第十話:「死に戻りました」と叫んだけど、王子に嫁いで良かったです
1. 国民への愛の証明
エドワードによるセシリアの断罪と、彼の命を救った「奇跡のキス」は、瞬く間にアルカディア帝国全土に広まった。貴族たちは、当初の「狂気」という見方から一転、「王子の命を懸けた運命的な愛の試練」として、この劇的な出来事を熱狂的に受け入れた。
婚約式から数日後。エドワードとアメリアは、宮殿のバルコニーに並び立った。下には、彼らの姿を一目見ようと集まったクロノス・ギアの市民たちが、歓声を上げている。
エドワードは、バルコニーの手すりに備え付けられた魔導マイクに声を向けた。彼の声は、もはや切羽詰まったものではなく、王者としての力強さと、一人の男の愛に満ちていた。
「我が愛する国民よ!私の『狂気』は、確かにアメリアへの深すぎる愛が引き起こしたものだ!私は、この愛によって、無慈悲な時間法則の試練を乗り越えた!」
彼はアメリアの手を取り、高く掲げた。
「これより、私と王子妃アメリアは、この命が尽きるまで、アルカディア帝国の平和と、未来への希望のために尽くすことを誓う!」
アッシュブラウンの髪を風になびかせるアメリアの隣で、エドワードのプラチナブロンドが陽光を受けて輝く。彼のアイスブルーの瞳には、もはや冷酷さはなく、彼女への絶対的な信頼という熱だけが宿っていた。
観衆は熱狂し、宮殿を囲むように配置された巨大な蒸気機関が、まるで祝福の咆哮のように轟いた。
彼らの愛は、貴族の合理的契約を超えた、法則をも凌駕するロマンスとして、このスチームパンク世界における新しい希望となったのだ。
2. 新しい未来と、壊れた時計
――そして、数年後。
即位したエドワード王とアメリア王妃の間には、二人の子供が生まれていた。長男はエドワードに似たプラチナブロンド、長女はアメリアに似たアッシュブラウンの髪を持っていた。
宮殿の私室。かつてガラスの壁で隔てられていた部屋は、今は子供たちの遊び場となっていた。エドワードは、以前のような消耗はなく、穏やかに政務をこなしている。アメリアは、彼の隣で、王妃としての公務の書類をチェックしていた。
長男が、遊びの途中で、デスクの上に飾られた壊れた懐中時計の残骸を指さした。真鍮の破片が、クリスタルと共にケースに収められている。それは、あの夜、エドワードの命の鎖として砕け散った「未来の欠片」だった。
「パパ。この壊れた時計、なあに?おもちゃ?」
エドワードは書類を閉じ、穏やかなアイスブルーの瞳で子供たちを見つめた。
「それはな、パパが『ママに会いたい』と強く願いすぎたせいで、壊してしまった『未来への鍵』だよ」
長女が、不思議そうに尋ねる。「ママに会いたい?だって、パパは最初からママと婚約していたんでしょう?なんで壊れるほど願ったの?」
アメリアは、彼が答えに詰まる前に、優しく笑って子供を抱き寄せ、語りかけた。
「ええ。ママとパパはね、一度だけ、お互いを憎み合い、パパがママを処刑してしまうという、間違った未来を歩みかけたことがあったの」
エドワードは、アメリアのアンバーの瞳を見つめた。その瞳は、過去の記憶を全て受け入れている。
「パパは、その間違った未来を直すために、自分の命を賭けて過去へ戻ってきた。そして、君たちのママが、パパの命と、この世界を救ってくれたんだ」
「えー!ママ、パパを救ったの!?すごい!」子供たちが目を輝かせて歓声を上げる。
エドワードは、アメリアの手を取り、その手の甲に、心からの愛と感謝を込めてキスをした。
「君のおかげだ、アメリア。君は、私を殺した男に嫁ぐことになった。最初は、酷い『運命の強制』だったかもしれない」
アメリアは、彼の目を真っ直ぐ見つめ返した。彼の瞳には、もう過去の影はない。
「でも、今は違います。殿下。あの時、『死に戻りました』と叫んだけど、あなたと、この新しい未来に生きられて、本当に良かったと思っています。この命の契約は、私にとって最高の贈り物でした」
窓の外では、クロノス・ギアの巨大な歯車が、規則正しく回る音を立てていた。
その音はもう、運命の冷たい支配ではなく、二人の愛と、新しい家族の時間が刻まれていく、幸せなスチームパンクの世界の鼓動に聞こえた。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
「死に戻り」アメリアと「ヤンデレ」エドワード王子のロマンス物語いかがでしたでしょうか?
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次回作は【11/30(日)22:40】より連載開始します!
タイトル【黒髪の騎士様の婚約解消はお断りです】、
平凡を望む公爵令嬢なのに婚約者が王国最強騎士様だったり、恋のライバルに第二王子が登場したりします。
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