第15話 冒険者ギルド!
予定より大分遅れてしまった。
本当に申し訳ない(´・ω・`)
祝勝会も程々に、ボクとアイセさんは冒険者ギルドに向かった。
「ここが冒険者ギルド…」
大きさは銀行くらいかな? 2~30人程収容出来そう。
中には待合用のテーブルとイス。それに壁際の掲示板にはクエストの依頼書がずらりと張り付けられている。軽い食事や酒もあるらしく、酔っぱらいの冒険者姉ちゃん(多分♂)が他の冒険者に大きな声で自慢話を披露していた。
受付嬢は一人。ベレー帽を被った茶髪ショートのおねーさん。
上はネクタイを締めたYシャツ+袖無し上衣。下はタイトスカートに黒ストというビジネススタイルな衣装だった。
変装用衣装を着たアイセさんとボクは、暇そうにしている受付嬢元へと直行し――あ。ボク達の存在に気付いた受付嬢がギョッとした顔になった。
あーうん。ドクロ仮面黒ローブなアイセさんとサキュバスだもんね。
なんだったらそこの冒険者さん達に剣を向けられてもおかしくないような組み合わせだし、受付嬢さん達の反応も当然だ。
「え、ええと…どのようなご用件でしょうか?」
『あぁ。この子の冒険者登録をお願いしたい』
「ハルです。宜しくお願いします」
余所行きの笑顔をにっこり。人間第一印象が肝心である。
まあ、めっちゃ怪訝な視線を向けられるんですけどね!
それでも仕事に真面目な受付嬢さんはきちんと対応してくれた。
「かしこまりました。それでは恐れ入りますが、身元確認を致しますのでステータス画面をお見せ頂けますか?」
「はい」
と返事をしてステータス画面を開け――思わず顔が引き攣った。
だってステータス画面に称号の表記有るんだよ!?【ハイパースーパーウルトラミラクルエキセントリックアメイジングどすけべ】なんだよ!? これ見せなきゃいけないの!? バトル以外でも公開羞恥プレイとか嫌だよ!?
『ハル? どうした?』
「あ、ええと…その…」
「――お客様? お見せ頂けなければ登録は出来かねますよ?」
めっっっっっちゃ怪しまれてる!? でも見せたくないの!
けど――このままじゃ、ギルドの人にもアイセさんにも迷惑掛けちゃうし。酒を飲んでた冒険者のねーちゃん(♂)までこっち見てるし。
ああもうっ。どうなっても知るかい!
覚悟を決めて呼び出したステータス画面を受付嬢へと向ける。受付嬢は覗き込むようにステータス画面を見て――ポンと手を打った。
「あぁ! あのミスティさんを倒したハルさんですか!」
「え? 何で知ってるんですか!?」
「ネットで噂になっていますよ? マイチューブやニッコリ動画、スィッターやエンスタグラムでも動画が上がっていますし」
「どっからツッコめばええねん!? ファンタジー要素どこまで薄くすんねん!? っていうかボクの黒歴史確定のあの詠唱シーンがすでにネットの海に放出されてるとかもう嫌だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
マジもんの記憶喪失になりたいわ!!
思わず叫ぶがアイセさんも受付嬢さんも『?』と言った顔だ。
誰か、ボクのこの苦悩を分かって。
そんなボクの悩みなんてつゆ知らず、受付嬢はボクの恥ずかしいステータス画面をじっくりと眺め――愕然とした表情を浮かべた。
「――えっ、嘘!? パーティ【ヴェイグランツ】!? じゃあ貴方は!?」
受付嬢さんがドクロ仮面の正体に気付いたらしい。
そう言えばアイセさんならギルドにも顔が効くって話だった。
「アイセさん。仮面、取った方が良いんじゃないですか?」
『ふむ? ハルがそう言うなら』
当のアイセさんが趣味の悪い仮面に手を伸ばし――外す。
その下から現れたのはまごう事無き、冒険者アイセの素顔だ。
受付嬢は口を『あ』の形にしてから――
「キャー!! 本物! 本物っ!」
(≧∇≦)な顔をして突如黄色い声を上げる受付嬢。
「あ!? ぎょ、業務中なのに申し訳ありません! ですが!!
どうかサインを下さいぃーっ!」
いやまあ、こうなるって何となく分かってたけどさ。
「――手の平くるっくるやん…」
ボクは改めてアイセさんの人気を思い知ったのであった。
***
「し、失礼いたしました…っ」
アイセさんからマジでサインを貰い、やっと受付嬢さんは落ち着いたらしい。
こほんと、取り繕うように咳払いを一つ。
「いえまあ、見た目怪しいのはこちらも重々承知していますから」
「む。怪しかったのか?」
「出た! 噂のリアル天然! 顔良し腕良し性格良しの完璧超人かと思われたアイセ様にまさかの天然属性…! カッコいいだけでなく可愛さも兼ね備えているなんて…正に悪魔的魅力!」
「悪魔的? ハル? これは…褒められているのか?」
「褒められてると思いますよ。でもその天然治した方が良いです」
「分かった。努力しよう」
キリッ(`・ω・´)って顔で言うだもん。そういうところやぞ。
全くもう、アイセさん絶対詐欺とか引っ掛かるタイプやろ。
カッコいい癖に抜けてるんだから。
「あの、ところで登録の方は?」
「あっ――ああぁっ、失礼しました!」
受付嬢が慌てた様子で自分のウィンドウを開き――
なんか手元でカタカタやってる?
失礼かなと思いつつも受付から身を乗り出して手元を覗いてみると――
キーボード状のウィンドウだと!? しかもボタンをタッチした時の効果音まで本物を忠実に再現している!? またファンタジー要素が薄くなるやんけ!
「登録完了です」
[ステータス画面が更新されたよ~]
お報せSEと共にリリウム様の声。
ステータス画面を確認してみると――
『=================
名前:ハル
性別:♀
年齢:16
種族:サキュバス
クラス:マジシャン(1/20)
称号:ハイパースーパーウルトラミラ
クルエキセントリックアメイジ
ングどすけべ
状態:ふつ~
所属:冒険者ギルド(青銅級)
ファミリー:ぼっち
パーティ:ヴェイグランツ
LV:1
EXP:2/20
LP:0/20
AP:35/35
SP:51/51
MP:166/166
HP:0/408
STR:20(ー5)
VIT:60(ー9)
DEX:130(+15)
AGI:80(ー8)
INT:140(+36)
MND:130(+26)
LUK:70
DES:170(+221)
所持金:114,514Z
PAGE:『1』/2/3/4
=================』
――あ、『所属』の欄が【冒険者ギルド】になってる。
それとすぐ横のは、【青銅級】? 冒険者のランクとかかな?
「【冒険者ランク】の説明を致しましょうか?」
「あ、はいお願いします」
「【冒険者ランク】は【青銅級】から始まり、レベル、クエスト達成率、報酬で獲得したZの累計などによって【白銀級】、【黄金級】、【白金級】、【金剛級】と上昇していきます。まあ冒険者としての強さ、優秀さを目安にしたものですね。ランクが上げればそれに応じて、高難度、高報酬のクエストが受注出来るようになります。他にも冒険者ギルドと提携を結んでいるアイテムショップ、宿などでランクに応じたサービスが受けられるようになります。割引や、レアアイテムの販売などですね」
「成程」
ええやん。お得やん。
「ちなみにアイセさんのランクって…?」
「あぁ、【白銀級】だ」
「とんでもない! 確かに熟練の方々に比べればアイセ様はまだ若手なので、稼ぎは足りていませんが――実力的には【黄金級】の方々と変わりありませんよ! 何より! クエスト以外の見えない所でされている【インターセプト】からの人助け! まさに現代に現れた正義の味方! 憧れのヒーロー!」
「さ、流石にそれは盛り過ぎではないだろうか?」
「何言ってるんです。ボクもその人助けされた一人ですよ?」
真っ赤になって照れてるアイセさん、イイなぁ♪
「はぁ…♪ 照れ顔のアイセ様尊い♪」
「ね。可愛いですよね♪」
「ですよね♪」
「か、勘弁してくれないか…」
受付のおねーさんと一緒にアイセさんを弄る。
うーん。至福のひと時♪
「そう言えば、ハルさん。ミスティさんとのバトルで勝利したというにはレベルが1のままなのですね」
「あー。その恥ずかしい称号の効果で獲得経験値が四千分の一になるんです」
「よ、四千分の一!? それはまた、ご愁傷様です…」
裸にひん剥かれて。痛い目にも合って。ミスティさんと観客から数々の罵倒を貰って。男のプライドを捨てて。そうしてやっと手に入れた経験値、たったの『2』である。
「うーん。惜しいですねぇ。その称号効果が無ければ、きっとクラスチェンジ出来る程にはレベルも上がっていたでしょうに」
「…クラスチェンジ」
ああ。なんて魅力的な響きなんだろう!
古今東西、クラスチェンジと言えばRPGやネトゲの華だ。
そのチャンスをクソ称号のせいで逃すとはっ、うぎぎ…!
――あ、そう言えば、
「ボク、クラスの事全然知らないや」
自分のクラスがマジシャンなのと、あとヴェイグランツの皆が何のクラスなのかは知っているけど――それがどんな職業なのか。どうやってなれるのか。全然知らない。
「む。そう言えば、話してなかったか」
「あぁ。では私が説明致します」
こほん、と受付嬢さんが咳払いを一つ。
「冒険者のクラスは最も種類が多く多岐に渡ります。最初のクラス――所謂、【初期職】は【前衛職】タイプの【ファイター】、【中衛職】タイプの【レンジャー】、【後衛職】タイプの【マジシャン】の三つしかありませんが、クラスチェンジによりツリー状へと進化・派生していきます。こちらをご覧下さい」
受付嬢さんが手元のウィンドウを操作すると、ボクとアイセさんに向けて大き目のウィンドウが展開された。
『=================
☆タイプ①初期職
☆前衛職>ファイター
☆中衛職>レンジャー
☆後衛職>マジシャン
=================』
「試しに【ファイター】をタッチして頂けますか?」
「は、はい」
『=================
①初期職 ②初級職
>ファイター>ウォリアー
>フェンサー
>ナイト
>メイジファイター
>レンジャー
>マジシャン
=================』
「あ!? 四種類も増えた!?」
「【ウォリアー】は攻撃特化のクラス。【フェンサー】は速さと技に特化したクラス。【ナイト】は防御力に特化したクラス。そして【メイジファイター】は魔法も接近戦もこなすクラスですね。では次は【フェンサー】をタッチして下さい」
「はいっ」
『=================
②初級職 ③中級職
>ウォリアー
>フェンサー >ソードマスター
>ソードダンサー
>ナイト
>メイジファイター
=================』
今度は二種類増えた!
「【ソードマスター】は豊富なアーツとチェインを利用し、連続攻撃に特化したクラス。対して【ソードダンサー】はスピードと回避能力で敵を翻弄するクラスです」
「あ! 確か【ソードマスター】はライラさんのクラスで、【ソードダンサー】はミスティさんのクラスだ!」
「ミスティさん、速かったでしょう?」
「攻撃全然当たりませんでしたよ…」
まともに戦ったら何にも当てられない自身がある!
「では最後に【ソードダンサー】をタッチして頂けますか?」
「はい!」
『=================
③中級職 ④上級職
>ソードダンサー>ソードクイーン
=================』
――【ソードクイーン】って確か…
「あっ!? アイセさんのクラスだ!」
「正解です♪【ソードクイーン】は【ソードダンサー】を純粋進化させた、超スピード特化型のクラスですね」
ミスティさんよりも速いって事!? あれより!?
「と、このようにクラスはクラスチェンジでツリー状に進化していきます」
「はー。分かりました。ちなみにクラスって何段階進化するんです?」
「【初期職】から始まり、【初級職】、【中級職】、【上級職】、最後に【一級職】ですね」
「え? アイセさんのクラスの上にもう一個クラスがあるって事ですか!?」
どんな化け物やねん……
「はい。冒険者ランク最高の【金剛級】の方々は殆ど【一級職】ですね」
はー。クソ雑魚ナメクジなボクには一生縁が無さそうだなぁ。
――ん? そう言えば……
「ところで、結局クラスチェンジってどうやるんです?」
「はい。ではもう一度ステータス画面を開いて頂けますか?」
「わ、分かりました」
『=================
名前:ハル
性別:♀
年齢:16
種族:サキュバス
クラス:マジシャン(1/20)
称号:ハイパースーパーウルトラミラ
クルエキセントリックアメイジ
ングどすけべ
状態:ふつ~
所属:冒険者ギルド(青銅級)
ファミリー:ぼっち
パーティ:ヴェイグランツ
LV:1
EXP:2/20
LP:0/20
AP:35/35
SP:51/51
MP:166/166
HP:0/408
STR:20(ー5)
VIT:60(ー9)
DEX:130(+15)
AGI:80(ー8)
INT:140(+36)
MND:130(+26)
LUK:70
DES:170(+221)
所持金:114,514Z
PAGE:『1』/2/3/4
=================』
「クラス【マジシャン】の右隣に『1/20』と表記されていませんか?」
「あ、はい。そうですね」
「それは【クラスレベル】と呼ばれるもので、数値の左側は現在のクラスレベル。右側がクラスレベルの最大値となっております」
「今クラスレベル1で、最大が20って事ですね」
「はい。そして現在のクラスレベルが最大値に達した時点でクラスチェンジが可能となります」
「成程。ちなみにクラスレベルってどうやって上げるんですか?」
「クラスレベルは現在のレベルと同期します」
「という事は、ボクのレベルが2に上がったら、クラスレベルも2になるって事ですか?」
「そういう事です」
「…………」
「…………」
ア カ ン や ん け 。
「ボク、称号のせいでレベル上がらないんですけどぉ!?」
一生クラスチェンジ出来へんやんけぇっ!!
「ご、ご愁傷様です…」
視線逸らされたぁ!?
「ま、まあクラスチェンジしなくとも、スキルを上昇させれば強力な装備やアーツを扱えるようになりますから」
むう。それは、一理あるか? 現に色装のスキルが高いお陰で、結構お高そうな腕防具を装備出来てるわけだし。
「何を言うのだ。そもそも、そのスキルを上昇させる為には、クラスチェンジが一番手っとりばやい筈だろう?」
「……っ」
受付嬢さんがぎょっとした顔をする。
今それ言う!? って受付嬢さんの心の声が聞こえた気がした。
うん。分かった。アイセさん結構やらかすタイプやね。
悪意は無いけど、無意識のうちにいらん事を言う人やわ。
「大丈夫です。ボク分かってます。分かってますから」
「うぅ…すみません」
「む? 何だ。何の話だ?」
アイセさん? ボク、ちょっと貴方が心配になってきましたよ?
この人の天然っぷり、空気読めなさっぷりは、要注意やな……
「ま、まあクラスの話は大体分かりました。本題に入りましょう」
「本題、ですか? 一体どのようなお話でしょうか?」
頭に疑問符を浮かべている受付嬢さんに、アイセさんが【吸血鬼ヴェタル】の事を話す。
今日お昼前くらいに、直接それらしき人物に会った事。
対策として対アンデッド用のアイテムを確保して欲しい事。
情報と共にそれらアイテムを付近の冒険者達と共有して欲しい事。
アイセさんが話し終えた時、受付嬢さんの顔はすっかり強張っていた。
「――少し遅かったかもしれません」
「え?」
「どういう事だ?」
「実は……ここ最近、このシュタットに立ち入る予定だった行商人が、立て続けに行方不明になるという事件が頻発しているのです」
え。それって輸送ルートを潰されているって事じゃないの!?
それじゃ物資が足らなくなるんじゃ!?
「じゃあ、アイテムとか品薄状態なんですか!?」
「ポーションや低ランク装備はまだ在庫があるようですが……
ランク4以上の装備や、アンデッドに特攻を持った銀製の武器、
それに【聖水】や、【転移石】などの利便性の高いアイテム、
それらは品切れ状態が続いているようです」
「……成程、既に先手を打たれていると言う事か」
「その可能性は高いかと」
ヴェタル。やっぱり厄介な敵だ。
ヴェイグランツの皆を始め、強い冒険者は他にもいるだろうけど……こいつはきっとボクと同じ頭脳派だ。きっと街の冒険者じゃ抵抗できないような、絡め手で攻めて来るぞ。
輸送ルートは既に潰されてる。
次は、どんな手を打ってくる?
「――不味いな。吸血鬼は手強い。対策も無ければ苦戦は必須だ」
「一応、我々の方で冒険者の方々に、手持ちの対アンデッド用のアイテムを分けて頂けないか呼びかけてみます。いざという時の為に貯め込んでいる方が居るかもしれません」
「頼む」
「こちらこそ。情報提供ありがとうございました。
アイセ様、ヴェイグランツの皆様方もどうかお気を付けて」
「あぁ。さあ、行こうハル」
「はい」
受付嬢さんに軽く会釈をしてから、アイセさんとギルドを出る。
「――本降りになって来たな」
「ですね」
どんよりとした雨雲からは、ざあぁ、と雨が降り注いでいる。
ギルドまでの道のりは、傘は要らないくらいの勢いだったけど……このまま帰ったら濡れ鼠確定だ。
「取り敢えず、道具屋に行きましょうか?」
「そうだな。物資の供給が立たれているのであれば、早い内にアイテムの補充をしておいた方が良さそうだ」
「あと、傘も欲しいです」
ちょっと肌寒くなってきたから、ホントは合羽みたいなレインコートがいいんだけど、きっと装備できないだろうしね。露出レベル的に。
ってな訳でボクとアイセさんは道具屋を目指して駆け出したのだった。
次回投稿は9/14(月)AM8:00の予定です。
以下『プリーズテルミー! リリウム様!』のコーナー。
今回のお題は『噂のアイセ=シックステール、どれくらい強いの?』。
という訳でアイセのステータスを公開!
『=================
名前:アイセ=シックステール
性別:♂
年齢:18
種族:ヒューマン
LV:121
クラス④ソードクイーン(21/100)
③ソードダンサー(50/50)
②フェンサー(30/30)
①ファイター(20/20)
状態:ふつー
所属:冒険者ギルド
ファミリー:シックステール
(エルダー代行)
パーティ:ヴェイグランツ
LV:121
EXP:143/5420
LP:247/250
AP:70/70
SP:223/223
MP:382/382
HP:0/240
STR:405(-182)
DEX:420(+202)
VIT:405(-182)
AGI:660(+343)
INT:300(+30)
MND:300(+135)
LUC:320
DES:320(-80)
所持金:24,004Z
PAGE:『1』/2/3/4
=================』




