第1話 淫紋! ……えっ、淫紋っ!?
お待たせしました! 第二章始動です!
今回から後書きのオマケコーナーが無くなります。
代わりに本文中に『トピックス』という形で用語等の補足説明をしていく予定です。
『Topics!』と表記されている所ですね。
あくまで補足(蛇足?)的かつ、ゲーム的要素なので、邪魔くさかったら読み飛ばしてもらっても全然OKです。
それは赤毛の戦士の夢だった。
***
小さな村にある一軒家。
その庭先で、赤毛の戦士が鍛練をしていた。
仮想の敵に対し、右手に持つ『ストレートタイプ』の片手剣と、左手に持つ『カーブタイプ』の片手剣の二刀で斬り、突き、【アーツ】を放つ。
素振りだからといって手を抜く様子は無い。一回、二回、三回、四回――最終的に【チェイン】を用い7連続の【アーツ】を披露する。
アーツのエフェクト――青白いオーラのようなもの――を纏い、二刀の剣を振るう姿は、猛々しくもあり優美でもあった。
「おぉ~」とその場にいた三人の少年少女が、感嘆の声を上げる。
赤毛短髪の人間の少年。栗色の髪の、犬亜人の少女。そして、赤い髪を姫カットにした人間の少女。
皆、年端もいかない子供達だ。
「とーちゃん! その剣貸して!」
剣士の技を見て興奮した少年が、瞳を輝かせながら言った。
「ライラぁ……俺言ったよなァ? テメーみたいなみたいなちんちくりんのガキが持てる物じゃねえって。俺様みたいに強くなってからじゃねえと持てねーよバーカ、カベンっ!?」
背後から音も無く忍び寄った女性が、剣士の後頭部をフライパンで強打した!
「ダーリン? 言葉遣いには気を付けてね? 子供達が下品な口の利き方するようになったらどうするの?」
晴れ渡った空のような、蒼い髪の女性だ。まだ若々しい肌と、美しい体型を保った、美麗な大人の女である。身に纏ったエプロンが良く似合っている。
「旦那の後頭部をまな板で強打する嫁の方がよっぽど下品――」
笑顔でフライパンを構え直された。
「いや、なんでもねえよ」
「なんでも『ねえよ』?」
「なんでもありません!」
「よろしい♪ 皆も、言葉遣いには気を付けてね?」
「はーい!」「うん! 分かった!」「はい。おかーさん」
子供たちの返事にうんうんとご機嫌で頷く若奥様。
「はい質問です!」
犬亜人の少女が右手を挙手しながら、元気な声を上げた。
「はい。ココノちゃん」
「お嫁さんが旦那さんの頭をフライパンで叩くのは、いーの?」
っしゃっ、もっと言ってやれ! と赤毛の剣士が大人げなくガッツポーズをしていた。
「全然オーケーよ♪」
「テメェはお隣のガキに何吹き込んでんだあぁっ!!?」
「あらぁ♪ お嫁さんだって旦那さんに負けないくらい強くないとダメ♪ って教えてるのだけど?」
「怒られるわ!」
「もう。細かい男は嫌われるわよ? ライラも、女の子にモテる男になりたいなら、あんまり細かい事を気にしちゃダメよ?」
「はーい♪」
「み、味方が居ねえ!?」
頭を抱える赤毛の旦那さんであったが、天使はちゃんと居た。
とてとて――赤毛の少女が、父の元へと駆け寄る。
そして見上げると、言うのだ。
「ぱぱ。わたしは、ぱぱの事、だーいすきだよ」
「おっ、おおおっ! トリィっ! お前は俺の天使だぁ! よーしよしよし…っ」
「あんっ、もうっ、パパったら。髪、ぐしゃぐしゃになっちゃうっ」
文句を言いながらも、目を細めながら、気持ちよさそうにしている赤毛の少女。
そんな少女のあどけない顔が、印象的で。
昔の事だと言うのに、ライラは今もこうして夢を見るのだ。
***
Topics!
『=================
片手剣
=================
【片手剣】は近接武器の中でも最も
使い易いと言われているカテゴリだよ。
敵の防御をある程度貫通し、
クリティカルヒットが出やすい【刺突】
攻撃と、広範囲を攻撃し命中率が
高い【斬撃】攻撃の両方を扱える
事がポイントだね。
片手が空くから【盾】と一緒に装備
すれば防御も出来るし、【短剣】と
一緒に装備すればより柔軟な戦い方
が出来るようになるよ。何を装備
するかは自分の戦闘スタイルと相談
しよう!大体何でも出来るよ!
けど攻撃力がそこまで高い訳じゃ
ないから、強力なモンスターと戦う
為には【補助魔法】や
【魔法付与】、仲間
との連携が必要になるかもね。
【片手剣】にはサブカテゴリ―として
『ストレートタイプ』『カーブタイプ』
の二つが存在するよ。
『ストレートタイプ』は刀身が真っすぐ
な両刃の剣。【刺突】攻撃の
ダメージが上昇するよ。
『カーブタイプ』は刀身に反りがある
片刃の剣。【斬撃】攻撃の速度が
上昇するよ。
================』
***
安いベッドの上で赤毛の剣士――ライラ=シックステールは目を覚ました。
齢は18。種族は人間。性別は♂(尚、この世界の全ての♂は、生物学的には♀である)。クラスは【中級職】の【ソードマスター】。レベルは現在98。
最近有名になってきた名うての冒険者パーティ『ヴェイグランツ』の古参メンバー。口が悪く、喧嘩っ早いが腕は良い、とは周りの意見だ。
「……はー。クッソなっつかしー」
(何で今さらガキの頃の夢見るんだァ?)
原因に心当たりは――あった。
身を起こし、ベッドから降りると木製の窓を開ける。
いつもは昼近くまで寝ているのだが今日は早く目が覚めてしまったらしい。太陽の位置が幾分が低い。丁度朝食の時間と言った所か。初夏の風に乗って良い匂いが漂って来る。
インナー姿のまま木枠に手を掛け遠くに見える山を見据えた。
その麓辺りを見る。
思いを馳せるように。
「転移石一個分、ってとこか」
そこには、ライラとココノの故郷がある。
(まあ、夢にも見るか)
いや、もう一つ。理由がある。
(ピンクが原因かぁ?)
ハル。レベル1の自称記憶喪失サキュバス。もう胡散臭い。
怪しさ全開の存在だったが何故かリーダーのアイセが気に入り、パーティ入りを果たす。更につい先日、アイセでも倒す事の出来なかったボス吸血鬼を倒し、その功績から『シックステールファミリー』へと入る事になった。
性格は、温厚? 人当たりが良い、と言うよりも上っ面が良い?
言葉遣いは丁寧だが感情的になると喋り方が『カンスィー訛り』になる上、パンチラ不可避のガンアクション(飛んだり跳ねたり)を割と積極的に行う。サキュバスなのにHな魔法を使う事に躊躇いがあり、恥ずかしがる。
等々、どうにもおかしな奴である。
問題は見た目だった。
ライラは目を瞑ると過去の妹の姿と、新しい妹分の姿を思い描き、
「何じゃこりゃああぁぁっっ!!?」
別室から聞こえて来た妹分の声に、胡乱な表情を見せた。
ほんの数分、時は遡る。
***
現世のお父様お母様、それに残念お姉様ズのお二方。
お元気でしょうか。
ボクは片思いの同級生に告白するも見事玉砕し、流星群の流れ弾の直撃を受けて爆発四散し、何故か異世界にサキュバスとしてTS転生を果たし、イッッッッッケメンで可愛いサムライガールに一目惚れをし、見た目激ロリなゴブリンにSUPPONPONにひん剥かれたり、ファーストキスを奪われたり、悪い吸血鬼と激しいバトル繰り広げたりしましたが――ボクは元気です。
それどころかイケメンガールのアイセさんと街一つを救い、アイセさんと同じ【ファミリー】に入れてもらったボクは今、幸せ絶頂♪
これから皆と一緒に冒険するんだ、って思うと、ワクワクが止まらないよ♪ なーんて♪
という訳で、はい! 雑なあらすじ終了!
「う~~~んっ」
安宿のベッドの上で伸びをする。ちっさな蝙蝠羽と矢じり尻尾も準備運動がてらパサパサクネクネ動かして――
「よしっ! 起きよう! ってなんちゅうエッチな服着とんねん!」
黒のローライズ紐パンの上から、前開き型のキャミソールを羽織ったようなデザインの寝巻だった。
羽織り物の生地はスッッッケスケの白レースで、センターにはピンクのリボン。他に身に着けているものは無い。ベビードールと言われるセクシーランジェリーだった。
誰がどう見ても完全にエロ衣装! 何でこんなスケベな服を!?
――あ、そうだ。
この世界じゃちゃんと寝巻を着てから寝る事で睡眠時の回復効果が高まる上に翌日のステータスにボーナスが付くとかなんとからしく、それを試そうと思って買ったんだ。
わざわざこんなエッチなデザインの服を選んだのは――サキュバスであり『ピンク髪は淫乱』の【素質】を持つボクにはこれしか装備できなかったからです(全ギレ
まあ、どうせ寝る時しか着ないし。ちゃんとボーナス効果が効いているのか、確かに寝起きは良い。体も軽い気がするし、調子がいい。
これなら買って損は無かったかな♪
でも恥ずかしいのでさっさと着替えまーす。
「――ん?」
ふと、部屋の中にある姿見が目に入った。
エチエチ衣装のまま、その鏡の前に立つ。
「……はぁ。普通に可愛いし」
鏡に映ったピンク髪の少女が複雑そうに溜息を吐いた。
先が尖がった耳。くりっとした瞳や、ぷにぷにほっぺ。姫カットにした長髪。黙ってれば良家のチビお嬢様って感じだ。
でもやっっったら育ちの良いOPPAIとか、リップも引いて無いのにやたらと瑞々しい唇とか。体から立ち上る、バニラと桃とイチゴを足したような甘い香りとか。それに羽と尻尾とか。
もう、全力でサキュバスである。
「はあ……どうせ転生するなら筋肉バッキバキのマッチョマンが良かったのになぁ……」
異世界ファンタジーやで? 筋力があれば大体何とかなるわい!
尚、この世界のサキュバスのSTRは全種族ワーストらしいです。合唱。
「はあ。筋肉どころか筋肉とは一番無縁で、エッチなサキュバスになるなんて……」
しかし――
「――うん。可愛くて、エッチだ」
着ている服がエッチ過ぎるのもあるけど。
ほあぁぁ。改めて見るとOPPAI、めちゃデカイ。
Fカップくらいあるんじゃないの? 体の大きさに対して胸が大きすぎる。それに重い。500㎖ペットボトル一本分くらい重い!
「ほぁぁ…っ。なんというボリュームっ。なんという柔らかさ!」
柔らかな質感に加え押せば返す僅かな弾力。ツヤと張りのあるOPPAIの、その谷間からは形容しがたい色香が漂っていた。
先日の『シュタット』での戦いじゃ、そんな事気にする余裕も無かったけど。一段落した今、自分の身体がどれだけエッチか、改めて思い知った。
鏡から離れながら、背中を向ける。鏡に映る蝙蝠羽と矢じり尻尾、それにプリップリのOSIRIを背中越しに見る。
うっ。なんちゅうワガママぼでぃ! エッチ過ぎるでぇ!
背中が丸見えの衣装だから、髪を少し掻き上げれば翼の生え際がくっきり見えるし、何ならデカすぎるOPPAIの横乳がコンニチワしている。OSIRIも思ったよりデカいな!?
見た目小中学生くらいなのに体が完全に成熟し切っとる!
元の世界に居た頃は『実は女だろ』とか『生まれてくる性別間違えてる』とか散々言われたけど。これはやりすぎじゃないの?
「う。ドキドキしてきた」
赤ちゃんのほっぺのようにプニプニで、染み一つ、どころかお風呂上がりのようにツヤっツヤの肌。
そしてたわわに育ったOPPAIとOSIRI。
こんなエッチな身体が自分の物だと思うと、変な気分になる。
「いやいや。さっさと着替えよう」
ボクはこの世界に来て間も無いし。知らない事だって沢山ある。
余った時間は有用活用しないとね。
ボクは名残惜しむようにもう一度姿見を正面から見つめ――
「おや?」
それに気づいてしまった。
お臍のすぐ下。下腹部と言われる所。
スベスベプニプニの肌の上に、鮮やかなピンク色の紋様のようなモノが浮き上がっていた。
ハートマークと、その両脇から蔦が伸びるような、そんな模様。
女の子の大事な所に描かれたその紋様は、それだけで何故かとてもエッチに見える。
え? ちょっと待って、これって……アレちゃうんっ?
アニメやゲームに出てくる悪魔っ子やサキュバスにも、こういう紋様が描かれているキャラがちょくちょく居る。
しかも大体、エ ッ チ な ヤ ツ で !!
ま、まさかこれは!?
「う、嘘やろ…っ」
そ、そんな! 確かにボクはサキュバスだし、アレがあってもおかしくはない。でも昨日、お風呂に入った時は無かったよ!? なんで朝になっていきなり出てくるの…!?
「そ、そうだ! ステータス画面!」
ボクは右手の平を上に向けると中指だけを立てながら、何かを撫で上げるように右手の平全体を上へとスナップさせる。
メニューウィンドウを呼び出す動作だ。
『=================
『ステータス』『装備』『アイテム』
『スキル』『アーツ/ 『称号/
アビリティ』 タレント』
『通信』『コンフィグ』『閉じる』
================』
ヒュオン、と音を立てながら半透明のウィンドウが現れた。
メニューは9つ。ボクは少し悩んでから『称号/タレント』のボタンを押す。
更に『称号』『タレント』の二つのボタンが現れ、『タレント』――素質のボタンをタップした。
『=================
◎温和
◎肝っ玉
◎策士
◎貧弱
◎小柄
◎巨乳
◎ピンク髪は淫乱
◎気遣い
◎舌技
◎女子力高め
◎闇の眷属
◎『○○○』の魂 New!!
◎妖花の淫紋 New‼
================』
無言でウィンドウを消した。
「……」
一番下、見覚えのないものが増えていた気がする。
「き、気のせい! 気のせいだって! 寝惚けてるんだきっと!」
再びタレントのウィンドウを開け――【妖花の淫紋】とかいう胡散臭い素質を見付けてしまう。
見間違えようもない。確かにウィンドウに表記されている。
妖花の淫紋と。
ボクはウィンドウの『淫紋』の文字と自身の下腹部に浮かんだ怪しくもエッチぃ紋様の間で何度も視線を行き来させ、そした言った。
「何じゃこりゃああぁぁっっ!!?」
宿の外にまで、その叫び声は響いたに違いない。
***
淫紋。そう淫紋である。
エッチなゲームやマンガなんかで、ステータス異常としてヒロインに付与されて、そのまま「グヘヘ……」な展開になるのがメジャーだろうか。
効果は作品によってマチマチだけど……大抵はエッチな事に対して抵抗が出来なくなったり、何もしていないのにASOKOが疼いてHな気分になっちゃったり、とロクでもないものばかりだ。
え? なんでそんな事知ってるかって?
ウチのダメ姉ズに余計な知識を吹き込まれたからや!!
ま、まさかサキュバスになったからって、淫紋まで刻まれる事になるなんて! ボ、ボクどうなっちゃうの!?
「う。意識するとなんかASOKOがムズムズするような」
アカンアカンアカン…!
「そ、そうだ! 効果、一応確認しとかないと!」
『妖花の淫紋』をタップし、その詳細を確認する。
『=================
妖花の淫紋
=================
説明
淫紋は呪いによって魔法の力を
始めとして自身の力を高める物だよ。
ステータスが永続的に大きく上昇する
けど、MNDとLUCが激減して、
【オーバー・ディザイア】だって
し易くなっちゃう!
これは淫紋の中でも最高位の物。
色んなステータスがマシマシに♪
更に体から強い催淫効果を持つ
フェロモンを常に発生させるよ。
元々フェロモンを持つサキュバス
とかは更にその効果が増大♪
気を抜くとすぐに自分も周りも
【オーバー・ディザイア】しちゃう
から気を付けよう!
ちなみに解呪にはランク9~10の
超級クラスの光魔法が必要だよ♪
================』
「アカーーーーーーンッ!!?」
LUCは兎も角、MNDが下がるのはアカンて! サキュバスは元でもDESが高いのに、ボクはH特化のチートタレントを持っているせいでそこらのサキュバスよりもDESがかなり高い! その上MNDが減少したら、今まで以上に【オーバー・ディザイア】しやすくなる!
それに【フェロモン】の効果が上昇!? 今でも充分ヤバイのに!? ボク、ケモ耳の人達とかレベルの低い人達とかに近づいただけで皆を【オーバー・ディザイア】させちゃうんだよ!? それが更に強くなるって言うの!?
し、しかもこの淫紋を解除する為にはランク9~10の光魔法って……そもそもランク6以上がレア物で、ランク10に関しては伝説に出てくるだけで実際に見た人は居ない、って聞いたよ!?
その上で解除にランク9~10の光魔法が必要と申すか!?
「実質ムリやんけぇっ!」
じゃ何!? ボクこれからずっとこのHな模様をお腹に刻んだまま過ごさないとイケないの!? 自分も周りも【オーバー・ディザイア】させながら!?
「ふ、ふえぇぇ…っ」
涙目にもなるわいっ(´;ω;`)
そんな時だった。
コンコン、とドアをノックする音。
『ハルちゃん? さっきからどーしたの? 大丈夫?』
ココノさんの声だった。
ココノさんはパーティの中でもお姉さん的な立ち位置の犬亜人の女の子。女体化してしまった今のボクにはとても大切な人だ。
「ココノさ~ん…っ」
情けない声を上げながら入口ドアのロックを外し、扉を開ける。
その向こうからちょっと変わった僧侶服に身を包んだ犬耳少女――ココノさんが顔を覗かせた。
「ハルちゃん? 大丈夫――おおうっ」
「?」
ドン引き、程では無いにしろ驚いた様子を浮かべるココノさん。
その視線はボクの顔ではなく体を――
「あっ!?」
うわーん!! エチエチベビードール着たままだったぁっ!
恥ずかしいぃっ!!
「あ、あはは……取り敢えず、部屋入っても良いかな?」
苦笑いするココノさんに、ボクは顔を真っ赤にしながら頷いた。
***
「これは――ちょっとマズいかもね」
「うぅ……ですよね……」
ボクの淫紋と、【妖花の淫紋】の説明文を交互に眺めながらココノさんは神妙な顔をした。
かと思ったらボクのお腹に顔を寄せてっ!?
「えっ!? ココノさん!? 何をっ」
「クンクン。あ、ホントだ。昨日までのハルちゃんと、ちょっと匂いが違う」
あ、匂いを確かめてたのね。
「って【オーバー・ディザイア】しちゃいませんか!?」
そう。【オーバー・ディザイア】――通称【オディ】る。こうなった者は性欲に支配され、エッチな気分になってしまう。ボクはお風呂場で、【オディ】ったココノさんにのぼせるまでOPPAIを揉み倒された事もあるんやで!
「いやいや。私、確かにDESの数値は高いけどこれでもヒーラーだよ? MND高いんだからそう簡単に【オディ】ったりしないって。」
「で、でも初めて会った時はお風呂場で、」
「あの時は裸だったから♪ 今はちゃんと装備付けてるでしょ? それにアクセサリーやアビリティなんかでMNDの数値をあの時よりもマシマシにしてるから♪ ね? これだけ話しても平気でしょ?」
「……確かに」
【オディ】ると瞳にハートマークが浮かび、理性を失うけど。ココノさんが【オディ】っている様子は無い。
「まあ、それはいいとして。うーん解呪にはランク10か9の光魔法かぁ。ランク10は、まあ論外として……ランク9の光魔法の使い手、もしくはそれと同等の力を持った解呪アイテムを探すしか無いね。それも難しいと思うけど」
「見つかると思いますか?」
「……」
気まずそうにココノさんは顔を反らした!
「うわーん!」
「ああゴメンっ、泣かないでっ。えっと…! そうだ! ほらっ、皆で協力すれば何とかなるよ! 私達有名だし! ネットで情報を募れば…!」
「駄目です! それは嫌です!」
「え? 何で!?」
「恥ずかしいんです!!」
だって、自分に淫紋があるって宣言するのと同じやん!
関係無い第三者や、ココノさんみたいな良識のある女の人に知られる分には別にいいけど……男性であるライラさん(体は♀)やネロ君、それにボクと同じ日本から転生してやってきたアイセさんには意地でも知られたくない!!
折角【ファミリー】に入れてもらって、皆ともっと仲良くなろうと思った矢先なんだよ!? それなのに、淫紋があるって皆に知られたら……変な目で見られるに決まってる! そんなのは嫌だ!
「あはは……ハルちゃんって、変わってるよね」
「別に……普通だと思うんですけど」
「あー。サキュバスとしては変わってる、って意味だよ。普通サキュバスって、ステータスアップの為に自分から進んで淫紋を刻むくらいだしね。淫紋が恥ずかしい、って言うサキュバスなんて私は聞いた事無いよ」
「それは……ボク、記憶喪失ですから。他のサキュバスとは違うんだと思います」
「うん。そうかもね。でもハルちゃん。この際だからはっきり言っておくけど……ランク9でも見付けるのは無理に近いと思う。勿論私も見付けるのを手伝うし、言ってくれれば皆だってきっと手伝ってくれると思う。でも最悪の事態だけは覚悟しておいた方がいいよ?」
「う……」
ココノさんの言い分は分かる。それだけランク9は貴重で見つかり難いと言う事だろう。
「というか多分、ハルちゃん真剣に考え過ぎてるだけだよ? サキュバスは淫紋付いているのが普通だし。ステータスアップもするんだから無理に解呪する必要も無いと思うんだけど」
「エッチなのが嫌なんです!!」
「まあ~たまた~。そんなエッチな服を着ておいて~♪」
「こ、これはっ! 寝巻の睡眠効果を確かめる為に仕方なく、」
「はいはい♪ そういう事にしといてあげるよ♪ あー、お腹空いたなぁ~。そうだハルちゃん! ハルちゃんが朝ごはん作ってよ! まだ一度もハルちゃんの作ったご飯、食べた事無いし! 私一度ハルちゃんのご飯、食べてみたいな~♪」
「別に、いいですけど。上手くできるか分からないですよ?」
食材とか調味料とか、調理機材とか。元居た世界と勝手が全然違うだろうし。それに何より、ボクは『記憶喪失』って設定で皆と接しているから。美味しいご飯を作ったらかえっておかしいし。
でも、異世界に来てから料理を全然していないのはマズいかな。腕が鈍っちゃう。
「……よし」
気晴らしも兼ねて、思いっ切り料理してみようかな。
次回投稿ですが……週一投稿は遅い。かと言って週二回投稿はどう考えても無理。
なので間をとって『6日に一回』のペースで投稿してみようかと思います。
慣れてくれば『5日に一回』の投稿、『4日に一回』の投稿、とペースを速めていければと思います。
可 能 な ら ね (´・ω・`)
このせいで決まった曜日に投稿は出来なくなるので、申し訳ありませんがご了承下さい。
次回投稿は12/27(日)AM8:00の予定です。
これからも『じょとボク!』の応援を宜しくお願いします!




