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『三十四歳、同じ教室の別々の恋』

『三十四歳、同じ教室の別々の恋』Part.4

作者: 綾戸燈和
掲載日:2025/12/23

最終章|集合写真


― 門出 ―


同窓会の終わりは、決まって集合写真だった。

「もう少し前に」

「背の高い人、後ろで」

誰かの声に押されて、人が動く。詰められる距離と、空いていく隙間。三十四歳になった私たちは、高校生の頃よりも、ずっと上手に他人との距離を測れるようになっていた。

近づきすぎない。

離れすぎない。

無理をしない。

それぞれが、自分の立ち位置を知っている。まだ懐かしいと感じるほど、あの頃の満たされることのなかった、そしてこれからも永遠に満たされることのないであろう少年期の憧憬が薄れてはいない。


好きだった人の隣に立つ人。

あえて、反対側に行く人。

名前を呼ばれても、視線を合わせない人。


あの頃、教室の中で起きていたことは、ここに集まった全員の中に少しずつ残っている。


片思いで終わった恋。

三角関係で壊れた友情。

嫉妬から出た、一言の失敗。


不登校だった人は、少し遅れて会場に来て、誰よりも丁寧に挨拶をしていた。


留年した人は、もう誰とも比べない顔をして、穏やかに笑っている。


退学した人は来なかった。でも、名前が出なかったわけじゃない。

「元気にしてるらしいよ」

その一言だけで、話題は静かに終わった。


転校して消えた席。

修学旅行で生まれた距離。

部内恋愛が、音もなく終わった午後。


受験の重さに潰れそうになった夜。

両片思いのまま、卒業してしまった関係。


双子の片方として、間違えられた記憶。間違えた側が、今も曖昧な顔で立っている現実。


そして、生徒会長だった人。

期待を背負い、誰にも言えない選択をして、それでも今日、ここに来ている。

集合写真の列に、彼女は、「ただの同級生」として立っていた。それだけで、十分だった。


「はい、笑って」

シャッターが切られる瞬間、私たちは一斉に前を見る。ほんの一秒。全員が同じ方向を向く。その一瞬のために、ここまで来たのかもしれない。


高校時代、私たちは狭い世界で、正解を探していた。

恋愛は、誰かに選ばれることだと思っていたし、失敗は、人生から脱落することだと本気で信じていた。

だから、必死だった。守りたかった。隠したかった。間違えたくなかった。

でも、今なら分かる。

あの頃の恋は、ほとんどが未完成だった。

だから、終わり方が分からなかったし、清算できなかった。未完成のまま残った感情が、私たちを大人になっても縛っていた。


清算とは、忘れることじゃない。正しかったかどうかを決めることでもない。

あの時の自分が、精一杯だったと認めることだ。


写真を確認して、誰かが言う。

「こんなに集まるの、久しぶりだね」

「次はあるかな」

笑いながらも、全員が、心のどこかで分かっている。

次は、簡単じゃない。

人生は、もう、交差し続けるものじゃないから。それぞれが、別の場所で、別の役割を生きている。でも、この一枚には、確かに写っている。


迷っていた自分。

間違えた自分。

守れなかった自分。

守ろうとした自分。

全部まとめて、ここに立っている。


同窓会が終わり、夜道に散っていく背中を見ながら、私は思った。最後に私たちはスイートピーの花束をもらった。白、ピンク、紫、赤、黄、オレンジ、クリーム色、複色など非常に豊富な色があった。まるで私たちの人生を表しているかのように、さまざまであった。

大人の恋愛とは、新しい誰かを見つけることじゃない。過去の誰かとの関係を、ようやく終わらせられるようになること。それは、冷たさじゃない。

未来に進むための、静かな優しさだ。

集合写真の中の私たちは、もう、同じ場所には戻らない。でも、あの教室で確かに生きていたことを、互いに否定しなくなった。それだけで、十分だった。


人生は、続いていく。

それぞれの速度で、それぞれの選択を抱えながら。

あの頃の恋も、痛みも、全部連れて。

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