勇者パーティーをクビになった翌日、国王が土下座してきた
「役立たずは勇者様のパーティーにはいらない」
俺を見下して、魔法使いの男が言う。
「勇者様の足手まといにしかなってないじゃない、どっかに行って!」
僧侶の女が、俺に向けて手を払っている。
勇者と俺とではじめた冒険に後から入って来たのは、魔法使いの男と僧侶の女だが、俺が役立たずで足手まといな事は否定できない。
俺はいまだに何の特技も職業も持っていない、村人Aだった。
そんなわけで、親友だと思っていた勇者も、何も言えずにオロオロしている。
そして、俺はパーティを去った——。
でも、気になって勇者パーティーの後をつけた。
俺がなんの特技もない村人Aなら、そんな奴しか一緒の旅に着いて来てくれなかった勇者もなかなかの者だ。
勇者に選ばれたからには旅に出なければいけないのが決まりだ。
「だずげで〜え゛え゛ぐん゛っ!!」
旅立ちの前日までに仲間を見つけられなかった勇者が俺に泣きついて来た。
「ごめ゛ん゛ね゛、Aぐんっ! 君にだけは、迷惑、がげだぐながっだの゛に゛〜!!」
まあ、生まれた時からの腐れ縁で、俺が何も出来ない事を知ってる勇者で、何の期待もされてない。
着いて行くだけなら、気楽なものだった。
俺は観光気分で着いて行った。
だから、勇者パーティーをクビになっても別にいい。
けど、勇者は心配だ……勇者がいないと勇者パーティーは名乗れないから、クビになったりはしてないだろうが……。
勇者の看板だけ利用して、王宮から支払われる金を不正に仲間が使ったりすることがあるらしい。
——旅の途中に、勇者パーティーをクビになった村人Aの俺が、勇者を心配してるなんて、あり得ないな……。
そして、
俺をクビにした勇者パーティが、猫を拾っていた。
「か、可愛い〜!」
俺を手で、シッシッと追い払った僧侶の女が、その手で猫を撫で回している。
「存在に癒される〜」
俺を見下した魔法使いの男が、猫と同じ目線になって惚けている。
猫は勇者パーティーの新しい仲間に即日採用されたらしい。
お、俺のこと役立たずって言ったくせに、ね、猫ぉ!?
なんの役に立つんだよ!!
ただ、可愛いだけだろ!!
いや、気持ちはすっごく分かる!!
同じ役立たずなら可愛くて癒される方がいいに決まってる!!!
なんなら、可愛くて癒されるだけで、誰よりも役に立ってる!!!
俺だってっ!! 出来ることなら、魔法使いと僧侶をクビにして、猫と旅したかった!!!
最悪、勇者がいなくても、猫さえいればいい!!!
……。
じゃあ、別に今のままで猫を三匹飼えば良くない?
俺は猫を三匹仲間にした。
翌日、猫と冒険を続けていると、王様の乗った馬車がやって来た。
「村人A様! 申し訳ありません!!」
と、会って早々に王様がジャンピング土下座して来た。
いつもの事だが、会う度にジャンプと着地の精度が上がって、王様は完璧に俺の正面で美しく土下座している。
一体、俺の知らない間に、この王様は何回、俺に土下座を繰り返しているのか?
「魔法使いと僧侶は勇者様のパーティーから排除しましたので、どうか勇者様の元へお戻りください!」
「またか、どうして最初からまともなパーティーメンバーを用意できないんだ?」
「……それは、私の不徳の致すところです。本当に申し訳ございませんっ」
王様が泣きそうな声で、地面に頭を擦りつけた。
実は俺はこのゲームの転生者で未来の知識を持っている。
しかし、この王様の俺が生まれる前のやらかしで、この国はほぼ積んでいて、ほぼ確定で滅亡する。
この王様は、滅びる国を救うまで、何度も時間ループをさせられていた。
そんな王様に、俺が転生者だとバレた。
勇者と俺が旅立ちの挨拶と軍資金を貰いに王宮に行った時、王様は何度も時間ループをしてその時の問題の最適解を探していたところだったらしい。
ループの度に、ルートが変更になる王宮への道を、何故か迷うことなく毎回やって来る勇者と俺を怪しんだ王様が、俺たちを着けて、俺に秘密があると見抜いた。
王様に泣きつかれた俺は、つい、前世の知識で、王様が直面している問題の最適解を教えてしまった……。
以来、王様に粘着されている。
「お願いします! 村人A様の幼なじみの勇者こそが、世界を救うと教えてくれたのは村人A様ですよ?」
実はそうなのだ。
俺の幼なじみは、勇者候補の十人の中でも特に成長するとステータスが最強になる大器晩成型の勇者だ。
「どうか、彼女を助けて、この国を滅亡から救って下さい!!」
これから起こるイベントや問題の解決策を俺は完全に把握している。
助ける事は可能だった。
「でもなぁ、他の仲間がなぁ」
このゲームの仲間はランダムで決まる。
それで仲間になった奴らに何度勇者パーティーをクビにされてるか、俺は知らない。
こうやって王様が土下座で、勇者の元に戻れという時と、時間が戻って勝手にやり直しになってる時があるらしい。
「魔法使いと僧侶は、数日晒し者にした後に惨たらしく公開処刑する予定ですので、どうかどうか今回の仲間の選定ミスはお許しください。次こそは、ちゃんとした仲間をご用意いたします!!」
王様は自分が酷い目に遭っているだけに、他人を断罪するときは容赦ない。
「まあ、今後は新しい仲間は要らないか」
黒猫の剣士、白猫の賢者、三毛猫の魔法使い。
頼もしい仲間はすでにいる。
「にゃー」
可愛くて癒される。
これ以上の仲間がいるか?
「ごめんね。君にこれ以上、迷惑はかけたくなかったけど、また、仲間に捨てられちゃったの」
勇者がシマ猫を抱きながら言う。
この子は、勇者っぽい。
可愛い!!
「行こうか、勇者」
「にゃん!」
勇者と村人Aと、猫が4匹。
これがきっとこの世界の最適解だ。




