始まりの終わり
家に入ると人の気配はなく、誰もいなかった。
もちろんそのはずで、親は共働きで生活を形成している。
特にお金に困った様子もないが、もし困ったとしてもあからさまに子どもに〝お金がない〟と意思の表明をしたならば、それ末期であろう。
靴を脱ぎ捨て階段を上り、ぺたぺたと廊下に足音を残しながら自分の部屋へと向かった。
ドアを閉じると静けさのみが残り、空気が少し冷たく感じられる。
ベッドで横になり楽な体勢を取るーー
「人と話したのはいつぶりだっただろう」
家族とも、クラスメイトとも全く話さない。
話す内容が無い、故に話さない。
もともと人付き合いは好まない。
いつごろからだっただろう、人というものを信頼しなくなったのは。
スッと目が覚める、いつの間にか寝ていたようで時刻は8時を回っていた。
食欲は無い、少し身体を動かそうとすると頭に後ろからフライパンで殴られたような痛みが走る。
起きようにも起きれず、再び床に入った。
親が帰って来るのは早くとも10時以降で、いつもご飯は自分で作るか、出前やコンビニで済ませてしまっていたのでご飯は食べずに寝てしまおう。
朝になればすべてが元通りになっているだろうから。