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【完結】「死に戻りました」と叫んだけど、王子に嫁いで良かったです  作者: ましろゆきな


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7/10

第七話:告発は許さない。貴様の命を賭けた愛は、公衆の面前で晒される

1. 公務への決定的な妨害工作


 アメリアの献身により、エドワードの命のカウントダウンはわずかに緩やかになっていたが、依然として「法則収斂の閾値」は迫っていた。彼は私室から魔導計算機を通じて執務の一部を再開していたが、彼の焦りは増す一方だった。


 その日、エドワードが発令したはずの「魔導兵器製造に関する緊急勅令」が、下級貴族の管理下にある蒸気機関の製造工場で、突如としてシステム暴走を起こし、勅令が停止するという異常事態が発生した。


 場所は、エドワードが未来の知識に基づいて最優先で進めている、対未来の脅威用兵器の中核パーツを製造する工場だった。


 王子の私室。魔導計算機の前に座るエドワードが、苛立ちを隠せない様子でレオンハルトと交信していた。


「なぜ勅令が停止した? レオンハルト、早急に原因を究明しろ! 時間がないことは分かっているはずだ!」


 レオンハルトは、通信を切った後、ガラスの壁の前に立つアメリアに向き直った。彼のスチールグレイの瞳は、疑念に曇っていた。


「アメリア公爵令嬢。このようなタイミングでのシステム障害は異常です。これは、殿下の『異常な執着による開発への偏重』を快く思わない勢力による妨害の可能性が高い」


「妨害?」アメリアは首を振った。「これは、ただの妨害ではないわ。この勅令の停止は、殿下の『命の期限』にとって最も痛手となる場所を正確に突いている。未来の脅威に対抗する中核パーツを止めれば、殿下の焦りは極限に達する」


 彼女のアンバーの瞳が、鋭く光る。


(エドワードが命を懸けている部分を、どうやって外部の人間が知ったの?)


2. 蒸気配管の中の異物


 アメリアは、すぐにセシリア・フォスター伯爵令嬢の存在に思い至った。そして、あの夜、エドワードが「命を繋ぐ契約」について語った、あの瞬間の記憶。


「レオンハルト!この部屋の配管を調べて! 特に、外部に繋がる細い配管(パイプ)!スチームパンク技術では、蒸気の流れに乗せて情報を運ぶことができる。彼らは、魔導盗聴器を仕掛けたに違いないわ!」


 アメリアの指摘は、レオンハルトのスチールグレイの瞳に衝撃を与えた。彼の知る限り、王子の私室は最高のセキュリティで守られているはずだったが、彼女の「未来の知識を持つ女」としての勘は、無視できなかった。


「……承知いたしました。すぐに技術者を向かわせます」


 数時間後。レオンハルトは、アメリアの指摘通り、王子の私室に繋がる真鍮製の蒸気配管の奥深くから、小型の魔導盗聴器を発見した。それは、精巧なゼンマイと水晶(クリスタル)で構成され、蒸気の振動を音波に変換する、禁制品だった。


 レオンハルトは、悔恨の表情でアメリアに報告した。


「盗聴は事実でした。しかも、この装置の構造から見て、仕掛けたのは宮殿の技術に精通した者です。そして、盗聴が始まったのは、夜会直後から――」


「第六話の夜の、私たちの会話は全て聞かれたのね」アメリアは唇を噛んだ。


「殿下の『命の期限』も、『未来の知識』も、全てセシリアの手に渡ったということだわ」


 レオンハルトの声に、危機感が滲む。「この情報が公になれば、殿下は『狂気』と『国家反逆罪』で王位継承権を剥奪されます。そして、貴女は『国家を欺いた共犯者』として、再び処刑台へ……」


3. 命を懸けた懇願と、愛の依存


 その時、デスクから立ち上がったエドワードが、ふらつきながらガラスの壁に近づいてきた。彼の顔はやつれていたが、その瞳には強い光があった。彼は全てを聞いていたのだ。


「君は……私の命の期限と、セシリアの陰謀を知ったのか」


 アメリアは彼の言葉を遮った。「知りました。だから、もう無茶はしないでください!公務はレオンハルトに任せ、今は命の維持に専念して!」


 エドワードは、悲しげに微笑んだ。


「それはできない。法則の修正力は、私の行動が止まれば、より早く私を消し去るだろう。セシリアに情報を漏らされたのなら、もはや隠し通すことは不可能だ」


 彼は、硝子(ガラス)の壁に手を当て、アメリアの手と重ねる。


「アメリア。盗聴が事実なら、私の『狂気』は貴族社会に広まる。彼らは、君と私が国家の敵だと断罪するだろう。だが、構わない」


 彼は、アメリアのアンバーの瞳を強く見つめた。


「私は君の愛によって、時間法則を打ち破るという目標を変えない。君が私を救うために側にいる。その『愛の証明』こそが、私の命を繋ぐ唯一のエネルギーだ。だから、頼む。私を、君の意志で、愛してくれ」


 エドワードの執着は、今や「支配」ではなく、「命を懸けた懇願」へと変わっていた。アメリアは、彼を突き放すことができず、硝子(ガラス)の壁越しに、彼の手に自分の手を重ねた。


「殿下、私たちは、逃げも隠れもしません」アメリアの瞳に、強い決意が宿った。


「この命を懸けた愛の戦いに、正面から立ち向かいましょう。セシリアの陰謀を、私たちの『真実の愛の物語』として、貴族社会に公開するのです」

11/14次回予告:

『第八話:命の期限と狂気を愛として売る。それが私たちの逆転策』

危機的状況下で、アメリア、エドワード、レオンハルトによる三者の対策会議が始まる。アメリアは、エドワードの「狂気」を逆手に取り、「命を懸けた運命的なロマンス」として貴族社会に公開するという、大胆不敵な奇策を提案する!

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