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第11話  パーティ脱退の危機!? 逆恨みのミスティ!

少し投稿遅れてしまいました。

本当に申し訳ない。

 

 ボクとライラさん、二人揃って武器屋を出る。

 大通りは、照りつける真昼の陽光と人々の賑わいで熱気に満ちている。

 そして今は、ボクのその一部だ。


 そう、とうとう。念願のマイウェポンを入手したでぇ!!


 ハンドガン二丁とベルトとホルスター二つ。

 合わせて5,230Zと中々高い買い物になったけど、ボクは満足していた。

 ボクはホルスターから二丁の拳銃を引き抜く。


「ばーん♪」

「おまっ、馬鹿野郎! 銃口をこっちに向けんじゃねえ!?」

「やーですねぇ。ホントに撃つ訳ないじゃないですかー♪」

「ったく。舞い上がってんなぁ。オモチャじゃねえんだから、大切に扱えよ?」

「はいっ! 勿論!」


 まじまじと手にしたハンドガンを見つめる。

 名前は『デリンジ』。ランク1のハンドガンの中でも安価で使い易い物らしい。

 デザインは想像していたのとだいぶ違った。

 短小で角の少ない、流線型のファルム。まるでSFに出てくる銃みたいだ。

 特徴はコンパクトなボディと軽さ。手のひらサイズで、非力なボクでも扱える。

 その分威力は控え目らしいけど、何やら銃の火力はINT(かしこさ)である程度補えるとか。

 まさに魔法使い専用の護身武器。今も魔法職初心者に広く扱われているらしい。


「性能、一応見とけ。装備画面から確認出来っからよ」

「あ、そうですね」


 早速ウィンドウを呼び出して装備画面を開ける。


『===================


 『変更』『最強装備』『全て外す』

 『コーデを保存』『コーデを呼び出し』


 ===================


  コーデ名:淫マジシャン♪

  右手:デリンジ(右)

  左手:デリンジ(左)

  補助:――――

  頭:情熱のリボン

  体:淫魔見習いの淑女服(上)

  腰:淫魔見習いの淑女服(下)

  腕:淫魔見習いのカフス

  足:情熱のパンプス

  外套:――――

  インナー:――――

  アンダー:純情のショーツ+ブラ

  ソックス:魅惑の二―ソックス

  アクセ1:小悪魔チョーカー

  アクセ2:――――

  アクセ3:――――


 ===================』


 デリンジをタッチ。


『===================

       デリンジ

 ===================


  種別:ハンドガン ランク:1

  重量:7     耐久:50 

  基礎攻撃力:20

  能力補正:Dex>E+ Int>D

攻撃属性:魔>100 打>30

  衝撃力:魔>5 打>20

  連射:C  射程:D-

  追尾:D- 弾速:D    

  最大リチャージ量:12

  リチャージ消費:12

  リチャージ速度:S

特殊効果:――――――――


 ===================


  説明


  ピストルタイプのハンドガンだよ。

  軽くてコンパクトな見た目が◎

  リチャージ性能も抜群だ♪

  ただし火力は優しめなので注意!

  魔法職の護身武器に♪

  あるいは銃の入門武器としてどうぞ♪


 !!注意!!


  リチャージを忘れないように!

  いざ、って時に撃てないぞ!

  こまめなリチャージは銃使いの基本!

  頑張って癖を付けよう!


 ===================』


「? ライラさん?『リチャージ』って何です?」 

「あん? 銃にマナを込める事だよ。マナを込めないと撃てないだろ?」

「ああ、そうか」


 本物の銃で言う所の『リロード』みたいなものか。


「ていうかお前、画面の見方、分からねえんじゃねえか?」

「ええまあ。はい、すいません」


 いや、重量とか、ランクとかそういう所は流石に分かるけど。

 能力補正とか攻撃属性とか、あとリチャージ関連が全然分からない。


「まあ、しゃあねえな。軽く説明してやる。一回しか言わねえからな?」


 ってなわけでライラさんに説明してもらいました。


 ===================


  種別:ハンドガン ランク:1

  重量:7     耐久:50 

  基礎攻撃力:20

  能力補正:Dex>E+ Int>D

攻撃属性:魔>100 打>30

  衝撃力:魔>5 打>20

  連射:C  射程:D-

  追尾:D- 弾速:D    

  最大リチャージ量:12

  リチャージ消費:12

  リチャージ速度:S

特殊効果:――――――――


 ===================


『能力補正』は基礎攻撃力に+αされる数値の量らしい。

 例えば『デリンジ』ならDEX(器用さ)INT(かしこさ)が高い程威力が上がる。

 S、A、B、C、D、E。それに+と-を合わせ18段階で上昇量が変化するらしい。

『攻撃属性』はその武器で攻撃した時の属性が何か、という事と、その際のダメージ量。

 この武器は射撃時が『魔法属性』で威力も100%。

 だけどグリップ部で殴った時なんかは『打撃属性』になって威力も30%まで低下するって事。

『衝撃力』は相手を怯ませる強さらしい。

 撃った時よりも殴った時の方が怯ませやすいって事かな。

『連射』『射程』『追尾』『弾速』は、まあ、そのままの意味。

『最大リチャージ量』は最大までマナを込めた時に、発射可能な弾数。

 この銃なら最大12発ずつ発砲出来る。

『リチャージ消費』はリチャージに消費するMPの量らしい。

 12+12で合計24のMP消費で二丁とも最大リチャージが出来る。

『リチャージ速度』は弾切れ状態から最大にまでリチャージする時にかかる時間。

 具体的にどれくらいかかるのか、数値をとしては書いて無いけど…

 デリンジなら大体2~3秒くらいで満タンまでリチャージ出来るらしい。


 いやめっちゃ細かいやん。


「ちなみに基礎攻撃力が20っていういのは弱い方なんですか?」

「あん? そりゃ豆鉄砲だぜ。そうだな――例えば同ランクの片手剣なら50はあるな」

「おっふっ」


 二分の一以下!? 豆鉄砲やんけ!


「けど、魔法属性だからな。鎧を着ているヤツでも思ったよりもダメージが通る。

 逆に魔法防御が高いローブなんかを着てる魔法職の連中にはあんま効かねえな。

 それに二発同時に発射が出来て連射もそこそこ効くから…まあ、使い方次第だろ」


 むう。性能は大体理解出来たけど。


「ピンと来ないって顔だな。試し撃ちでもすりゃあいいんだが。

 それも出来れば実戦で、きっちり使用感を掴んでおいた方がいい」

「無茶言わないで下さい!? ボクレベル1ですよ!?」

「だからだろ。失うものが何も無いから好きなだけ無茶出来るってなもんだ」

「裸に剥かれるのが平気な訳あるかー!?」


 ってあれ?『失うものが何も無い』って、レベルが1じゃなかったら何か失うの!?


「んだよサキュバスの癖に純情ぶりやがって。

 昨日男湯の脱衣所に侵入したのは誰だよ?」

「ち、違っ…あっ、あれは不可抗力でっ――もう! やっぱりライラさん嫌、」


『嫌いです!』と言おうとした瞬間。


「あーっ!? やっと見つけましたわ!! この泥棒猫!」


 武器屋の前、ライラさんとじゃれ合っていると、何処かで聞いた声がした。

 振り向くと額に血管、顔には鬼の形相を浮かべた女の子。

 葉っぱ色の長い髪をした、軽装の剣士だ。

 

 ――この人って、確か。


「よぉ。ミスティじゃねぇか。久しぶりだな」 


 そうだ。昨日、アイセさんとこの街に来た時、ファンの大群に囲まれて。

 にっちもさっちもいかなくなった状況から助けてくれたのが彼女だった。

『AFC』――アイセ・ファン・クラブの会員№1。ミスティ=フォーエストさん。

 うん。胸もちゃんとあるから女の子だ。


「えっライラさん!? そこの色魔とどういうご関係ですの!?」

「ああ。ウチのパーティの新メンバーだよ。一応な」

「な!?」


 ミスティさんが言葉を失う。

 かと思えば般若の如き形相でボクを睨みつけた!


「この毒婦!! 一体どんな卑劣な手を使って皆さんを懐柔したんですの!?

 アイセ様のパーティには入りたくても入れない子達が大勢居るのですよ!?」


 ――ああ、そういう事か。

 正体不明のサキュバスが『ヴェイグランツ』に加わるのは不公平、と言いたいんだ。

 そうか。ミスティさんも含め、長い間アイセさんのファンをしていたんだもんね。


 けど残念。ボクとアイセさんには、同じ転生人という共通点があるのだ!

 

「俺も散々注意したんだけどよ。アイセが気に入ったらしくてな。

 今はお試し期間中ってところだ」

「納得できませんわ!!」


 シャキンっ、と音を立てて腰の刺剣レイピアが抜き放たれた。

 陽の光を受けて、細身の刀身が煌めく。

 と、その切っ先をボクへと向けた。


「バトルですわ!!」


[デデン!]


 大きなSEが鳴った。


[バトル申請が来たよー♪]


『挑戦者あり!』と馬鹿でかいメッセージウィンドウが開く。


『==================

 

  名前:ミスティ=フォーエスト

  種族:人間

  クラス:ソードダンサー

  称号:AFC会長

  状態:ヤローテメブッコロシテヤル!!

  LV:65

 

 ==================』


 レベル65!? たっか!! こんなん逆立ちしても勝てんわ!


[バトルする~?]


『==================


『バトルする~? 止めた方がいいよ~』



    『下剋上、見せてやんよ』

  『勝てない戦いはしない主義です』

 

 ==================』


 あれ? バトルの選択肢、ゴブリンちゃんと戦った時と少し違う?

 相手が明かに格上だからかな?


「あん? ミスティ。お前、レベル下がってねえか?

 こないだ別の街で会った時は70超えてたろ」

「昨日盛大に負け散らかしたせいでレベルが7も下がりましたの!

 そこの泥棒猫のせいですわ!」

「身に覚えが無ーい!?」


 っていうかレベルって下がるってどういう――あ。

 さっきライラさんが、レベル1だから失うものは何も無いって言ってたの、この事!?

 ボクが知らないこの世界のルール、まだまだありそうだなぁ。

 っていうかライラさんに話聞いとこ。

 コショコショとライラさんと内緒話を始める。


「…ライラさん。レベルが下がるって、何で下がるんですか…?」

「…だからサキュバスのお前が何で知らねえんだよ。

 バトル後のお楽しみタイムでたっぷり経験値を吸われたんだろ…」

「…ますます分からなくなった…!?

 お楽しみタイムで経験値を吸われるって何です…!?」

「…いやだから何でサキュバスのお前がお楽しみタイムを知らねえんだよ…!?

 まじで記憶喪失面倒臭え……いいか?

 バトルで勝った方は負けた奴の経験値を奪えるんだよ…」

「はあっ!?」


 なんじゃその理不尽要素!?

 勝った人は更に強くなるから、ずっと勝ち続けられるやんけ!


「…あれ? さっきサキュバスのおまえが~みたいな言い回しをしましたけど…

 サキュバスならお楽しみタイムで有利に働く要素があるんですか…?」

「…んなもん決まってるだろ。経験値の吸収はキ、」

「いつまで待たせる気ですの!? さっさとバトルを受けなさい!」

「いやミスティ。流石に無茶だろ。こいつマジでレベル1なんだぜ?

 お前レベルが下がったって言っても俺と同じ中級職ミドルクラスだろ。

 頭の回るコイツがそんな無謀な勝負を受けるかっての」

「そ、それは…そうですが」

「そうですよ。大体この勝負、ボクになんのメリットもありませんからね。

 悪いですけど拒否させてもらいます」


 ボクはウィンドウの『勝てない戦いはしない主義です』をタッチしようとして。


「そ、そこまで言うなら、分かりましたわ!

 貴方が勝ったら、私の今の所持金の半分を差し上げますわ!」


 うん? 所持金の半分、か。

 そういえばミスティさん、確かAFC(アイセファンクラブ)の会長だよね。

 お金は持っていそうだから、勝てば結構な額なんだろうなぁ。


 勝てればの話だけど。


「ミスティ、そこは全額にしろよ。どうせ勝てる戦いなんだから釣り合ってねえよ」

「まあ、負けると分かってる戦いなんでどうせ受けないですけどね」

「あーもう分かりましたわよ! 全額で結構です!

 ハンディキャップも好きにどうぞ! 何でも受けて立ちますわ!

 ただし! 私が勝ったら貴方には『ヴェイグランツ』には抜けて頂きます!」


 ウィンドウを触ろうとするボクの指が止まる。

 ほう。ミスティさんが勝てばボクはアイセさんのパーティから脱退。

 ボクが勝てばミスティさんの全財産を没収。

 双方ともにリスクがある掛け試合(アンティ・マッチ)って事か。

 そしてそんなリスキーな賭け事はボクの趣味じゃないけど――


 勝てる可能性が十分・・にあるなら話は別だ。


「――へーぇ…?」


 言質ぃ、取ったよぉ?


「今、『何でも』って言いましたよね? ボク聞きましたよ?」

「ええ言いましたわ! ハンデでも条件付きでも何でも好きになさい!

 でも余り無茶な条件は私も呑みませんわよ!?

 逆立ちして戦えとか! 最初から全裸で戦えとか! 攻撃するなとか!」

「何だよつまんねぇ。それじゃどっちみち勝ち目は薄いな」


 確かに。レベル差が開いている以上、一般的なハンデじゃ勝てないのだろう。

 けれど。それはまともな相手の場合だ。

 自分で言うのもアレだけど。

 ボクは色んな意味でまともな存在じゃない。


「っていうかミスティ? 俺やアイセ程じゃねえが、お前もそこそこ強えんだからな?

 こんなクソ雑魚ピンク、ハンデがあっても瞬殺、」

「良いですよ」


 ライラさんとミスティさんが硬直した。 

 

「条件は二つ。まず一つ目。瞬殺不可。

 具体的には2分以内にミスティさんがボクを倒す事を不可とします。

 二つ目。ボクがH魔法を一回だけ撃つので、それには絶対当たって下さい。

 回避したり防御した時点でボクの勝ちとします。

 何か質問はありますか?」

「――え? たったそれだけで、良いんですの?」

「はい♪」

「言っておきますが私と貴方のバトルです。【インターセプト】も禁止にしますわよ!?

 ピンチになっても誰も助けてくれませんわよ!? それでも宜しいですの!?」

「構いませんよ♪」

「貴方が負けたら『ヴェイグランツ』から抜けてもらいますからね!?

 詐欺も誤魔化しも出来ません! リリウム様が貴方を『ぼっち』にしますわよ!?

 ちゃんと理解してますの!?」

「はい♪ どんとコイ、です♪」


 笑顔で返事をすると、ミスティさんはポカンとした表情を浮かべ――

 

「くふ。くふふふふふふふうふふっふふふっ…!」


 しかしすぐにドン引き不可避の愉悦笑みへと豹変する。


「お、おいピンク。マジでいいのかよ?」

「はい。あんまり沢山要求したら、今度はミスティさんが嫌がるじゃないですか。

 それじゃ所持金をボッタク、おっと。正々堂々とした勝負になりませんから♪」

「金目当てかよ……一応言っとくけどよ。

 ゴブリンと戦っただけのお前じゃ、ミスティの足下にも及ばねえ。

 まともなハンデじゃ、文字通り勝負にならねえぞ?」

「いやいや。分からないですよー?

 何よりミスティさんの全財産――想像しただけで楽しくなってきません?

 きっとAFCの会員の皆さんから会費をふんだくって豪遊してる筈ですよ♪」


 にしし。とネットリスマイル。

 いやぁ、我ながらゲスい。今のボクはどう見ても金に目の眩んだ女の子である。

 けど、これで良い。『金に目が眩んで正常な思考が出来なくなった』。

 そう思わせる事が狙いだからね。


 勝つ見込みがあってバトルを引き受けた――とは夢にも思わないだろう。

 ボクは画面の『下剋上、見せてやんよ』をタッチ。


[申請受理! これより【ミスティ】対【ハル】のアンティ・ハンディキャップ・バトルを開始しまーす!]


 テーッテレテー♪ とファンファーレが響いた。


[バトルフィールドっ、セーットアーップ! 危ないから観客の皆は離れてね♪]


「!? あっぶね!」


 ヒュオンという音と共に半透明・円柱状のバリアがボクとミスティさんを中心に広がる。

 いち早く危険を察知したライラさんは素早く脱出したけど――


「「「「もぶっ!?」」」」


 あ。脱出に遅れた一般通過女子達がバリアに弾かれて吹き飛ばされてる。

 これ地味に酷くない?

 真っ昼間に往来の真ん中で始めたから、事情を知らない人がバシバシ吹き飛ばされてる。


「え? 何々? 何の騒ぎ?」

「AFCのミスティさんと見た事無いサキュバスのバトルだって!」

「あっ!? あたし知ってる! あのサキュバス、昨晩アイセ様と一緒に居た子だ!」

「えっ!? アイセ様この街に来てるの!?」

「来てるよ! ほら! 同じファミリーのライラさんもそこの居るじゃない!」


 ――うわ。ギャラリーが何時の間にか凄い事に。

 まあ、こんな場所で始めたから当然だけど。人だかりが出来ちゃってるよ。

 こんな所でバトル、か。

 ダメージを食らう事に服が破け、最終的にすっぽんぽんにされてしまう訳だけど。


 むう。ちょっと早まったかなっ? 

 いや。どうせこれから嫌と言うほどバトルはする事になるんだろうし。

 慣れとかないといけない。

 少なくとも、アイセさんを始め、この世界の皆はそうやって今まで生きて来たんだし。

 怪我や死ぬ事が無いだけ、全然マシだ。

 必要なのは覚悟! 度胸! 行ったれオラァン!!


「やれー!! ひん剥けー!」

「会長!! 泥棒猫サキュバスに正義の鉄槌を!!」

「え!? レベル1対65!? こんなの勝負にならないよ!?」

「いやいや。秘策があるんだって! じゃないとバトルする訳ないじゃん!」


 さあ、外野もヒートアップしてきた。

 今からやっぱり止めますなんて言えないぞ。


「さあ! もう後戻り出来ませんわよ!」

「それはこっちのセリフです。ミスティさん。一文無しの生活が待ってますよ♪」

「くふ。くふふふふふふふふふふふううっ♪」

「くす。くすくす」


 妖しく笑うボクとミスティさんの間で火花が散る!

 もう、二人を止める物は何もない。


 さあっ!! バトル開始だ!!


次回投稿は8/20(木)AM8:00の予定です。

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