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幸せの宿る場所  作者: 坪原 衣音


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9/11

引越しと蕎麦②

ダンボール箱2つ。

これが、涼音の引越しの荷物の全てだ。

前に住んでいた所の家具家電は、同居していた人の持ち物で、涼音の物と言えば、自分の身の回りの物だけだった。

引越しが楽だった、と言えばそうなのだが、25年生きて来て、自分の物がコレだけだと思うと、寂しいような、惨めなような、何とも言えない気持ちになる。

冷たい目で床に置いてあるダンボールを見つめ、溜め息を一つ着いた。

あまり中を、見たくない。

出来るだけ、引越し前に捨てて来たけれど、それでも持って来た物の中にも、思い出がある。

思い出したく無い思い出の方が、多いのだ。

とは言っても、中の物を整理して、必要な物を買い足さ無ければならない。

気だるそうに、ダンボールを留めているガムテープを剥がし、蓋を開けた。

見慣れた自分の荷物の中に、カップの蕎麦が入っていた。

「そうだ。引越し蕎麦、入れてたんだった。」

どういう由来なのかは知らないけれど、引越しの日には蕎麦を食べると聞いたことがあったので、入れておいた。

「後で食べるかな。」

そう呟いて、荷物を片付けていく。

出来るだけ、感情が動かない内に、終わらせてしまおう。

一度、思い出に飲み込まれてしまうと、きっと浮き上がるのに、時間がかかる。

手を止めないように、一気に片していった。

ダンボールの中身を全て出し、箱を潰していると、風圧で机の上に置いてあった紙切れが一枚、フワリと床に落ちた。

拾い上げて見てみると、さっき大咲から貰った連絡先だ。

(さっきの会話、変なこと言わなかったかな。名前の話してくれた時、別に聞いてないけどとか言っちゃったけど…。感じ悪かったかなぁ。連絡先くれたけど、コレって連絡していいのか?ウザいって思われない?でも、お礼くらい言わなきゃだし。渡されたのに、何も連絡しない方が、失礼じゃない?でもな…)

あ、始まってしまった。

自分の悪い癖だ。誰かとの会話の一人反省会。

考え出すと、止まらなくなってしまう。

クドクド考えながらも、やっぱりお礼を言うために連絡しよう!と、スマホを握りしめた。


『おはようございます☀︎涼音です。さっきは朝ごはんありがとうございました。とても美味しかったです。』


こう打って、ちょっと硬いかなぁ〜とか、絵文字とか、馴れ馴れしい?とか、また考え出し、気が付くと30分以上時間が経っていた。

更に熟考して、ようやく送れた頃には、何だか疲弊して床に寝そべる涼音がいた。

それからまた、あの文面で良かったかな。変な文章じゃなかったかな。とか、ネガティブが止まらない。

頭の中をグルグル、グルグル。

止めたいのに、止め方が分からない。

グルグル考えている間に、大咲から、返信が来た。


『ええよ。美味しく食べてもらえて良かった。母さんに言っとくわ。

で、買い足すもんあったか?』


案外、あっさりした返信に、さっきまでのネガティブは考えすぎだったかな、と安堵して、返信を送った。


『タオルとか、マットレスとか、買いたいのと、食料を買いたいのですが、どっかありますか?

そんなことより、休みの日に車出してもらっていいんですか?

なんか申し訳なくて。』


『ええよ。車なきゃ、どこも行けんし、この辺分からんやろ。

今日は用事ないしええよ〜

1時間後に迎えに行くけど、ええか?』


『大丈夫です。お願いします。ありがとうございます。』


『じゃ、後ほど。』


レスポンスの良い返事に安心して、画面を見る顔が綻ぶ。

それから、画面左上の時計を見て、急いで準備をしなきゃ!と、焦るのだった。

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