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第17話  闇歩きの洞窟! ヴェイグランツの力!

ダンジョン攻略前編! パーティ【ヴェイグランツ】の面々が大奮闘!

やっと冒険ファンタジーっぽくなってきました!


「ここが【闇歩きの洞窟】…」


 シュタットから【転移石】を使ってワープしたその先。

 ヴェイグランツ一行の前に、洞窟の入口が大口を開けて待ち構えていた。


「ココノ。中のモンスターはどんな感じだ?」

「えーっと――ガイドブックによると、ゴブリン、オーク、ウェアバット、アラクニー、強い奴でレッドキャップとオークリーダーってとこかな? ただ独自進化してるみたいで大体のモンスターが闇属性化してるみたい」

「闇属性魔法は効かない」

「って事ぁ、こりゃココノ無双だな」

「ふんすっ」

 

 胸を張りながらドヤ顔するココノさん可愛い。

 ボクやネロちゃんが割と得意な闇魔法が効きにくい代わりに、ヒーラーで光魔法が得意なココノさんが活躍しやすい、って事か。


「兎に角進もう」

「おうよ」


 全員で洞窟に侵入する。

 と同時にAP、SP、MP、HPを表す四本のゲージと、ボクの武器【デリンジ】の装弾数が視界内に出現した。

 あれ? バトルが始まった訳でもないのにゲージが出て来た?


[【闇歩きのぉ洞窟ぅ~】]


 ボクの疑問に答えるかのように、デエェェェン――と威圧的なSEと共にリリウム様がナレーションしてくれた。ちょっとホラー風に。

 いや、かえって可愛いわい。緊張感抜けるわい。


 陣形は、先頭がライラさん。次にココノさん。真ん中がボクですぐ後ろにネロちゃん殿しんがりはアイセさんといった具合だ。

 アイセさんが最後尾っていうのは、何でだろう? ライラさんと一緒に前衛をするのかと思ったんだけど。


「おう。ピンク。一応言っとくけどな。アイセはあてにすんな」


 松明を持って先を歩くライラさんがこちらを見ずに言った。


「え? どういう事です?」

「このパーティのちょっとした決まり事でね。アイセちゃん、普段は戦わないの」

「……え!? どうしてです!? パーティで一番強いんですよね!?」

「だからだよ。大体の敵はアイセ一人で片づけちまう」

「私達の経験値えもの全部持ってかれちゃうんだよね~」

 

 想像の斜め上の理由だった!?


「だからアイセが戦うのはボス戦だけ」

「な、成程~」

「本当に危険だと思ったら助太刀はする。安心しろ」

「助かります」

「こんな田舎のダンジョンなら楽勝だろ。大人しく見物してろ」

「分かった。皆を信じよう」

「それとピンク。ダンジョンの中は、いつもみたいに『よーいドン』でバトルが始まるわけじゃねえ」

「って言うと?」

「分かり易く言うと、ダンジョンの中全域が既にバトルフィールドの中なの」


 ああ。それでゲージが出てきたんだ。でも――


「もうバトルフィールドの中って事は……」

「不意打ちパラダイス」


 ボソッと呟いたネロちゃんの言葉にぞくっとした。

 ボクが今まで経験したバトルは、レベルの差さえあれど全部真っ向勝負だった。でもダンジョンの中はそうじゃない。

 

 いつ、誰が、どこから襲い掛かって来るか分からないんだ!


 ――いや、でもそれ別にふつーちゃうん?


「それといつものバトルとは違ってAPが0になったら即座に【気絶】状態になって暫く戦闘不能になるからね。気を付けて」

「は、はい。分かりました」


 奇襲、不意打ちが可能な上に、AP0で戦闘不能か。

 普通のバトルとルールが全然違う。気を付けないと。



 ***



「あー? 何だこりゃ?」

「うわ。全然見えないねー」


 洞窟を進むと不意にライラさんとココノさんが声を上げた。

 じっとりとした細い通路の先。視界を塞ぐように闇がわだかまっていた。

 まるで黒い霧だ。それはまるで質量を持っているかのように松明の光さえ遮っているのだ。


「ネロちゃん、ハルちゃん、見える?」


 ココノさんに聞かれて目を凝らすと、薄っすらとだが黒い霧の向こう側が見えた。

 これって、【闇の眷属】だからかな。


「――なんとか見えます。黒いクリスタルみたいなものが通路の脇から生えていて、それからこの黒い霧みたいなのが出てるみたいです」

「松明の光も届かねぇな。【闇歩きの洞窟】の所以ゆえんってか? ココノ! 出番だぜ」

「まーかせて♪ 無垢なるきらめきよ! 闇夜の中で優美に踊れ!【フェアリー・ライト】!」


 ココノさんの眼前に白い魔法陣が生まれ魔法が発動。

 小さな灯りが一つ、また一つと生まれていく。一つ一つは蛍のように弱い光だけど、それらは幾つも寄り添い、連なり合って、まるでイルミネーションのような輝きになった。

 そしてそれらの光は黒い霧をものともしないのだ。

 

「おう。ヒーラー様様だな」

「ふんすっ」


 まーたココノさんがドヤ顔してる。

 

「どれどれこの先は――あん? 結構広いな。足下、気ぃ付けろ。段差が多い。すっ転ばねぇようにな」


 ホントだ。通路の先はかなり広い空間が広がっていた。ただ岩場や深い段差があちこちあり、視認性が悪い。例の黒いクリスタルもあちこちに生えていて、そこら中に黒い霧が立ち込めてるし。

 隠れて不意打ちをするには、丁度良い場所だ。

 なんて思ってたら案の定ココノさんが何かに気付いたように鼻をスンスン鳴らした。


「……皆ストップ……」


 ココノさんが小声で制止する。


「……あぁ、こりゃ…居やがるな。しかも結構な数……」

「……うん。ゴブリン臭い……」


 小声でやりとりをする。

 あぁ、やっぱり待ち伏せされてるか。

 不味いな。一応視界は確保出来てるけど、【フェアリー・ライト】の明かりのせいでこっちの位置はもろバレだ。


「……どうするんです……?」

「……こっちから仕掛けるよ。ネロちゃん、ハルちゃん。パンチの強いヤツ使うから目を瞑ってて。あとちょっと熱いと思うけど我慢してね……?」

「……わ、分かりました……」


 あ、ネロちゃんが速攻でアイセさんの後ろに隠れた。


「ここに在りしは、暗き絶望と邪なる影。光の精(ウィスプ)よ。聖なる星を今ここに。夜すら明かすその光で悪しき物達を払い賜え!」


 やや長めの詠唱と共に魔法が発動。【フェアリー・ライト】の時より大きな魔法陣が現れる。

 あ。アイセさんがおいでおいでしてる。

 ボクもアイセさんの傍までよると――コートを広げてボクとネロちゃんを庇うように包み込む!? 

 密着感ヤバァイ! アイセさんもネロちゃんも顔近ぁい!


「【ドーン・スター】!!」


 ココノさんの魔法が炸裂!

 アイセさんのコート越しでも分かる。とんでもない光量の灯りだ!? 

 足元の地面すら光で真っ白に染まってる! あとちょっと熱い!


「ぎゃあああぁぁぁっっ!!!?」

「目がぁ! 目があっ!?」

「アツゥイっ!!」


 え。すごい悲鳴なんやけど。

 光が収まり、そろり、とアイセさんのコートから出ると、辺りのモンスター達は目を抑えながらのたうち回っていた。

 更にに黒いクリスタルにヒビが入り、黒い霧が消滅している!


 ――効果はばつぐんだ!


[21ヒットコンボ♪]


 モンスター達の悲鳴に紛れて女神様のアナウンスも混じる。

 え? いやこれ。最低でも敵は21体居るって事か!?


「まだまだいくよー! 聖なる刻印よ! 潜みし邪悪を白日の下に晒せ!【センシング・スティグマ】!」


 白い魔法陣から、ポウ、と白く輝く球体が生まれ――

 次の瞬間、辺りに無数の光の針を放つ!


「いつっ」

「あいたぁっ」

「ブスリとキタ!」


 光の針は岩などの物陰すら容易に貫通し、辺りのモンスター達に命中すると、視界内で「1」の数字が乱舞した。


[27ヒットコンボ♪]


 そう。ダメージはたった「1」。

 けど光の針を受けたモンスター達の身体――というか輪郭が薄っすらと白く光っているのだ。しかもその光は壁越しでも視認出来る(・・・・・・・・・・)

 

 え。すご! この魔法、超便利やんけ!

 隠れているモンスターの姿も丸見えになっとるやん!


「っしゃあ上出来ぃ!! ついでに魔法付与エンチャも頼むぜぇ!!」

「はいはーい♪ 闇討つ光よ! 正しき力に聖なる祝福を!【ディバイン・ウェポン】!」


 モンスターの群れに突っ込むライラさんにココノさんが補助魔法を放つ。白い魔法陣から飛び出た光はライラさんが手にした大型の曲剣を発光させた!

 あれ、光の魔法付与エンチャントか!?


「薙ぎ払うっ――」


 ライラさんの身体が青白い光を纏う。【アーツ】のエフェクトだ。

 ぐん、とライラさんが加速! 一気に群れへと肉薄した!


「――ぜぇっ!!」


 凶悪な反り(・・)を持つ、巨大な剣が水平に振り抜かれる!

 

「んぎゃっ!?」

「ぴげっ!?」

「あばーっ!?」


[3ヒットコンボ♪]


 ライラさんの振るった刃は、白い光の軌跡を描きながら三匹のゴブリンを纏めて叩き切った!

 ってうわ。ダメージ270とか出とるやん!?


「まだまだいくぜぇ!」


 ライラさんの身体に吸い込まれるように小さな閃光。それは【アーツ】から【アーツ】を繋ぐ技【チェイン】のエフェクトだ。


「おらおらァ!」


 青白いエフェクトを纏いながら豪快な4連回転切り!

 コマのように回転スピンしながら更に敵のど真ん中へと切り込んでいく!

 その様子はさながら剣の嵐か。巻き込まれたモンスター達が次々と切り倒されていく!


「アイタアイタアイタっ、アイタァッ!?」

「あばーあばーあばーっ、あばちっ!?」


[8ヒットコンボ♪]


 なんか。やられる方もちょっと楽しそうじゃなーい?


「大気に溢れるマナよ。我に更なる力を――」


 あ。後ろでネロちゃんが詠唱を始めたよ?

 パーティのメイン火力であるネロちゃんの魔法か。一体どんな、


「これ以上ヤラせるナぁ!!」

「畳みかけろオッ!!」

「「「「「おおおおぉおおぉっ!!」」」」」

「っ!?」 


 まずい! モンスター達が反撃に転じた!


「ちっ! ココノ、ピンク! 俺だけじゃ捌き切れねぇ! ネロのおもりは頼んだぜ!」

「おーまかせっ、てね♪」

「りょ、了解しました!」


 ココノさんが襲い掛かる蜘蛛型モンスター娘をロッドで殴り倒しながら返事をする。ボクもホルスターから【デリンジ】を引き抜いた。


「慈悲深き水の精(ウンディーネ)よ。我に更なる力を――」


 ネロちゃんの詠唱と共に魔法陣が次々と形成されていく。ネロちゃんが詠唱を終えるまで、死守だ!


「な、何だこのヒーラー!? 接近戦でも歯が立たねぇゾ!?」

「メス犬はスルーダ! 後ろのエルフをやレェ!」

「ああもうっ! そっち行かないの!」

「オクンっ!?」 


 ココノさんがオークらしいガタイの大きな緑肌モン娘を一撃で昏倒させるけど――ゴブリンが四匹も抜けて来た!


「邪魔だサキュバス!」

「お嬢ちゃんハ引っ込んでナ!」

「弱そうダ! これなら勝つル!」

「こいつ俺の好みダ♪」


 好き勝手言ってくれるやん!? せやけどな! こっちもゴブリンを返り討ちにする準備くらいは出来てるんやで!


 ボクは宿での作戦会議を思い出す――


『銃の中でも【ハンドガン】のカテゴリは、支援ってよりも迎撃能力の高いアーツが多い。中距離支援向けのアーツもあるにはあるが――弾速も追尾もイマイチだ。何より威力が減衰して遠い程ダメージが下がっちまう』

『銃なのに援護があんまり得意じゃないカテゴリなんですね』 

『あぁ。けど迎撃っていう点じゃピカ一だ。近づくヤツを片っ端から追っ払える』

『だからハルちゃんにはね。ネロちゃんのボディガードをして欲しいの』

『ネロの魔法は強力だが詠唱に時間が掛かる。俺とココノだけじゃ敵を倒しきれねえ時もあるだろ。だからそん時ゃお前がネロのおもりをしろ。わあったか?』

『わ、分かりました!』

『ま、死ぬ気でキリキリ働け。淫乱』

『ネロちゃん? 助けるの止めるよ?』


 ――以上、回想終了!


 ボクの最大LPは現在20。低ランクの魔法・アーツ・アビリティを装備する為に必要なLPは4。つまり最大で5つの魔法・アーツ・アビリティがセット出来る。そしてその内三つはハンドガンのアーツを装備しているのだ。

 分かり易く言うと今のボクは――


「【スマッシュ・ショット】!」


 地面と水平に重ねた二丁の銃口に、光の粒子が集っていく。

 左右の銃はそれぞれ10発までエネルギーをチャージする事が出来、このアーツはその内四発分ものエネルギーを消費して、強力な弾丸を撃ち出すアーツだ。

 追尾は殆どせず、代わりに弾速が速く、弾が大きい。


 つまり、真正面から突っ込んでくる奴には当てやすい!

 ギャウンッ! と甲高い音を立て、デリンジから一抱えほどの光弾が発射される!


「ぽぎゃっ!?」


 22ダメージ! 突っ込んでくるゴブリンを一匹、大きく吹き飛ばした!


 ――そう。今のボクは、マジシャンの皮を被ったガンマンだ!


「ナイスっ、ハルちゃん!」


 ドゴオッ!! 


「ギャピィッ!?」


 そして吹き飛ばしたゴブリンをココノさんロッドで殴打! ホームラン宜しく吹っ飛んでいく!


「生意気ナ!」

「強いじゃン!? やっぱリ負けルじゃン!?」

「強気な所モ、イイ♪」


 あと三体! その内二体は!


「【クロス】っ――」

 

 両腕を交差させ、ゴブリントリオの両端二体に左右の銃口を向ける!


「――【ファイア】!」


 ギャギャギャギャギャギャウンッ!!


「「ペギッ!? ギャムッ!?」」 


 二体に3発ずつ、強力な弾丸を撃ち込む。

 その衝撃に、二体のゴブリンはもんどりうって倒れた!


[6ヒットコンボ♪]


【アーツ】はSP(スタミナ)MP(マナ)を消費して発動させる強力な技だ。ミスティさんとのバトルで垂れ流した弾丸よりも、威力も衝撃も全然違う! 


 けど、その分隙も大きい! 残り一体のゴブリンを目前に、ボクの身体は硬直してしまう!

 これ、アーツの技後の硬直か!? ほんとに体が動かない!


「常闇の洞窟デ♪ オデと熱~い思い出を♪」


 最後のゴブリンがボクに――ル○ンダイブ!? しかも唇をキス型にしながら!?


「お断りです!」


 もう二度とゴブリンに唇はやらん!

 

 シュインっと、ボクの身体に吸い込まれるような閃光。それ何度か見てきた、【チェイン】のエフェクト。

 そう! ボクもチェイン、使えるんやからな!


 硬直が嘘のように解除され次なるアーツを発動。

 青白いオーラのような薄いエフェクトを纏いながら、ゴブリンのダイブを側転ジャンプで鮮やかに回避! 


「オッ…?」


 空中で頭を下に向けながら、しかし正確に間抜け顔へと照準を定める!

 ギャギャギャギャギャギャウンッ!


「アダダダダダ、ダッ!?」


[6ヒットコンボ♪]


【ロンダート】。任意方向へと跳躍しながら二丁の銃で六連射。跳躍モーションには無敵時間も存在する。回避と攻撃を同時に行う、攻防一体のアーツだ!


「よしっ!」


 息を整えながら辺りを見渡す。

 一体も倒す事は出来なかったけど。ネロちゃんを狙っていたゴブリンは全員、転倒ダウンさせた。

 そして起き上がろうとしたところにココノさんがロッドを振るってボコボコにしていく!

 うん! ネロちゃんにゴリラと言われてもしょうがないね!


「――破壊の激流を今ここに。大地を削る蒼き力で我が敵を押し流せ」


 そしてそのネロちゃんと言えばようやく魔法の詠唱が終わりそう?

 青色に発光するそれは、最初は小さな魔法陣だったのに、今やココノさんの放った【ドーン・スター】の魔法陣の二倍近いサイズになっている。

 これ、かなり強力な魔法だ!

 

「極北の地、白き大地に願う――」

「えっ!? まだ詠唱あるの!?」

  

 あ、違う。

 良く見ると完成したらしい青い魔法陣のすぐ横に、新しく水色の魔法陣が形成されていく!

 これ、一つ目の魔法を維持したまま、二つ目の魔法の詠唱をしてる!?


「まだダ!」

「たたみ掛けロ!」

「ゴブリン魂! ファイッ!」


 まずいっ、ぱっと見このエリアには敵がまだ10体以上居るよ!?

 しかもその内三体がこっちに向かって来る! さっきのアーツ連打でデリンジの装弾数は0になったし、早くリチャージしないと!


「させないよ! ここに在りしは、暗き絶望と邪なる影――」


 ココノさんが再び詠唱を開始。これ、さっき使った【ドーン・スター】って魔法? でも、詠唱が長い! 敵はもう目の前ですよ!?


「遅イ!」

「隙ありィッ!」

「ワンって鳴いてみロ!」


 ダメだ! 銃のリチャージも間に合わない!

  

「なぁ~んてね♪」


 ゴブリンの振り下ろしたハンドアックスがココノさんに直撃する寸前、ココノさんの身体が【チェイン】の閃光エフェクトを発した。

 直後に詠唱の隙を解除してロッドを眼前で旋回させる!


 カキィーンッ!!


 まるでホームランでも打ったかのような爽快な打球の音。

 同時に、繰り出された攻撃をあっさりとはじき返した!


「げェッ!?」

「隙ありはそっち!」


 態勢を崩し、『おっとっと』となっているゴブリンに、ココノさんは回転しながらの連撃を放つ!


 ドコバキッ、メキャッ!


[クリティカルヒット♪]

 [クリティカルヒット♪]

    [クリティカルヒット♪]


[3ヒットコンボ♪]


 トータルで320ダメージも出てる!? 何だあのアーツ!?


「ほらほらっ! さっきまでの威勢はぁどーしたのかなぁっ!」

「ぎャーッ!?」

「ヒーラーじゃなかったのカ!? この犬ゴリラ、プゲッ!?」


 更にチェインして他のゴブリンも叩きのめしてるし……

 これ、もうボクの出番無いんとちゃうんかな。

  

「――凍てつく北風で全てを白く染め上げよ!」


 そしてとうとうネロちゃんの二つ目の魔法が完成した!

 青と水色、二つの魔法陣が淡く明滅する!


「ハルちゃん下がって! 巻き込まれるよ!」

「は、はい!」


 ココノさんに指摘されると慌てて二人でネロちゃんの後ろに下がる。

 あれー? ところで最前線で無双してるライラさんはぁ?


「やっちゃえ水の精(ウンディーネ)。【ブルー・フラッド】!」


 ネロちゃんが魔法を発動させた瞬間。

 青い魔法陣から大量の水が噴出した!


 ボクやアイセさんのように、島国に住む者なら誰でも知っている。 

 大量の水は、それだけで災害と呼ばれるほど恐ろしい破壊を生み出す事を!


 魔法により生み出された水は言わば鉄砲水。地面を抉る程勢いで、モンスター達に襲い掛かる!

 水流は洞窟内に地響きと轟音を撒き散らし、モンスター達を飲み込んだ!


「ちょっ、っ!?」 


 と聞こえたのは果たしてモンスターの声か、或いは――

 あれ? ひょっとしてライラさんの声じゃなかった?

 ともあれ水流に巻き込まれたモンスター達からビビシビビビシビシ! と魔法が多段ヒットするえげつないヒットSEが響いてくる。 


「続いてやっちゃえ氷の精(フロスティ)。【ブリザード】!」


 激流に飲まれ、地に伏しているモンスター達に今度は凍てつく冷風が襲う!

 ビビシビシビシビビビシビシビシ!


っっっ――」 


 と言ったゴブリンはそのまま凍り付いてしまった。 

 うん。そりゃ、ずぶ濡れの状態で氷の魔法なんか食らったらひとたまりもないよね。


[72ヒットコンボ♪] 


 なんちゅうヒット数。ネロちゃんの魔法、えげつないよ!?


 それは兎も角。

 もう、動いている敵、居なくない?

 ココノさんの【センシング・スティグマ】で一帯の全てのモンスターは補足済みだ。そしてそれらは全て、ネロちゃんのマジックコンボで片っ端から氷漬けになっていた。


「勝利」


 感情の読めない気怠そうな表情で、それでもビシッとVサインを決めるネロちゃん

 魔法一発で――いや二発か。それでも10体近い敵をまとめて倒したのは本当に凄い。ヴェイグランツのメイン火力と言われても不思議じゃない。


「ココノさんもネロちゃんも凄い! カッコいいです!」

「ふんすっ♪」

「もっと褒めるべし」


 二人して胸を反らすの可愛いか。


「そう言えばさっきゴブリンの攻撃を弾いてエゲつないカウンターを決めてましたよね? あれ、どういうアーツなんですか?」

「【サーキュレーター】って言ってね。【ロッド】のアーツなの。【パリィ】アーツってヤツだね」

「パリィ、ですか」

「そ。敵の攻撃を弾いてカウンターを食らわせるの♪ 攻撃を弾かれた相手は態勢を崩して無防備になって、その間は攻撃が全部クリティカルヒットになるんだ♪」


 全部クリティカル!? それであんなエゲつないダメージが出たのか。


「メチャクチャ強いアーツじゃないですか!? いいなぁそんなの使えて」

「確かハンドガンにもパリィアーツあるよ?」

「そうなんですか!?」

「確かランク2のアーツだったかな。今のハルちゃんはハンドガンのスキルが1だから、覚えても使えないけど」

「ガーン! 折角強力な技を使えると思ったのに!」

「いやいや。甘いよハルちゃん。パリィは決まれば強いけど、タイミングはシビアだし、パリィ成功しないとチェインも出来ないから失敗するとこっちが隙だらけになっちゃうの。ハイリスクハイリターンのとってもテクニカルな技なんだよ?」


 あ。ちゃんとデメリットがあるんだ。むぅ。失敗は許されない。使うからには必中を狙わないといけない、って事か。そんなリスキーな技、よく使えるなぁ。

 そしてそんな技を平気で使ってるあたり、ココノさんは、パリィの狙い目(・・・)っていうのを知っているのだろう。


「成程……ちなみにパリィを上手く決めるのにコツとかってあるんですか」

「んー。相手の行動の癖を読むのが一番だけど、難しいし。そうだなぁ――手っ取り早いのは自分から隙を作る事(・・・・・・・・・)かな?」

「隙を作る?」

「そ。ハルちゃんだって、敵が魔法を唱えてたり、ポーションを飲んでたりしたら「隙あり!」って思って攻撃するでしょ? そこを狙うの。さっきのゴブリンみたいにね」

 

 いや、言うのは簡単やけど。


「そんなに上手く行きますかね?」

「案外イケるよ♪ チャンスを逃さない為、皆一直線に突っ込んで来るからね♪ 攻撃だってすっごい単調になってちょー読み易くなるもん♪」


 ココノさん? 実は、結構策士じゃありません?

 なんか、このパーティで一番怖いのココノさんの気がしてきたよ?


「だからハルちゃんはゴリラって言わないでね♪」

「言いませんよ!?」


 しかもゴリラって言われた事気にしてるし!?


「おいピンク。オイラは?」


 ちょっぴり不機嫌そうにネロちゃんがにじり寄る。

 あー、これは――多分褒めて欲しいのかな?

 ココノさんと話してたから拗ねちゃったんだきっと。

 ふふ♪ ネロちゃん子供だなぁ♪ 可愛いなぁ♪


「うん♪ ネロちゃんの魔法凄かったよ♪ 二連続で魔法撃ってたよね♪」

「【保管詠唱フィックス・キャスト】。詠唱を終えた魔法を維持したまま、次の魔法詠唱を行う【ウィザード】の固有アビリティ。時間は掛かるけど強力な魔法を連続で撃てる」


 ドヤァと胸を張るネロちゃん


「凄い! 魔法使いっぽい!」

「それだけじゃない。一発目の【ブルー・フラッド】には【溜魔ブースト】と【水霊溜魔アクア・ブースト】のアビリティで二重で追加詠唱。威力と範囲を底上げしてる」

「詠唱メッチャ長かったの追加で詠唱してたからなの!?」

「お陰で殲滅」


 確かに、ネロちゃんの魔法だけでかなりの数のモンスターを倒したよ。

 いやでも、活躍ぶりだったら最前線で敵をひたすら切り伏せてたライラさんも相当――いや、負担だけなら多分一番キツイ役回りだったんじゃないかな。


 ん? そう言えば。


「ところでライラさんはどこです?」

「――あれ」


 とネロちゃんが指差した先。

 モンスター達とまとめて氷漬けになっているライラさんの姿があったとさ。


 あ。これ、後で猛烈にキレるやーつ。


ハルがHな技を使わずに戦うのおかしい。おかしくない?

ともあれ後半戦に続きます! 次はアイセの本気モードが炸裂!

次回投稿は9/28(月)AM8:00の予定です。


以下オマケコーナー【プリーズテルミー! リリウム様!】

今回のお題は~?『ライラの使ってたアーツってどんなの?』


『=================

      ディバイダー

================= 

 ランク:3   属性:斬撃

 消費:40SP10MP 種別:突進>ブロウ

 対象:1体~  威力:イイね!

 発生:ふつー  追尾:ビミョー

 射程:なかなか

 =================

 説明

 

 両手剣の突進系アーツだね。

 相手の懐に飛び込みつつ強烈な

 横薙ぎお見舞いするよ!

 突進+両手剣のリーチがあるから

 複数の敵を纏めてザックリ!

 雑魚を蹴散らすのに必須!

 でも両手武器系のアーツはスタミナの

 消費が大きいから注意してね!

 =================』


『=================

      テンペスト     

================= 

 ランク:2   属性:斬撃

 消費:55SP15MP 種別:突進>ブロウ

 対象:1体~  威力:エグい

 発生:まあまあ 追尾:まあまあ

 射程:なかなか

 =================

 説明


 両手剣突進系のアーツだよ。

 踏み込みから高速の連続回転切り!

 広範囲の敵を叩き切るよ!

 ラストの一撃は吹き飛ばし属性。

 強化する事で回転切りの回数が

 増加するよ!

 全段ヒット時のダメージは高く、

 範囲も広いけどモーションは長いし

 スタミナ消費もかなり大きい!

 使う時は遠距離からの攻撃や

 カウンターに気を付けて!

 ================』

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