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第3話  郷愁! 

「料理スキル5もあるの!?」

「なんたる……それならばあの旨さにも納得できる」

「料理番だけやってれば?」


 ボクの料理をお披露目(そんな大層なモノでもないけど)後、皆でコーヒーや紅茶を啜りながら料理スキルの話になった。


 ボクの料理スキル5。今ならそれが結構凄い事なのだと分かる。


 この世界では剣や銃、魔法や料理至るまで、各々のジャンルの習熟度合いを【スキル】と称してランク付けされており、強い装備や技、魔法なんかを手に入れても、は対応するスキルが育っていないと使えない、という仕組みになっている。

 スキルの最低値は0で最大は10。ざっくりと格付けすると――


 0>ド素人。何も出来ない。

 1~2>初心者。頑張りましょう。

 3~4>中級者。まだまだ頑張りましょう。

 5~6>上級者。スゴイ! 勝ち組!

 7~8>一流。一握りのヤベー奴ら。

 9~10>伝説。実在したりしなかったりする。


 って感じになるみたい。

 その中でボクの料理スキルは5。一応上級者って扱いになるのかな? 大袈裟だとは思うけど。


「スゴイのは分かりましたけど。やっぱりちょっと実感が無いって言うか」

「いや~ハルさん凄いっすよ? 私で3、ママでも4っすから」


 ミースさん――ココノさんにお代わりのミルクティを持ってきた――が代わりに答えてくれた。

 いや何でそんな腕で宿屋なんてやってねん。ボクらが泊まらんかったら客おらんで?

 あ。ココノさんがポーションをがぶ飲みするようにミルクティ飲み干した。そして再びお代わりしてる!? なお4回目の模様。


「ちなみにライラちゃんは得意の両手剣スキル、片手剣スキル、どっちも4だよ?」

「っておい!? 勝手に俺のスキルをバラすんじゃねぇ!」

「あはは……アイセさんの刀スキル7とは随分差があるんですね」

「いやハル。私はレベルが下がってしまったせいで今は6だ」

「――お代わり!」


 そうそう。シュタットでの戦いでボクはアイセさんのレベルを全部吸っちゃったんだよね。で、アイセさんのレベルが1になったんだけど……


「おいアイセ。お前レベル今いくつだ?」

「71だ」

「マジかよ。もうそんなに上がってんのかよ……」

「ついこないだまで1だったのにねぇ――お代わり!」

 

 どこかげんなりするライラさん。うんうんと感慨深そうに頷くココノさん。

 シュタットでの騒動の後、移動しながらアイセさんがモンスターの討伐クエストやら野良モンスターの駆除やら片っ端からこなしていったんだよね。


 ――――ソロで。


 元々【孤高のサムライマスター】の称号効果で経験値が4倍っていうボーナスがあるのに、更にソロでモンスターを退治しまくったお陰でガンガンレベルが上がっているらしい。


 流石はアイセさんや!


 あ、ちなみにボクのレベルもなーぜーか1になってる。

 ボスの吸血鬼を倒した事実だけ残って、その戦いの中で何があったのか誰も覚えてないの……怖すぎ!!


「今日もクエスト受けてんのか?」

「いや。今日は一日、羽を伸ばすつもりだ」

「へぇ。そいつはイイな。なあアイセ。久しぶりに付き合えよ」

「――お代わり!」


 お。ライラさんがアイセさんを誘ってる。

 武器屋巡りでもするのかな?


「……確かに最近、無沙汰にしていたな」

 

 そう言うアイセさんの顔は……何だか嬉しそう?

 口角を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべている。

 アイセさんとライラさんの間で視線が交錯し、バチバチと火花が散っている。


 あ、これは――ライバルを前にした男の子がする顔ですねぇ。

 女体化したボクが言うのもなんだけど……

 アイセさん? それ、女の子の顔じゃないですよ?(偏見)


「いいとも。久しぶりにバトル、と行こうかじゃないか」


 アイセさんとライラさんは同時に立ち上がる。


「へっ。今日は勝つぜ? 俺の方がレベル高ぇからな!」

「さあ? それはどうかな?」

「へっ。言ってろ」

「――お代わり!」


 話ながら二階へ向かう二人であった。

 いや。今の会話、男子やん。メッチャ仲良しの体育会系男子二人の会話やん。


「――あのお二人、仲いいんですね」

「アイセちゃんとライラちゃんが、っていうよりアイセちゃんと皆が、って感じかな――お代わり!」

「あー」


 そりゃそうか。流石はアイセさん。人格者にて正義のヒーロー。ボクが知らないだけで、パーティの皆とはきっと深い絆があるに違いない。

 それはそうとして。


「――そう言えば、さっきライラさんに二回ほど顔をガン見されたんですけど……あれってどういう事なんでしょう?」

「ハルちゃんをガン見?」


 ココノさんは首を傾げ――暫くすると何か思い当たる節があったように、あぁ、と声を漏らした。


「ライラちゃんね、妹が居るの。トリィちゃんって言うんだけど。ハルちゃんと一緒で料理上手で……性格もね、ライラちゃんには勿体ないくらい良くできた子なの――お代わり!」

「えーっと。そのトリィさんとボクが似てる、って事ですか?」

「うーん、顔はそこまで似てないかな? でも髪型はハルちゃんと一緒だね。姫カット。料理が上手な所とかしっかりしている所も共通点かな。後は恥ずかしがり屋さんな所とか。他には――黙ってる時の雰囲気とかはちょっと似てるかもね。おしとやかな佇まいっていうか……」


 それ言われたく無い言葉の一つです。はい。


「にしてもココノさんって、ライラさんの事、詳しいですね?」


 何となくだけど、ココノさんとライラさんも気安くしているイメージがある。


「あー、ライラちゃんとはね。実はね幼馴染なの」

「幼馴染!? ライラさんと!?」

「そ。お隣さん。子供の頃は私とライラちゃん、トリィちゃんの三人でよく遊んでたなぁ――お代わり!」

「もう無いっすよ!!? 何杯飲むんすか!!?」


 怒涛のお代わりラッシュにミースさんが悲鳴を上げた。


「だってハルちゃん特製のミルクティ、美味しくて止まらないんだもん~」


 実はちょっとスパイスを足してチャイ風(インド風)ミルクティにしてあります(ドヤァ

 それはそうと。後で胃と膀胱に来ますよ? ココノさん。


「しかしライラさんとココノさんが幼馴染ですか。ちょっと意外かもしれないです」

「…………」


 おや? リアクションが無いぞ? 

 ココノさんを見ると、再び何かを考えているような仕草。


「ココノさん?」

「――うーん。ハルちゃんも晴れてファミリー入りだし、話しても良いかな?」

「何のお話です?」

「えーっと、じゃあねえ……これだけ。実はね、私とライラちゃんの故郷って、ここから結構近いの」

「え? そうなんですか? じゃあ里帰りとかは……」

「私は、そうだなぁ。気が向いたら、かな。ライラちゃんは――どうだろうね。行きたがるかも?」

「へぇ……」


 ココノさんとライラさんの故郷か、ちょっと興味あるかも。ライラさんの妹さんにもちょっと合ってみたい。


「ちょっと興味が出てきました。近くにあるならボクも行ってみようかな」



「それは……止めといた方がいいかもね」



「え……」


 ほんの少しだけど、空気が重くなった気がした。


「どうしてです?」

「秘密」

「えー? そこで勿体ぶらなくてもいいじゃないですかー」

「あー、ゴメンね? ちょーっとデリケートな話なの。だから、私が話せるのもここまで」

「むぅ……」


 何か、仲間外れにされてるような感じ。

 でも。故郷が近くにあるのにすぐに里帰りしないのは、何でだろう。ボクら今は、何かクエストを受けている訳じゃない。シックステールファミリーのホームを目指してゆっくり旅をしているだけだ。何ならパーティ皆でココノさんとライラさんの故郷に顔を出しに行ってもいいと思うんだけど。

 うーん。うーん。

 

「あはは。ハルちゃんってば考え込んじゃって。ゴメンね? 何か思わせぶりな話になっちゃって? まあでも。そんなに気になるならライラちゃん本人に聞くか、アイセちゃんに聞けばいいと思うよ? 丁度二人とも出るみたいだし。着いて行っちゃえば?」

「……そうしてみます」

「パーティのエース二人の対決だからね。見応えあるよぉ♪」

「どうせまたライラの負け」

「あはは……」


 ネロ(ちゃん)が漏らした呟きに思わず苦笑いをした。



 ***


 Topics!


『=================

      スキルレベル

 =================

 皆略して【スキル】って言ってるね。

 剣とか魔法とか、何がどれだけ得意 

 かを数値化したものだよ。

 強い装備、技や魔法が手に入っても

 スキルが足りていないと使えないから

 注意!


 スキルにはそれぞれ経験値が設定され

 ていて、使い込み、クラスチェンジ

 などで経験値を入手。

 一定値に達するとスキルレベルが上昇

 する仕組みになっているよ。


 色んな武器種を使ってオールラウンド

 に戦えるようにするか、一つの武器に

 絞ってその道のエキスパートになる

 のか。自分に合った戦い方を

 見付けよう!


 ちなみにクラスチェンジしてから

 シェアリングなどのキスでレベルが

 低下した場合、『クラスチェンジで

 獲得したスキル経験値は無かった事に

 なる』からね! 


 >クラスチェンジ!

 >スキルレベル上昇!

 >シェアリングでレベル低下。

 >レベルを上げてクラスチェンジ!

 >スキルレベルが再び上昇!


 みたいなズルは出来ないからね!

 ================』


 ***



 トリィは、ライラにとって良くできた妹だった。

 料理が上手く、気が利き、頭もいい。

 将来は立派な嫁になるだろうと、誰もが思っていた筈だ。


『兄さん。また父さんと山籠もり?』

『おう。獲物をたらふく狩って来てやら』

『……気を付けてよね?』

『お? 何だよトリィ。兄の身が心配か?』

『勿論。男の働き手が無くなったら困るのは私とお母さんだからね。怪我せず帰って来てね? 看病とか御免だから♪』

『へーへー。可愛くねぇなぁ――んじゃちょっくら行ってくら』

『あ。ちょっと待ってこれ。サンドイッチ作ったから、お父さんと一緒に食べて』

『お? 気が利くじゃねえの――ちゃんとマスタード多めに塗ってあるだろうな?』

『もう。あんまり辛い物食べると胃を悪くするよ?』

『へっ。んなヤワな鍛え方してねーっての』

『おーいライラぁ! トロトロしてっと置いてくぜー!?』

『オヤジうるせぇっての――んじゃ今度こそ行ってくら』

『うん。行ってらっしゃい』

『おう。猪大量に狩って帰ってくっからな? 楽しみにしとけ!』

 

 それは今から約2年半前。雪の積もる真冬の――なんて事の無いライラの思い出だ。


「――あークソ。思い出しちまうな」


 ライラは歯がゆそうに独り言ちた。

 新たな仲間と、血の繋がった妹の姿がどうにもダブる。


(トリィの奴に話したら睨まれそうだな。『お前と良く似た奴が仲間になったぜ?サキュバスだけどなw』って)


 トリィは潔癖な性格だからエロスの権化であるサキュバスと似た者扱いされればさぞ機嫌を悪くするだろう。


 赤と黒の鎧を着込み、得物の両手剣と片手剣を装備。

 そしてテンガロンハットを目深に被ると――誰にともなく呟く。


「――まあ、たまには里帰りしてやるか」


 その瞳は窓の外、山の麓を見ていた。



 ***



 という訳で街の外のまでやって来ました。

 道すがら二人に話を聞いていたんだけど。何やらアイセさんとライラさん、暇を見付けては二人で手合わせをしているらしい。

 パーティのアタッカー二人の直接対決であり、シックステール流刀剣術の弟子二人の対決。これはもう見るしかないよね?


「うっし。この辺りでいいだろ」

「あぁ」


 街から少し離れた、雑木林の中にバトるのに丁度いい空間を見付ける。ライラさんはウィンドウを操作して――


 デデン! [【プラクティスバトル】の申請が来たよー]


【プラクティスバトル】。【パーティ】や【ファミリー】など、身内の者同士で行える特殊なバトル形式だとか。模擬戦闘とか練習バトルモードとか言われてるらしい。通常の【バトル】とほぼ同じルールなんだけど、この【プラクティスバトル】では装備ぼうぐが壊れない。


 つまり、 脱 げ な い らしい。


 最高やんけ!?(全裸経験3)

 ただし、怪我をしない、脱げもしない代わりに経験値やZ(お金)の入手も無し。但しスキル経験値はちょっとだけ稼げる、っていう正に練習試合みたいなものらしい。


[【ライト・サーブ!】]


「裏だ」

「では表で」


[結果はぁ――裏! ライラちゃん【レギュレーション】を決定してね!]


「っしゃっ!」

「ふん。ライト・サーブで勝ったからと言って、」

「ばっかやろー、テメーそう言うとこだぞアイセ。何でも気合と根性で上手く行くほど世の中上手く行かねぇっての。戦う前から勝負は始まってンだよ」

「ほぅ。では見せてもらおうか。戦う前から始まる勝負とやらが、いかに有効かをな」

「…………」


 ボク、蚊帳の外、なう。

 朝食食べた後も思ったけど、メッチャイチャイチャしてるやん。

 仲良しか!? ほんと。見た目可愛い女の子やのに、部活動している男子二人にしか見えんわ。

 百合好き男子と言わず801好き女子も喜びそうな関係やね。


「――百合とか801とか。何で詳しいんだろうねボク」


 ぽつりと自虐的に呟くボクであった。

 まあ、ダメねえズのオタ教育の賜物たまものですな。


「へへっ。インファイトでガッチガチにしてやらぁ」


 ライラさんは手慣れた様子で【レギュレーション】の設定を行い――


「――っておいピンク。離れてろ」

「あっ、はい」


 しっしっ、とライラさんに追い払われるような形で急いで二人と距離を取る。


 ユサッ♪ ユサッ♪ ユサッ♪


 ――う。走る度にOPPAIが揺れる!?

 いや今更だけどね!? 一回意識するとなんか――なんかっ! OPPAI大きすぎて重すぎて邪魔でモヤモヤするぅっ!! 料理してる時とかも地味に邪魔だったし!!


[バトルフィールドセットアップ! レギュレーション【カスタム】で行っくよー!]


 と、ボクの目の前で半透明のバトルフィールドが展開される。

 よく見る半円状のフィールドじゃない。リングのような、正方形のフィールドだ。そして一片の長さも――10メートルも多分無いかも? 天井の高さも4メートルくらい。

 今まで見たバトルフィールドの中でもダントツに狭かった。


「……狭いな。フィールドは【スクエア】、広さは【ナロウ】か」

「ついでに言うと場外有りで、タイムリミットは無しだ」

「ふむ。足を封じられたか」

「お? ビビってんのかアイセ?」

「馬鹿を言うな。愉しみだよ」

「へっ。言ってろ。その減らず口、すぐに利けなくしてやるぜ」

「あぁ。出来る物ならな」


 いやだからイチャイチャすんなや!(゜Д゜#)

 むー。興味本位で付いてきちゃったけど、疎外感やばいで!


 ボクが見守る中、アイセさんとライラさんはニュートラルポジションで相対し――


[3……2……1……ファイト!]


 リリウム様がバトル開始の合図を告げた!



 ***


 Topics!


『=================

     レギュレーション

 =================

【ライト・サーブ】っていうコイントス

 で勝った方が決める事が出来る、

 バトルルールの事だよ。

 ・バトルフィールドの形。

 ・バトルフィールドの大きさ。

 ・タイムリミットの有無。

 ・場外判定の有無。

 その他にもハンディキャップルールや

 賭け(アンティ)ルールなど特殊なルールを

 設定する事が出来るよ。

 ちなみにレベルが低い内は簡単な設定

 しか出来ないからね。

 ================』


 伏線を張るだけのお話になってしまった……。

 ……寒い……お正月に仕事辛い……ゲームシタイ……


 ニュースでノロウィルスが出たって話も聞きます。

 皆さんも体調管理には気を付けて!


 次回投稿は1/8(金)AM8:00の予定です。

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