本当の始まり
目覚めた朝はとても清々しかった。
昨夜までの頭痛が嘘のように治っていたことも、大変ありがたい。
ぐっとベッドから姿勢を起こし、伸びをする。
昨日は散々な一日だった、先生に怒られ特に知りもしないクラスメイトに話しかけられ対応に困ったこと。
わざわざ思い出す必要もない記憶が回想された。
まぁ、いい、忘れてしまおう。
朝食を摂り、身支度をし学校へ向かった。
いつもの通学路をいつもの様に歩く、しかし今日は障害物があるようだ。
目の前には少し小柄で髪はショートカットで、鼻は低めだが目や口のバランスがあっていて、かつ中性的な顔立ちのため性別が判断しきれない。
年齢は同じくらい、もしくは年下っぽい。
というか、知らない人。関わらないのが一番。
進行方向を真っ直ぐから少し斜めに変え、その人と関わるのを防ぐ。
行き先を変えた瞬間、その人は僕の通り道を塞ぐ。
むっとなるが、再度進行方向を変え...また塞がれた。
ふむ、落ち着け。
この人は何をしたいんだ?
「君に話があるんだよ」
!
ココロを読まれた、のか?いやすごいタイミングで会話がマッチしたのかも知れない。
ちょっと驚いたためか、立ち止まってしまった。
「君って...うーん。最近の日常をどう感じてるかな?」
あいつは何を悩んだのか知らないが、先ほどの自分の考えは杞憂であったようだ。
その前に質問に答えるべきだろうか?
どうやら相手は答えてくれるまでこの道を譲る気は無いようで、僕の足取りを目で追っている。
引き返して別の道からも行けるが、カナリめんどくさいので、今ここで質問に答える方が良いだろうという答えに至った。
ただ誰だか知らない人に質問をされて正しく答えるほど世の中は甘くない。
「楽しくて仕方がないよ、毎日が夢のように面白い」
そいつの顔を伺うと、にやっと頬を歪ませた。
「ダウト」
ズキンッ
心臓の脈拍が一つ上がり、呼吸が辛くなる。
面白いじゃないか、久しぶりの〝会話〟を楽しんでみるのも悪くない、ギュッと手に力が籠もる。
「何を基準にその答えに至った?」
「なんとなく」
なんだ、偶然か。
急に熱が冷めるのがわかる。
頭に血が昇ったようで、ふっと頭が寒くなるのを感じた。
「偶然じゃない、じきに分かる」
ごそごそとポケットから何かを取り出した。
目の前にはテレビでしかみたことの無い、拳銃の様な物、銃口は僕に向けられている。
身構えるも時すでに遅し。
空気を入れた袋を耳の周りで鳴らされたような、破裂音がビリビリと体全身へ伝わる...
体の力が抜け...
あぁ...気が遠のいて行く――