撃を繰り出す

 事が出来るよ!


『力とはパワーだ!』なんて脳筋思考の

 貴方にぴったりの一品だね♪ 


 片手剣同様に、刺突攻撃に優れた

『ストレートタイプ』と斬撃性能特化

 の『カーブタイプ』が存在し、

 また攻撃力と重量に特化した、

『グレートタイプ』が存在するよ。


 両手運用が基本の武器だけど、

【ソードマスター】の【アビリティ】

二重の剣(デュアル・ソード)】等、特定のアビリティや

 アイテムを装備すれば片手で

 運用する事も可能だよ。

 ================』

 

 ***



ちょっと短くなっちゃった。ごめんよ(´・ω・`)


次回投稿は1/14(木)AM8:00の予定です。

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