第四話 VSニーレ
「ソラ、ちょっとここで待っててくれるか?」
ハイクはかっこつけた声でソラにお願いする。
「えぇぇ?いいけど、そのバンスとかいうやつ、なんで倒すの?倒すってことは殺すんだよね?別に何されたかわからない相手をいきなり倒すとかどうなの?」
「ま、たしかにそれもそうか、」
ハイクは門の前でソラと会話をしているうちに、自らの行動の浅はかさに気づくのであった。
「おい!そこの若き青年よ!バンスを倒してくれるのか?」
と急に村の方向から男性の声が聞こえた。 ハイクとソラが振り返ると、そこには青髭が目立つ二十代そこそこの男性が手に鎌のようなものを持って立っていた。
その男性は続ける。 「バンスを倒すっていうなら、俺も仲間を連れて手伝うぜ。もうこんな生活はごめんなんだ。あいつが来る前まではもっと……っぐ!!」
男性は悔しそうな顔をし、ハイクにそう語った。
「な、俺さっきここの村に来たばっかなんだ。そのバンスっていうやつを倒してくれってルシュクさんっていう老人に言われてここに来たんだが……バンスってそんなヘイト買ってるのか?」
「ヘイトも何も……この村はもともとヌメル領って言って、ヌメルさんという領主がいた。そのヌメルさんは村に足りないものや、我が領地の中央政府に対する意見を代弁してくれる、とても良い領主さんがいたんだ。しかし、その領主さんは弟であるバンスにクーデターを起こされ殺されてしまったんだ。そこからというもの、この領地はバンスの独裁政治が始まり、村民が蓄えていた資産を強奪し、農作で手に入れた作物はほぼバンスにとられ、村民は飢餓に飢えている。おまけに、こんな農村から脱出しようとしても警備兵が村の外側にうじゃうじゃといるせいで、誰もこの村から出られない……ったく、クソだぜ!!どんなに俺ら村民が対抗しようとしても、バンスの強大な強さには到底勝てない……悔しすぎるんだ」
そう男性はこの村の現状を説明した。
「うぅーん急に言われても覚えきれないが、この村はもともとヌメルという善人が統治していたけど、バンスという悪いやつに代わってみんな苦しんでいる。だから倒したっていう認識でいいか?」
ハイクは話をまとめた。
「おう、その認識でいい。それにしてもルシュクさんがか……あの人は村人のために飯や寝床を無償で作ってくれるお方だ……あぁいった人が増えればと心の底から思う」
男性はルシュクの話をするときは顔が少し明るい感じであった。
「てか、その村の外側にいる警備兵って、俺が村に入るときにいなかったぞ?なんでだ?」
ハイクは率直な疑問をぶつけた。
「きっとバンスに操られてる警備兵は物陰に隠れて、脱出者が出るのかを監視しているのだろう。この村の村人には、バンスの思い通りになるように、胸に粘土のようなものを埋め込まされる……」
男性は続けて、「頼む……この村のためにバンスをともに倒してくれないか?君の警備兵を気絶させられる力ならきっとできるかもしれない」
男性は目に涙を浮かべながら懇願してきた。
「それならやったらどう?話聞いていたら碌なやつじゃなさそうだし。お前がちゃちゃっと殺してやんなよ?」
話を聞いていたソラがそうハイクへ言う。
「そうだな、悪政そのものだし、たぶん俺のような最強が現れない限り、この村に住む人がかわいそうだぜ」
「ほんとですか!?!?では今すぐ、村の男を連れてきます!本当に感謝します!」
そう言い、男性は走って村へ向かった。
「おうよ!ま、正直俺一人でも十分そうだが……」
ハイクは余裕を持った返事を男性に返した。
「ハイク!!なんかいる!!」
ソラの大きな声がハイクに聞こえ、すぐさま屋敷の方向へ振り返った。
「これはどうも。我らの屋敷の警備兵を倒して、ずいぶんと挑戦的なお方ですな」
と、屋敷の階段の場所にいたのは、チョビ髭にハット、スーツ姿の男。年齢は四十歳くらいだろう。落ち着いたトーンで話す男。
「お前がバンスか?」
ハイクはその男を目的のバンスだと思った。
「いいえ。私はこの領地の第一騎士のニーレだ」
と、ニーレを名乗る男は自分がバンスでないことをハイクへ伝えた。
「そうか、ではバンスという野郎を出してもらおうか」
ハイクはやや挑発的にニーレに伝えた。
「それは構わないが、その前にお前らの命をいただこう!!!!!」
手を前へ出し、さっきまでの落ち着いたトーンとは別に、大きな発生で叫んだ次の瞬間。 手の平にあった血の出た傷から、白い手足のないドラゴンのようなものが二体飛び出し、襲い掛かってきた。
「おい待て!!!」とハイクは叫び、地面を思いっきり蹴り、ソラの方へとっさに飛んだ。 ソラへ飛び掛かり、地面へ叩きつけた。
「痛いな!!なにすんだよ!!」
と地面へ叩きつけられたソラはハイクへ罵声を浴びせるが。
「グゥ……」
とハイクは辛そうな声を発していた。 ハイクは横腹を白いドラゴンに噛み千切られており、中身がえぐられていた。 それを見たソラは、自分があと一歩で噛み殺されていたという現実に恐怖した。
「あのヒトラーみたいな男、まさかなんも言っていないソラにまで手をかけようとするとか!!本当の悪は成敗しないといけないな。グゥ!いってぇぇぇ!!」
ハイクはニーレに対し憎悪が沸いていた。
「ソラ、お前はここから逃げて村に隠れてろ!ここは俺があいつをぶっ倒す!」
ハイクはソラを逃がし、一対一の構図で戦った方が有利と考えた。
「わ、わかった。あ……ありが……とう」
と恥ずかしそうにお礼を言い、ソラは村の方へ走っていた。
「逃がすとでも思うか?」
と言い、ニーレは手の傷口からつながって出てくる白いドラゴンをソラに向かわせた。
「おまえ!!」
そう叫び、ハイクは高くジャンプし、ソラに向かうドラゴンの頭にかかとを突き落とし、地面へ叩きつけた。 地面の砂はあたりに舞っていた。
「ほぉ、貴様、腹をえぐられても生きているのか。しかも致命傷ではなさそうだ。加えて、力もそれなりにあるようだ。ここは本気で貴様をつぶすとしよう」
とニーレは淡々と言葉を放ち、門まで歩き始めた。 白いドラゴンで門を開けるニーレ。
ニーレは立ち止まり、庭にいるニーレと門の外にいるハイクの対決が始まる。
「関係ない少女をよく殺そうとしたもんだな」 砂埃が舞う中、ハイクが口を開く。
「すまなかったな、貴様と一緒にいたものだからついな」
ニーレの口からは、ハイクにとって聞き捨てならない発言が飛んだ。
「お前はどうやら倒さんといかないクズ野郎らしいな」
ハイクは小さな声量ながらも、心から思った言葉を言った。
「ではお先に」
ニーレの発言の次の瞬間、ニーレのスーツの背中を突き破り、白いドラゴンが十体現れ、ハイクのもとへ物凄い勢いで突っ込んできた。
ハイクは一番初めに来た白いドラゴンの頭を肘で一発食らわせ、少し前へ走り、次のドラゴンを右手で、その次のドラゴンを左手で弾き、ニーレに向かった。
次は二匹同時に襲ってきたため、両手を食われたが、ハイクは腕を引き剥がし、前へ走った。 物凄い勢いで距離を近づき、腕を再生しているハイクに驚きもせずに、ニーレはジッとハイクの目を見ていた。
「っこの!!!」
と叫びながらニーレに向かうハイク。 その時、初めに肘で撃ち落としたはずのドラゴンがいきなり後ろから右肩を噛まれ、上へ持ち上げられた。
上へ持ち上げられたハイクは。
「ックソ!!数が多すぎんだよ!!お前!!男なら正々堂々とタイマンはれよ!!この臆病者が!この精子みたいなドラゴンがいなきゃお前は何にもできないんかよ!!」
と右腕以外の四肢を暴れさせながら言った。
ハイクは白いドラゴンに右肩を噛まれ、宙に浮かされている状況。 ハイクは自分が無力化されたと思ったが、ふと右足の方を見ると、右肩を噛んでいたドラゴンとニーレの背中から出ている部分のクダがあった。 ドラゴンと言っても召喚しているわけではなく、ニーレの体からは分離されていない状況で動いているだけのもの。
ハイクは右足でクダを両足で挟み、右肩を前へ、そしてクダを左腕に通した状態で両足を前に引っ張ることで、クダを引きちぎった。
ズドンとハイクは地面へ落ちたが、クダを引きちぎられたドラゴンは虚しく土の上で絶命していた。
「痛たたた、しかしお前のその精子を呼び出せる能力って、このクダを引きちぎっちまえば簡単に殺せるってわけか。数が多いとかなり厄介だが、弱点が分かった以上、お前の優位性はかなり落ちたぜ?」
と笑いながらニーレに問いかけるハイク。
「ふむ、まさか俺のドラゴンを一匹でも殺すやつが出るとはな。少し驚いている……が、しかし、貴様はいったいいくつの俺のドラゴンを潜り抜け、俺に近づいた?」
奇妙なほど落ち着いているニーレのトーン。
「潜り抜けた?あぁ、まず肘で一体ぶっ倒して進んだろ?そんで右手で……」
とハイクが答えていると、「しまった!!!!」と急に叫びだし、後ろを振り返るハイク。 しかし、時はすでに遅い。 先ほど潜り抜けてきた白いドラゴン四体が、一斉にハイクのもとへ襲いに来たのだ。
今度はハイクの四肢すべてに噛みつき、宙に浮かせるドラゴンたち。 ニーレは不気味な笑顔を浮かべ。
「ふふん、貴様、その状態ではもうドラゴンのクダを引きちぎることは無理だろう。しかも貴様は体を損傷させても再生をする。なら噛み千切らずに半端に噛ませ、宙に浮かせることで、もはや貴様は何も抵抗することはできないであろう!!」
ニーレの落ち着いたトーンは、勝ちが確定している盤面で高くなった。 そして残りの五匹はハイクの体をピラニアの如く噛み千切り合い、ハイクは悶絶した。
「ぐあぁぁぁぁ!!!!」
そんな痛々しい声が屋敷周辺に響く。 もうすでにハイクの顔は叫び過ぎたあまり真っ赤となり、体は赤と黒の混じった状況となった。
「貴様もこれまでだ。一体何の目的があったのかはわからないが、ここまで実力差があっては元も子もないだろう」
ニーレのそんな発言に、ハイクは睨むことすらも難しくなっていたのだ。 体をえぐられ、その返り血がハイクの目に付着し、周囲が見れないのだ。
グサァッ!!
そんな絶望の中、一つの音が鳴り、ドラゴンたちの動きが止まった。 ニーレの首には蜂の針のようなものが刺さっており、針のクダは髪の毛のような素材であった。
「こ、これは……アミラか!!!!!」
そう叫び、ニーレは倒れこんだ。 ハイクはドラゴンが止まった隙を狙い、もがき始め、ドラゴンを振りほどき、またもや地面へと落ちていった。
ハイクは目をこすり、「なんだ?」と、この状況に追いつけていなかった。
プスッとニーレの首から針が抜け、クダの長さが収縮していき、現れたのは、身長が百五十センチほどの、目の黒目の中に爬虫類のような縦長い楕円のある、髪をうなじに近い場所で括った女性であった。
「そこの子!今よ!やっちゃいなさい!!」 とその女性はハイクを指さし指示した。
ハイク「あれ?俺THEEEのはずじゃ....」
ソラ「今回私も危なかったからね!!!」
ハイク「い、いやすまん....」




