始まりの始まり
カツカツと軽快な音を立ててチョークが黒板に文字を形成していく。
静かな教室で一つ流れるテンポの良い音を追うように、文字を工場の流れ作業でノートに真似をする。
僕はそんな何もない、いや、何もない変化のない生活を過ごす日々に少なからず辟易している。
ただみんなは何事もないかのようにノートを取り続けているのを見ると、何かに取り憑かれているのではないかとさえ疑う。
そんなことがあるはずがないと、今の日常生活に対してのこの気持ちは僕だけの物ではないと思う。
しかしながら、新たになにか行動を起こすほどの意欲があるわけでも無い。
あからさまにダルそうな顔をしていたのが先生の目に止まったようで、
「玻璃、受験前にそんなやる気の無い顔しとったら!! 落ちるぞ」
と受験前である中学三年である僕らに対しての脅しと文句である。
「はいっす」と軽めの返事で受け答える。
先生がなにか文句を言いたげな顔をしているので、顔をくいーっと持ち上げ、〝聞いてますよ〟と目で訴える。
ふんっと一つ鼻を鳴らし、黒板にこんにちはをして何事も無かったかのように授業の再開。
ただ満足いかないのか先ほどのチョークのメロディより少し早めになって周りの人はより一層目を黒板からノートへと走らせているのを見て、少し悪いことをしたかな?と少し反省してみる。
反省はするが、やはりやる気のが起きないのが現状であった。
授業終了の合図である鐘の音が学校中になり響くとともに、気の張っていたクラスメイト達がふぅっと息を漏らした。
それと同時に日直が挨拶をし、授業は終了した。
先ほどの授業が丁度6時間目であり、あとは掃除そしてそのあとにクラブ活動があるが僕はクラブには所属していない。
クラブに入ってない理由は特にないが、入る理由がないのがクラブに所属しない一番の理由であるように思う。
放課後という事もあってか流石にざわざわしている
先ほどの授業終了から5分ほどが経過した後、ガラッと前の扉が開き担任が登場した。
その担任の容姿はというと、顔立ちは中の下ほどだが見てくれは悪くない。
体は流石体育教師だな、と思わせる体格の良さはジャージの上からでもわかるほどだ。
しかも顔はすらっとした高めの鼻、男性らしいキリッとした顔立。
しかしながらの欠点は、目。
目が凄い細く、開いているのかも分からないほどで、残念極まりない。と何処かの女子が言っていたのを聞いて、何がもったいないのであろうかと思ったが口にはしない。
スッと息を吸い、担任がいつもの様にいつものままのセリフをクラスにばら撒き散らかしていった。