タ〇ネ〇危機一髪‼
今、俺は危機的状況にある。目の前には山盛りのタ〇ネ〇。そして脅迫せんとばかりの視線...。なんでこんな状況に陥ってるのかっていうと、時は少し遡ることになる....。
外は寒い風が吹いていてコートが欠かせない。言わずもがな季節は冬。そろそろ雪が降ってもいい頃だ。高校生の俺は勉強に委員会に毎日が忙しい。俺は図書委員をやっている。高校の図書室は小学校や中学校とは違い設備が良く、冬は暖房が効いていてとても暖かい。
そんなある日、俺は暖かい図書室の貸し出しカウンターでぼけーーっとしていた。すると司書の先生があるイベントの話をし始めた。
「調理実習しない?」
(は..い..?)
俺を含め側にいた生徒全員が驚いた。
「せんせー、どーしたんですか突然?」
俺は驚きつつも聞いてみた。
「え?ほら、しょくよくのふゆ、ってよく言うじゃない?
「先生、それを言うなら食欲の秋ですよ....」
「あれ~?そうだっけ?」
その場の全員がため息をつく。司書の先生はきれいな人だ。一見モテそうだがそうでもない。いや、モテるにはモテる。でも性格が天然すぎるというか、その域を超えている。天然でかわいいから過去にお付き合いした男性はいるらしいが、先生の天然に付いていけずあえなく断念する人が多かったらしい。一応今はフリーみたいだ。
「まあ~冬でもいいや♪食に触れることはいいことだもんね~」
こっちのことはお構いなしに話を進めていく。
「で、何作るんですか先生?」
「う~~ん、何にしよっか~」
「無難にハンバーグとかどうですか?」
小難しい料理よりも簡単に作れる料理がいいだろう。
「うん、そうだね!ハンバーガーにしようかっ!」
(なんでやねんっ!)
心の中で全力でツッコミを入れる。本当にこの先生はおそろしい人だ。人の言うことを聞いたことがない。いつか何か大事をしでかしてしまうんじゃないか?
「はあぁ、そうですか....」
俺は呆れつつも納得した。なんかもう慣れてきてしまった。そんな自分も怖くて仕方ない...。
その日は適当に班決めと日時を決めた。俺の班は女子2人に男子は俺を含めて3人。開催日は3日後ということになった。
時は流れ調理実習当日。時間は放課後。俺はハンバーガーを残さず食べようとお昼は極力そんなに食べずに挑んだ。まさかこの行動によって自分の首を絞めることになろうとは。このときの俺はまだ、知るよしもなかった。
作業分担として、女子が食材を切る・盛り付け担当。男子がこねる・焼く担当ということになった。女子の切る作業が終わるまで暇なので、野郎三人で準備をしつつ語り合っていることにした。
「やっぱ司書の先生美人だよな~」
「だよなだよな~」
やっぱ話題は先生の話か。
「やっぱ付き合ってる人とかいるんだろうな~」
「ザクっザクっザクっ」
「いるに決まってるって」
「ザクっザクっザクっ」
「いや、今はフリーらしいぞ?」
「ザクっザクっザクっ」
男子三人でしょうもないことを語り合う。モテない男のさがなのかもしれない。
「ザクっザクっ..ザクっザクっ..ザクっザクっ..ザクっザクっ」
さっきから聞こえてくるこの音はなんだ?たぶん食材を切ってる音なんだろうけど、なんか異様に長くないか?
気になった俺達三人は様子を見に行ってみた。するとそこには壮絶な光景が広がっていた...。
「な、な、..なんじゃこりゃーーーーーーー!」
まな板の上に雪が積もっていた。いや、正確には玉ねぎだけど。
「ちょ、ちょ、ちょっとな、何してんの?!」
「えっ?何って玉ねぎ切ってるんだよ?」
「その玉ねぎの山なに!?」
俺はすかさずツッコミを入れる。ハンバーグにそんなに玉ねぎはいらんでしょ。
「あれれ?切りすぎちゃってるみたい」
あれれ?、じゃないでしょ!どう考えたらそんな量の玉ねぎを切るんだよ!こんな大量の玉ねぎどうするんだよ....。
「どーすんのこの玉ねぎ?こんなに食えないぞ?」
「えーーどうするのー?」
みんな考えてることは一緒みたいでさっそく言い合いになった。どうすんだこれ?捨てるのはもったいないし、かと言って食べるのもあれだし.......。なんか面倒なことになってきたから逃げようかな♪なんて考えが浮かんでそーーっと逃げようとすると、突然肩を掴まれた。
「どこ行くのかな~??」
掴んできたのは司書の先生だった。
「え?どこに行くって?や、やだな~先生、どこにも行くわけないじゃないですか~」
俺の企みに気づいていないとは思うが一応ごまかしてみる。
「そのわりには足が出口に向かってるのはなんでかな~?」
ぐぐぐ。天然のわりには鋭いじゃないか。
「先生の気のせいですよ、気のせい」
疑いの目を逸らさせようと言葉を出す。すると、
「私の目を誤魔化せるとでも思ったか?」
急に鋭い言葉が聞こえてきた。誰の声かと思ったが、目の前にいる先生から聞こえてくるみたいだ。
「え?先生急にどうしちゃったんですか?い、いつもの先生じゃないですよ?」
「いいから私の質問に答えろ。なんで足が出口に向かっているんだ?」
先生の性格が急変した。えっ?えっ?先生ってこういうキャラだったっけ?もしかしてこっちが素なのか?
「なんでって。べ、別になんでもないですよ?」
ここは白を切るしかないな。自分の本能がそう言っている。
「ほほぉう、あくまで誤魔化すか..。それじゃあ、あの白い山は何だ?」
そう言って指さした先にあったのは俺達の班の玉ねぎの山。
「あ、あれですか?あれはなんか切りすぎちゃったみたいで....」
ここは正直に答えたほうが良さそうだ。
「どう処理するつもりだ? 他のみんなは話し合っているみたいだが...もしや、逃げるつもりか?」
ギクギクっ!?ばれてる?ばれてるよね?
「もし逃げるつもりならこちらもそれ相応の対処を取るが..」
「と..い、言いますと...?」
ビクビクしながらも聞いてみる。
「キミのあんな写真やこんな写真をばら撒くことになるが、いいか?」
へっ?今なんて言った?あんな写真やこんな写真?!
「ど、どうしてそのようなものを?」
「もちろん、盗撮したからに決まっているじゃないか」
はあ~~!?なんだって?盗撮?ウソだろ?!
「なんでそんなことを?犯罪じゃないんですか、それ?」
勇気を振り絞って聞いてみた。
「私はな、気に入った男のことをとことん調べる主義なんだよ」
それってストーカーじゃん!?もしかして先生がモテても成功しない原因ってまさか...、
「うぅん?今なにか余計なことを考えなかったか?」
「いいぃええぇ!?、な、なにも考えてないですよ!?」
本当におそろしい人だ。天然だと表立っていながら実はストーカー趣味があるとは...。知ってはいけないことを知ってしまったんじゃないだろうか。
「で、どうするんだ?写真をばら撒かれたいのか?それとも玉ねぎを食べるのか?」
「なんでその二択なんですかねぇ~?俺お腹いっぱいで食べられないんですけど...]
「そんなわけないだろう?今日はそんなにお昼食べてないだろう?」
(なんでそんなことまで知ってるんだよ~~)
「他に選択肢とかは~...」
「ない」
「ですよねー」
これって人生で最大の決断なんじゃないかと思えてきた。逃げちゃダメだよな、うん逃げちゃダメだ。俺は勇気を振り絞って言い合っているみんなのところに行った。
「あのさあ、ちょっといいかな?」
外は暗くなり始め、もうすぐ晩ご飯の時間。俺の姿は学校の玄関にあった。
「それじゃあまた明日~。気をつけて帰るんだよ~♪」
司書の先生がみんなを見送っている。さて、俺も帰るかな。なんて思っていると、
「あっ!ちょっと待って」
先生に呼び止められた。
「な、なんですか?」
すごい嫌な予感がする。
「今日はお疲れ様。またなにかあったら手伝ってね♪.....それと~♪..私の秘密ばらしたらタダじゃおかないから♪......覚えておけよ?」
「は、は~ぃ」
ヤバい人に目を付けられてしまった。これからの学校生活、どうなっちゃうんだろ.....。