第三話 村
そして月が太陽へ変わり、周囲が明るくなった頃。
「うぅぅん……よし!!」
ハイクはスッと立ち上がり、目を覚ました。
「ひっさしぶりに朝に起きたな……とりあえず腹が減った……」
そう一人でぶつぶつ言っていたハイクだが。
「グゥゥゥゥーーッグゥ!グゥゥぅー」
ソラはおっさんのようないびきをかきながら眠っていた。
「おい!!!起きろ!!朝だぞ!また歩くぞ!!」
そしてハイクとソラの、起こせるか起こせないかの戦いが一時間にも及び続いた。
スタスタと歩くハイクとソラ。
「おい!なんか家があるぞ!!見ろソラ!これで飯と水が手に入る!やっとだぜ」
ハイクとソラは走ってその家に向かった。 家の前には一人の痩せ細った小汚い老人が薪を切っていた。
「あの……すんません、僕たち遠くから来たんですが、その薪代わりに切っときますんで、食料と水をくれませんかね?」
ハイクは図々しく老人に尋ねた。
「放浪者ですかね?よくこの領地まで歩けましたな。薪は自分でします……がお疲れでしょう、うちにある食料を持ってきましょう。水はそこに川がありますのでご自由にお飲みください」
そう言い、老人は一跨ぎで渡れそうなほどの川を指さし言った。
「あ、あの多分、俺ならこの一日分の薪?十分くらいでできますよ」
ハイクの百七十四センチの身長以上の積みあがった薪を見て、老人に言った。
「ま、見せた方がいいか。よいしょ」
そう言い、老人を薪割りの場所からどかし、薪を素手で割ろうとしたら……まさかの粉々にしてしまった。
バキィン!ゴロロ……
「あ、すんません……ちょっと待ってください」
と申し訳なさそうに言い、家の周りにあった痩せた木をひと蹴りで折り、肩で持ち上げ、まるで包丁でニンジンをスライスするような手際で木を切った。
「あなた……なぜここに?と、とりあえず食料をお持ちします」
老人は額に汗を流しながら家に戻った。
「あざます」
その一言を老人に放ち、木一本分の薪を数分で作った。
「お持ちしました!これでよろしいでしょうか?」
そう言い、痩せ細ったニンジンのようなものとパンを三つずつ持ってきた。
「ありがとうございます!!」
と言い、ハイクとソラはむさぼるように食べた。
(ううぅ……まずい……)という言葉を我慢するハイク。
「うううう!!まっず!こんなん家畜か奴隷が食べるもんじゃん!ぐぅっは!」 とソラは大声で叫んだ。
「おい!お前!その言い方はダメだろ!せっかくくれたのによ!」
ハイクはぺッと吐き出しているソラに、まともめな説教をした。
二人はそのまま川の水を土下座のような姿勢で仲良くズゥゥとすすった。
グらららぁ……ッぺ
と川の水でうがいをして吐き出すソラ。
「おぉぉい!!汚いだろ!!俺の方が下流なんだからきれいな水にしろ!このアホ!」
「はぁ???知らんわ!女が口臭くてどうする?」
「女がこんな生意気だとDVするかもな!!」
「はぁ?このクズ!お前みたいな男が世界で一番嫌いなんだよ!!」
とまたもや喧嘩をするハイクとソラ。
「ところで、お二人はどちらから?なぜこの領地にお越しになられたのですか?」
老人はハイクに向かい口を開いた。
「いやぁ……ようわからないんすよね。なんかこの世界を変える?的な?」
ハイクはやる気のない感じを出しながら返す。
「たしかに世界を変えれるほどの、とてつもない力の持ち主であられるようですな……」
「そうそう!俺は多分、この世界の凶悪な魔物とかを一発で仕留めちゃうかもしれない程の力を持っている!!あ、持っています」
ハイクは自信満々に答えた。
「凶悪な魔物は千年前、大英雄様が倒しておりますが……」
「えぇぇぇあ、そうなんすか……なんか残念だな。じゃあこの世界に倒すべき敵とかいない感じか……なーんだ、これじゃあただ強いだけかー」
とハイクは溜息をつきながら、残念そうに言葉を放った。
「いえ、きっとこの領民皆が倒してほしいと望んでいるであろう者がいます。その名は領主バンス様です」老人は下を向きながらそう言った。
「バンス?領主?そいつ倒せばいいのか?三分で蹴散らしてくるわ!居場所教えてくれ!!」
ハイクはウキウキしながら老人に尋ねた。
「そ、そん……バンス様を倒せるのですか?」
「おん」
「バンス様はこの先の道を歩き、噴水があるのですが、そこを左に進むと大きなお屋敷がございます。そこにいるのですが」
「おっけ!行ってくるわ!そういえば名前聞いてなかったですね。俺はハイクです。で、この小娘はソラ!お名前伺っても?」
「えぇ、構いません。私はルシュクです。この領地には国家に弱者の烙印を勝手に押された者がたくさん来るのですが、私はここで来たものに衣食住を提供し、生命活動に必要な支援をしているものです」
「ほぉ……めっちゃいい人ですね!ルシュクさん!この世は因果応報だ!ルシュクさんにいいことがあることを願います!」
「この活動を続けて六十年くらいが経ちます。人間は皆素晴らしい。階級もない、差別もあってはいけないはずなのです。皆が等しく幸せ手に入れられる社会を、私は作りたい。その一心で日々過ごしているのです。私にわたる幸せは、この領地にいる貧民にわたってほしいものです」
「こんな善人もいたんだな……ま!わかった!そのバンス?とかいうやつ?なんも恨みはないけどぶっ倒してくるわ!待ってってくださいな!」
そう言い、ハイクはウキウキになりながら走ってバンスのもとへ向かった。 ソラも追いかけるようにハイクを追いかけた。
粗末な突貫工事でできたような家が並ぶ村を走り、水の出ていない噴水を左に曲がると、それっぽそうなお屋敷があった。 お屋敷は一戸建て住宅が五個分の大きさだろう。派手な装飾がされており、門、庭、お屋敷と続く。 庭には村とは違い、水の湧き出ている噴水と古びた青年の銅像があった。
「わ!ここに侵入して金目の物盗みたいなぁ~」
と目を輝かせながら、もとんでもないことをいうソラ。
「バカ、盗みとするな。ま、俺も九歳の頃、店から物盗んでアホみたいに殴られた記憶あるけどな」
と経験談からやめろというハイク。 そんな会話をしていたら、門にいた二人の槍を持った警備兵にハイクは声をかけられる。
「おいそこの男、ここで何をしている。すぐに村へ帰れ」
「なにをするって……ここにバンス?いますか?俺をそいつを倒してくれっていう依頼があって……」
ハイクは頭を掻きながら答える。
「な、なに?バンス様を倒しにだと?そんなことはさせられない!」と勢いよく言う警備兵。
「じゃあ仕方ないか……強硬手段だ」
そう小さな声でハイクが言うと、警備兵を手刀で首に一発、もう一人にも一発食らわせ、気絶させた。
ハイク「はい、俺THEEEEEE」
ソラ「はいはい、つよいつよい」
ハイク「んだよ!その態度!」




