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第1話  異世界! …………異世界?

世界観の説明回になります。ゲーム要素がかなり強いです。


2/20(土):ハルのステータス画面に情報の追加・修正をしました。

3/6(日):更にステータス画面の情報を追加しました。

「女体化しちゃったかー」


 鈴を転がしたような声。

 小川の水面を覗き込みながらボク、元♂の夢宮陽ゆめみやはるは溜息をついた。

 ボクの動作に合わせるように、穏やかな流水に映った女の子が憂鬱そうに溜息を漏らす。


 元は高校二年生。背は低め。やや女顔。

 女三人、男二人という家庭で女衆から修行という名の調きょ、……げふんげふん。

 指導を受けたので空気を読んだり、家事炊事をする事は得意だ。

 文化祭の日に、流れと勢いで一度女装させられてしまった事があり、女子による本気メイク+メイド服+裏声+迫真の演技で接客したところ、男子達によるファンクラブが出来てしまったという黒歴史もあるけど(白目)。


 はふぅ。と溜息を一つ。いつまでも沈んでいてもしょうがない。ちょっと状況を整理をしよう。

 というか新しい自分の体を全然チェック出来てないよね。ボクは再び川面を覗き込む。


「しかし、ガチで女になっちゃうとは……」


 しかもかなり可愛い。

 ぷにっ、っとしたほっぺとか。ぱっちりやや垂れ目の赤い瞳。黙っていればお人形さんのような、あるいは思春期真っ盛りのお嬢様のような愛らしさがある。

 姫カットにした優しい桃色の長い髪には大きくも小さくもない赤いリボンが添えてあり、可愛さに拍車をかけていた。

 しかぁし。ロリ一歩手前の小柄な肉体には分相応な二つの膨らみが自己主張しているのだ。


 オッパイだ。


 でかい!

 重い!

 揺れる!


 視線を下げると普通に谷間が見れます。

 でも自分で自分の谷間を見るのは何だか複雑な気分。嬉しいんだけど。その内見飽きそう。


「うわ。っていうか。この格好、エッチいんだけどっ?」


 着ている服を分かりやすく言うならゴスロリ風ワンピ。ただし、袖無ノースリーブかつV字状に開いたネック部分がとっても深い。オッパイの上半分が露出し、ブラだってチラ見え状態。


 剥き出しのうなじと首を隠すのはフォーリング・バンドと言われている種類のフラットな付け襟。

 正面から見れば白と黒の、羽開いた蝶のような形状なんだけど……衣服のVネックラインに合わせるように割れた襟先の真ん中がAラインを描いていて丁度◇の形に胸元が露出している訳だ。

 しかも付け襟のフロント部分にはタイリボン風の赤いミニチャームが添えられていて、視線を嫌でも胸元へと誘導するようにコーディネートされている。


 ワンピースのスカート部分は辺り前のようにミニ。裾にはレースがあしらえており、ちょっと上品なイメージ。

 あ、袖口もレースだ。視線を二の腕に向けると剥き出しの腕の手首に装飾具がついていた。

 ええっとなんだったっけこれ? 付け袖? バニーガールが手首に巻いているような奴。

 デザインはあんなシンプルなやつじゃないけど。

 これは幅5センチくらいの白い生地の前後に黒いフリル生地。

 さらにそのフリル生地の先端にレースが付いている。フリル生地とレースが手の甲を隠して、指しか見えない。


 ほっそりとした足を包むのは黒ニーソ。靴はシンプルなデザインの真っ赤なパンプスだった。


 白と黒。フリルとレース。

 単語として並べれば上品なイメージなのに剥き出しの二の腕とか丸見えの脇とかまるでオッパイを見せる事に特化したワンピースの意匠とか……可愛らしさと、上品さと淫靡さが同居しているような衣装だった。


 いや、下手に上品ぶっているせいでエロさが返って強調されている気もする。

 スカートも短いしなぁ……


「――――あれ?」


 スカートをマジマジと見ていると視界の端に見慣れない物が見えた。

 矢じり状の先端を持つ、細長い物体だ。それが腰の後ろ辺りから伸びている。


「これ、もしかしなくても尻尾?」


 意識してみると尾てい骨辺りに慣れない繋がり(・・・)を感じた。

 更に意識を集中してみると――


「――こいつ、動くぞっ…!」


 くねりくねりと尻尾を動かす。

 おおっ! おおっ! 面白いっ! 

 一人お尻を突き出すような格好で自分の尻尾をくねくねさせて和む。


 そしてまたしても気付いてしまった。

 長い後髪のせいで見づらかったものが見えてしまった。


「――羽~♪ 羽があるよ~♪」


 肩甲骨辺りから羽が生えていた。『翼』の方の羽じゃない。蝙蝠の羽と同じ形状のものだ。

 大きさは手のひらよりも少し大きい程度。頭と同じくらいかな?


 っていうか蝙蝠羽と矢じり尻尾って。さらにこの際どい衣装。

 

「ボク、ひょっとして悪魔っ娘?」


 マジかー。筋肉とは真逆じゃないかー。いやもう筋肉路線はほぼ確実に無理だけどさぁ。

 ――あでも待てよ。チートがある、って女神様言ってたよね。

 どんなチートなんだろう? 出来れば筋肉を(ry


「うーん――まあいいか。先に移動しよう」

「何処に行くんだイお嬢ちゃン?」

「はい。どこか人の集まるところおぉっ!?」


 背中から掛けられた声に振り向くといつからそこに居たのか。 小学生くらいの女の子がそこにいた。ただ格好が結構、その、奇抜だ。


 まず全身の肌の色が緑。

 そして身にまとっているのは茶色いボロ布を一枚、体に巻きつけるように着用している。

 布が巻かれていない為右肩と右胸が露出し、赤いブラが右半分だけ覗いていた。

 これは確かあれだ。パレオ。じゃなくてサリー、か。ちなみに裸足である。


 え? え~? なにこの子? サバイバルゲーム中? 顔も肌も緑色だよ?

 でも銃器持ってないしなー。


 女の子が持っているのは右手に、その辺りの木の棒に平たく磨いだ石を括り付けた手作り感溢れる(ボロっちい)小さな石斧。

 左手には――これお鍋の蓋じゃないの?

 そして頭には、金属が気持ち程度しか入っていない革張りのとげとげしたデザインのヘルメット。


 ――待って。これ。この格好。RPGに出てくるアレを彷彿させるんだけど。

 再序盤に出てくる雑魚。スライムと肩を並べる最弱モンスターの代名詞。


 でもなー。こんな可愛い子がアレなわけないよねー。

 だってお目目ぱっちり。ほっぺたふっくら。

 茶色い髪の毛は野放しでぱさぱさになってるけど洗ったら綺麗になるんじゃないかなー。

 その緑色のペインティングも全部落としてー。それからー、


「何だヨ。さっきからジロジロ。そんなにゴブリンが珍しいカ?」

「やっぱりゴブリンなの!?」


 嘘だぁっ!


「こんなに可愛いのに…っ」

「か、可愛いだっテ? お、俺がカ?」


 ドキッ、としたように頬を赤らめるゴブリンちゃん(仮称)。

 目を露骨に泳がせる姿がとってもチャーミングですよ。


「まじカ……俺、可愛かったのカ……」

「うんうん可愛い可愛い。撫で撫で♪」


 ヘルメットの上から頭を撫でてやるとゴブリンちゃんは目を細めて喜びます。


 ――――――――――――――――――――――チョロイね。


「ところでボクね? 人が多く集まる場所を探してるの。ゴブリンちゃんはこの近くでそういう所知らない?」

「ん~。あ~。それだったらその小川沿いに、ほげんっ!?」


 ゴブリンちゃんは突如飛来した拳大の石を投げつけられて愉快な声を出した。

 ボクはと言えば風切り音がした時点で退避済みなので怪我はない。


「このボケナス! 何、手懐けられてんだよっ!」


 遠くからやはり女の子の声が聞こえてきた。声のした方に振り向くと――


「うげ」


 木々の影に隠れていたのかぞろぞろとゴブリンが出てくる出てくる!

 10匹以上いる!


「でも皆可愛いんだもんなぁ」


 ぽつりと呟いた声にゴブリンちゃん達が虚を突かれたように唖然とし、そして頬を染める。

 初々しい反応で美味しいです。


「だからお前らもあっさり陥落されてんじゃねぇ!」

「あぎゃっ!?」

「ふごっ!?」

「のるんっ!?」


 リーダーっぽいゴブリンちゃんが端から部下達をしばき倒して正気に戻した。――ちっ。

 心の中で舌打ちしているとリーダーゴブリンちゃんがこちらに歩み寄る。


「よおよお可愛いお嬢ちゃん。こんな森の中でどうしたんだい? 迷子か?」


 リーダーちゃんは茶色い髪をストレートに伸ばし、左目にアイパッチ。右は蒼い瞳の釣り目。

 ボクの胸元程度の身長しかないのは他のゴブリン達と変わらないし、童顔だけど、可愛らしい顔には野党やゴロツキを連想させる獰猛な笑みを浮かべている。


 ちなみに部下のゴブリンちゃん達と比べてしっかりと武装をしていた。

 スカート付きのレザーアーマー。

 左手に金属製のバックラー。

 右手には立派なハンドアクス。

 頭には赤いヘルメット。

 喋り方も流暢だし、格上感が滲み出ているようだった。

 ボクの勘が、こいつとは間違っても闘うな、と告げる。


「まあ、そんなところです」


 どうせ本当の事を話しても信じてもらえないだろう。適当に話を合わせる事にした。


「はっ。嘘をつけ。精々待ち伏せして冒険者を襲おうって魂胆だろ。けどこの辺はアタシらの縄張りだ」


 冒険者を襲う、か。

 やっぱり今のボクは悪魔っ子か、そうでなくてもモンスター側の存在なんだろう。

 なんだかなぁ。男の、マッチョの、正義のヒーローにでもなりたかったんだけどなぁ。


「無断でアタシらの縄張りに侵入したんだ。払えるものは払ってもらおうか」

「え、払えるもの、ですか?」


 といっても、ボク多分一文無しなんですけど。


「あーあー。金はいらねえよ。装備を見れば分かる。というか武器も持ってないみたいだからな。金目の物は期待してないさ」

「え? だったら何を?」

「おいおいとぼけるんじゃねえよ。あるじゃねえか。金は無くとも、立派な体がよぉ♪」


 ギャッギャッギャッギャッギャッ!!

 ゴブリン達がキンキンボイスでゴブリンらしい笑い声を上げる。

 そして彼女達の視線が、ボクの胸元に集注した!


「…っ!」


 ぞわりっ、と悪寒を感じて露出している胸元を両手で交差するようにして隠す。

 鳥肌が立っていた。おっさんに視姦される女子高生の気持ちが分かった気がする。

 ゴブリン達は愛らしい顔で目を細め、だらしなーく鼻の下を伸ばしていた。

 これ、エロ本を物色している時のおっさんの顔や!!


「おいおいそんな立派なパイオツを隠すこたーねえだろうよ」

「そうダそうダ!」

「すけべな服着てるんだかラもっと見せロ!」

「脱ーゲ!」

「脱ーゲ!」

「脱ーゲ!」

「いやちょっと飛躍しすぎでしょ!?」


 っていうかボク男なんだけど!? 

 と、言ってもどうせ信じてもらえないよね。

 こんな立派なオッパイが付いてたら、そりゃ信じられないだろう。


「さあお嬢ちゃん。スケベする気になったか?」

「ならないよ!? 分かるでしょ!?」


 っていうか皆女の子だよね? スケベな事って、どうするんだろう?

 脱がしてから、色んなところまさぐられて……敏感なところも苛められて……アソコに指突っ込まれて。

 ――あ、やば。想像したらちょっとドキドキしてきた。

 いやいや、そんな場合じゃないでしょ。この状況はちょっとやばいよ。

 いくら女神さまがチートを授けてくれたからって、その使い方が分からないのに。

 大量の敵に襲われるのはごめんだ。そもそも自分の能力も全く分からないのにー!


 悪魔っ子なら魔法とか使えないのかな?

 この細腕なら接近戦やるよりも魔法戦の方が向いてると思うんだけど。

 しかし、ボクに悠長に考えている時間は無かった。

 リーダーちゃんはボクにゆっくりと近づく。


「さあ観念して……」


 やばいやばい。どうしようどうしよう? 逃げる? この人数から?

 地の利も多分向こうの方が圧倒的に上だ。逃げ切れる自信はない。

 なら闘うか? いやいや。それは論外。

 そもそも戦闘経験0なのにいきなり多対一とかどんなマゾゲーだっ。


 ボクが悩んでいる間にもリーダーちゃんはその斧が届く範囲まで接近し、斧を持った右手の人差し指をボクに突き付けてこう言った。


「アタシ達とバトルしろ!」



 ***



「――はい?」


 バトル、しろ(・・)

 なんでわざわざ要求してくるの? そっちが有利なんだから勝手に攻撃すればいいのに。

 どうしてこっちの同意を得るような言い回しをするの?


「あん? なんだその――バトルってなーに? とでも言いたげな顔は? 知らないわけはないだろうに。サキュバスだって【吸精】するにはバトルするか、さもなきゃ相手の同意が、」

「ちょ、ちょっと待ってー!」

「何だよ?」

「今、サキュバスって言った?」

「はあ? お前サキュバスだろ? それとも悪魔がサキュバスの格好してるってのか?」

「違います! うわーん! ボク悪魔っ娘ですらなかったー!! よりにもよってサキュバスとか、エロスの権化じゃないですかー! やだー!」

「何言ってんだコイツ……」

「あの姉貴、コイツなんだカ危なくないですカ……?」

「薬でもヤッてるんじゃないですかネ……?」

「かもしれねえが、ひさびさの獲物でしかも上物だぞ? 逃がす手はねえだろうが馬鹿……!」


 こそこそと後ろで会議をしているゴブリン達。そしてしっかりと聞き耳を立てるボク。

 女子達と円滑なコミュニケーションを図る為には噂話や雑談に耳を傾けるのが基本ですよっと。


 は。サキュバスが何さ。どーせ筋肉無いんだし。

 悪魔っ子だろうがサキュバスだろうがもう何でもいいよ!(血涙)


「ちなみに一つ聞いて良いですか?」

「お、おう」

「ボク、悪魔って見た事ないんですけど、サキュバスと見た目は違うんですか?」

「はぁ? 悪魔を見た事無いって、お前ら同じ【闇の眷属】だろ? お嬢ちゃんはどうやら相当箱入りのようだな。まあ、今回はそのオッパイに免じて教えてやろう。尻尾と羽が生えているのはサキュバスも悪魔も変わらないが、悪魔は角も生えてる。それと肌が蒼い。血色の悪そうな奴らだよ」


「いやキミ達も肌緑色……」

 と、言いかけそうになるのをぐっとこらえた。


「ちなみに吸血鬼は?」


 多分いるだろうと思ってついでに尋ねた。


「だから、同じ【闇の眷属】だろうに……まあいい。吸血鬼はぱっと見は人間と変わらない。牙が生えてるのと、任意で羽を生やせるのと、あとは霧になる能力を持ってるくらいか……」


 霧化の能力って、実際戦闘で使われたら手も足も出ないんじゃないのだろうか。


「ふむふむ。ありがとうございます。それではボクはこれで」


 と、振り向いた先にゴブリンちゃん達が一足早く密集して進路を塞ぐ。

 なかなかの連携だった。いや関心してる場合じゃない。


「まさか、逃げられるとは思ってないよな?」

「ですよねー」

「観念してバトルを受けるんだな。アタシとやりたくないっていうならそれでもいい。その辺の部下に相手をさせる」

「え?」


 予想外の言葉だった。

 戦闘になるにしてもよってたかって凹られるのを想像していたので、一対一、それもリーダーちゃんではなくゴブリンちゃんと相手をするなら、きっとこれ以上の好条件はないだろう。


「ふん。納得したみたいだな。それで? お嬢ちゃんはレベルいくつだ? こっちで近いレベルの部下を見繕ってやるよ」


「え!? レベルの概念があるの!?」


「お嬢ちゃん……アンタ、どこか頭でもぶつけてるんじゃないかい? レベルの事を知らないって、普通ありえないんだけど」 

「あ、あはは……」


 異世界からTS転生して来ました、なんて言ってもどうせ信じてもらえないんだろう。お茶を濁すしかなかった。


「まさかとは思うけど、メニューウィンドウの開き方も知らないとか言わないよな?」


「メニューウィンドウ開けるの!?」


 ボクの驚愕の声にリーダーちゃんはげっそりした顔になった。

 面倒臭さ半分、蔑み半分くらいだろうか。

 いやそれにしてもメニューウィンドウを開けるとかゲームみたいだ。

 あれー? ここ異世界じゃなかったっけ?


「はあ。それじゃ自分のステータスだって知らなさそうだね。バトルするどころの話じゃない、か。ほら良く見なよ」


 言ってリーダーちゃんはボクに向けて手のひらを向けるとそれを真上に向けた。

 そしてその状態で、くい、と中指だけを曲げる。

 え、何その指の動き?

 と思うと同時にヒュウン、とSEを響かせながらリーダーちゃんの腰辺りから青い半透明のウィンドウが現れ、彼女の眼前まで上昇する。

 出てきたウィンドウの右下に触れると再びSEを響かせてウィンドウが縦に潰れて消滅する。


「ほら。やってみなよ」

「え、ええと」

 

 手のひらを前に出して、上に向けて――中指だけをくいっと。

 ヒュウン、と音を立てて下から出現する青い半透明のメニューウィンドウ。


「やった! 出た出た!」

「いやそんな大層に喜ぶもんでも無いだろうに」

「ところでこの中指の動きは何なんですかね? 『カモン!』って意味かな? ああ、でも中指だけをくい、っと曲げるのってちょっと変か……う~ん。分からないな」

「姉貴、やっぱこノサキュバス、ちょっと変わってますゼ」

「俺ハこんな純情なサキュバス見た事ないでやんス!」

「確かに初々しいが……それがソソるんじゃねえか。なぁ?」

「なるほド!」「なるほド!」「なるほド!」


 さっきから何の話をしてるんだろうねこの子達は?


「で? ウィンドウの操作の仕方は分かるかい?」

「あ、ええと――」


 ウィンドウは正方形型だった。


『=====================


  ステータス    装備    アイテム


 スキル アーツ&アビリティ 称号&タレント


   通信    コンフィグ   閉じる

                      

 =====================』


 

 と計9個の項目がパネルを敷き詰めるように並んでいる。

 パネルの下部に項目名が記載され、パネルの真ん中にはアイコンらしきイラストが描かれていた。


 例えば『ステータス』のパネルには、紫髪ロングの女の子が笑顔で両手の親指を自分に向けているイラストが描かれている、ってこれデフォルメされて二頭身くらいになってしまった女神【リリウム】様じゃないですかね。


『装備』のパネルのアイコンはいかにもナイトなコスプレをしている【リリウム】様。


『アイテム』のパネルはポーションらしき瓶詰の薬品を、腰に手を当てながらがぶ飲みする【リリウム】様。


『スキル』のアイコンは、麦わら帽子の代わりに頭に鉢巻をまいて剣を素振りをしている【リリウム】様。


『アーツ&アビリティ』のアイコンは『/』で二分割されており左上側に杖の先から炎を飛ばす【リリウム】様、右下には右手に『STR上昇』、左手に『DEX上昇』というパネルを持ちながら悩み顔の【リリウム】様。


『称号&タレント』のアイコンも『/』で二分割されていた。左上側には【世界の管理者】というボードを胸元に掲げ、ドヤ顔をしている【リリウム】様。右下には『乙女』『清純』『皆のアイドル』『庶民派系』『可愛いもの好き』『永遠の17歳』『女神』『最強』『無敵』『美乳』などなど胡散臭い言葉の羅列が掛かれた紙を持ちながらアイドル横ピースをしているリリウム様。


『通信』のパネルには携帯電話(!?)でお喋りをしている【リリウム】様。


『コンフィグ』のパネルにはノートパソコン(!?)でタイピングをしている【リリウム】様。


 最後に『閉じる』のパネルには『バイバイ。まったねー♪』と漫画のような吹き出し付きで手を振る【リリウム】様。


 それぞれ九つのパネルに、二頭身【リリウム】様のイラストがアイコンとして添えられているんだけど。

 中々可愛く、見ているだけで心が和んでくる。


 しっかし。これは完全にVRMMOだね。

 最近のライトノベルでいうと「ソード・スキル・オンライン」とか「境界線上のログ・ホライゾン」とか「オー・ハローっと!」とかだろうか。

 異世界に来た、というよりもログアウトが出来なくなったVRMMOの世界に来てしまったという感覚の方が強い。

 まあ、それはさておき。

 ボクは試しにウィンドウの左上にあるステータスのアイコンを指で触れてみる。

 つ、と確かに指先にガラスのような硬い感触を感じ、ひゅうん、とSEと共にウィンドウの表示内容が変化した。


『==================


 名前:ハル

 種族:サキュバス

 クラス:マジシャン(1/20)

 称号:??????????????

    ??????????????

    ????????

 状態:ふつー

 所属:ぼっち

 ファミリー:だからぼっちだって

 パーティ:ぼっちだって言ってんだろ


 LV:1

 EXP:0/20

 LP:0/10


 AP:20/20

 SP:51/51

 MP:152/152

 HP:0/408


 STR:20(ー5)

 VIT:60(ー9)

 DEX:130

 AGI:80(ー8)

 INT:140(+21)

 MND:130(+13)

 LUK:70

 DES:170(+238)


 所持金:0


 PAGE:『1』/2/3/4  


 ==================』

 


「……嘘だ」


 ステータスを見てボクは呆然とした。

 何かの間違いであって欲しい。


「……あん? やっぱり低レベルだったか?」

「レベルは1です」

「マジかよ。レベル1とか今じゃ絶滅危惧種扱いだぜ?」

「でも、そんな事はどうでもいいんです!」

「どうでもいいのか……」


 問題は、これ。


『STR:20(ー5)』


STRきんにくが15しか無いってどういう事なのおぉっ!?」


 INTちせいは140+21で161もあるんだよ!?

 それに対してSTRきんにくはたった15!!

 10分の1以下!! マッチョマンなんて夢のまた夢すぎる!


「こんなのって無いよ……あんまりだよ……」


 思わずOTLの格好もするさ!!


「しかしレベル1しかないとなると……やっぱこっちとしては、旨みはその体だけになっちまうねぇ」

「ぎゃっぎゃっぎゃっ」

「ぎゃっぎゃっぎゃっ」

「ぎゃっぎゃっぎゃっ」

 

 スケベなゴブリンちゃん達がヒートアップしてます。

 そうだ。凹んでいる場合じゃない。対策を立てないと。

 ステータスをよく見て、


『HP:0/408』


「これボクいきなり死んでないぃっ!? HP0なんだけど!?」

「はっ? HPは普通0だろうに。他の数値はちゃんと最大値になってるだろう?」

「え?」

 

 確認してみると確かにHPは0/408だけど、残りのAP、SP、MPは全てMAXだ。

 っていうかAPって何? SPは――うーん。スタミナポイント、かな?

 でMPはマジックポイントと見た。

 そしてHP、貴様が何故この四項目のポイントの一番下に居る? 君は一番上でしょう。


「っていうかアンタ。サキュバスなのにHP(ハート・ポイント)の事知らないって……箱入り娘を通り越して只の馬鹿だね」

「バーカ!」

「バーカ!」

「バーカ!」

「ゴブリンに馬鹿って言われた! INTちせい161もあるのに!」

「ほう。レベル1にしてはかなり高いね。って事はクラスはマジシャンかい?」


 うぐ、とボクは内心呻き声を上げた。やはりリーダーちゃんは侮れない。

 ステータスを聞いただけでボクのクラスを当てるなんて。

 しかしマジシャンというからには魔法が得意なんだろう。

 ボクは項目『クラス』のところをぼんやりと見つめ――すぐ下の『称号』の項目に意識を吸い寄せられた。


『称号:??????????????????

    ??????????????????』


 いや。いやいやいやいや。何じゃこれ?

 むちゃくちゃ長いんだけど。しかも内容分からないんだけど。不安になるんだけど。

 一体どんな称号を持っているだボク。


 試しにその部分を指でつついてみると例によってヒュウンとSEが鳴って別ウィンドウが現れた。


『==================


『??????????????????

 ??????????????????』


 ==================


 取得条件


 1、タレント【○○○の魂】を所持

 2、ヒ・ミ・ツ♪

 

 ==================


 説明


  ヒ・ミ・ツ♪


 ==================』


 ちょっと何この頭悪そうなページ内容!?

 ボクは思わず頭を抱えた。

 

「さあ。もういいだろう。バトルを始めるよ」

「ちょちょちょっちょっ! ちょっと待って! あと『アーツ&アビリティ』だけ見せて! ええっと、これ前にページにどうやったら戻るんだ…!?」

「ちっ。ウィンドウの右上に小さくボタンが三つ並んでいるだろう? それぞれ『戻る』『拡大縮小』『閉じる』ボタンになってるよ」

「何そのインターネットブラウザ!?」


 段々ファンタジーとは思えなくなってきたぞこの異世界!


 と心の中で文句を言いながらウィンドウを操作する。

『称号』タグの付いたウィンドウを閉じ、『ステータス』のタグのついたウィンドウを操作して初期のメニュー画面に戻る。

 そして真ん中の『アーツ&アビリティ』のパネルをタッチ。

 ウィンドウの画面が切り替わり『アーツ&アビリティ』のアイコンがウィンドウ一杯に拡大される。

 ボクは少し迷ってから杖の先から炎を出している【リリウム】様のアイコンをタップした。

 するとまたウィンドウの画面が切り替わる。タグが『アーツ』になり、レイアウトが変わる。


 画面の上の方に横に細長いウィンドウがあり、その中にボタンがある。

 左から、


『全部』『お気に入り』『装備』『近接』

『射撃』『魔法』『Hアタック』『サポート』


 と、上下二列に並んでいた。


『全部』のボタンにはデフォルメ【リリウム】が、ボタンに腰掛けるように座っていて足をぶらぶらと動かしている。


 これは多分、分類選択のボタンだよね。で、この座っている【リリウム】様がカーソルの代わりなんだろう。

 だから今は分類『全部』が選択されている状態だ。

 っていうか『Hアタック』ってなんじゃい。


 横並びになっている分類選択ボタン群の下には『取得済みアーツ』というリストが記載されていた。


『==================


 ◎マナ・シュート  

 ●ファイア・ブラスト      4P

 ●ストーン・ショット      4P

 ●アクア・アロー        4P

 ●アイス・スプレッド      4P

 ●ウィンド・チャクラム     4P

 ●サンダー・ボルト       4P

 ◎ダーク・キャンドル+1

 ◎ハートブレイク・アロー+2

 ◎アブソーブ・サッカー+1

 ◎デヴァステイト・リッカー+1

 ◎ヘブンリー・フェザー+1

 ◎ファシネイト・アイ+1


 ==================』


「なんか一杯ある!」

 

 レベル1なのに魔法っぽいのが沢山あるよ!? これ、結構イケるんじゃないの!?

 っていうかリスト下半分の魔法の名前に厨二病センサーがビンビン反応してるんだけど。

 しかも『+1』って、これきっと一段階強化されているって事だよね。


 いやイケるって。しかもボクAPとSPは低めだけど、MPとHPはかなり高いもん。

 魔法バンバン撃ってればきっと勝つる!


「よっしゃ!」

「ほう? ヤル気になったみたいだね? それじゃバトルを受けてくれるかい?」

「どうせ逃がしてくれないんでしょ!?」

「勿論そうさ――それじゃ相手だけど――【ブリン】!」

「へイ! 姉御!」


 返事をしたのは一番最初にボクに話しかけてきたゴブリンちゃんだった。

【ブリン】って言うのか。


「ん?」


 ゴブリンだから【ブリン】とか。なんという安直な……!

【ブリン】ちゃんはウィンドウを呼び出すと操作をする。


[デデン!]


 なんて大きなSEが鳴った。


[バトル申請が来たよー♪]


【リリウム】様の声が聞こえたかと思うと、展開中のタグ『アーツ』のウィンドウが大きく右にずれ、正面に『挑戦者あり!』と大きなメッセージウィンドウが開かれる。そしてウィンドウの内容は以下のように変わった。


『==================

 

  名前:ブリン

  種族:ゴブリン

  クラス:ファイター

  称号:最底辺

  状態:ばっちり!

  LV:3

 

 ==================』


 へー。相手の情報が見れるのか。あーでも詳しいステータスは見れないのか。

 名前はまあ、どうでもいいとして。

 戦闘する上で役に立つ情報は種族とクラスと――称号は……うん。なんていうか。

 ボクの???の羅列もアレだけど、ブリンちゃんの称号もたいがい酷いよね。

 状態は、なんだろう。ステータス異常とか表示されるのかな。毒とか麻痺とか。


「しかし、レベル3かぁ」

「おいおい。レベル3でも相当低いよ。こいつより低い奴なんて中々居ないくらいだ。それ以上はワガママだよ」

「う~」

 

 確かに、これ以上の譲歩を期待するのは無理かもしれない。


[バトルする~?]


【リリウム】様のシステム音声が聞こえたかと思うとブリンちゃんのステータスが表示されたウィンドウの手前に、小さく新たなウィンドウが開く。


『==================


    『バトルする~?』



    『返り討ちにしてやんよ』

    『ちょっとお腹が……』

 

 ==================』



『バトルする~?』のメッセージの下に二つのボタンがある。選択肢だ。

 あー。『イエス』『ノー』じゃない辺りが【リリウム】様のセンスなんだろうなぁー。

 正直『ちょっとお腹が……』を選びたいんだけど。そうも言ってられないよね。


 大きく深呼吸をして。


『返り討ちにしてやんよ』をタップ。


[申請受理! これより【ブリン】対【ハル】のバトルを開始しまーす!]


 テーッテレテー♪ とファンファーレが響いた。


[バトルフィールドっ、セーットアーップ! 危ないから観客の皆は離れてね♪]


 ヒュオン、とSEが響いたかと思うとガラスのように透過する壁がボクとブリンちゃんを取り囲むように展開される。

 それは徐々に広がると直径10メートル程の円柱状のへと変化した。

 この中がバトルフィールドとなるのだろう。


「もぶっ!?」


 あ。逃げ遅れたゴブリンちゃんが一匹、フィールドに接触して5メートル程吹っ飛んだ。


 それを見届けてからボクは正面の【ブリン】ちゃんへと向き直る。


「へっへっへ。【ハル】ちゃン、っていうのカ。そのオッパイ、俺ガ頂くゼ!」

「か、返り討ちにしてやんよっ」

 

 お互い啖呵たんかを切り合ってテンションアップ。


 さあ、いざバトル! だ!

読了お疲れ様です。次回やっとバトル回です。

ゲーム性がちと強すぎたかなあ、と心配していたり。

まあ、ゲーム性以外でも矛盾点や誤字等あれば報告頂けるとありがたいです。

もちろん普通の感想も頂けると大変嬉しいので良かったらお願いします。

あと更新ですが毎週土曜日朝8:00~8:30を目安に投稿しようかと。

それではまた次回も宜しくお願いします。

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