不安にコーンチャウダー③
大男の運転する車は、少し走った道沿いのお店の駐車場に止まった。
木造の小さなお店は、かなり年期が入っていて、お世辞にも外観が綺麗だとは言えるものではなかったが、お店の回りは綺麗に整えてられていた。
よく言えば、レトロな定食屋と言う感じだ。
しかし、看板の電気は消えていて、暖簾もお店の中に仕舞われている。
どう見ても『本日の営業は終了しました』なのに、
大男は慣れた手付きで、お店に入って行く。
涼音も、置いて行かれないように、大男の後に続いた。
お店の中は、火の見えるタイプのストーブが焚かれ、とても暖かい。
テーブル席が6つと、カウンターの席が3席の店内には、エプロンを着けた女性と、カウンター席に座る作業着の男性、お店の中央の席に座る2人組の中年の男性たちの4人が居た。
「こんな時間に、どしたの?」
エプロンの女性が、大男に話しかける。
「この人、お腹空いてるんだって。なんか食わしてやって。」
大男がそう言うと、エプロンの女性は、大男にすっぽり隠れてしまっていた涼音に気付いた。
「あんた、ついに人を拾ったの!?」
「いや、拾ったんじゃなくて。歩いてたから車に乗せたの。こんな時間に危ないやろ。」
「ふ〜ん。って言っても、もう閉店してなんも食べるものないよ。」
そう言って、エプロンの女性が鈴音の方を見ると、
疲れからなのか、空腹でなのか、虚な表情の涼音が立っていた。
特に会話に反応するでもなく、ただぼーーっと立っている。
それを見た女性は
「ちょっと待ってな。時間かかるけど、いい?」
と、涼音に確認した。
涼音は、コクリと頷き、大男に促され、入り口近くの奥の席に座った。店内を背に窓の外を、ただぼーっと見ていた。
エプロンの女性は、厨房に入っていった。
バタン、と扉を閉める音や、ゴソゴソ何かを探す音の後に、トントンとリズミカルな音が続き、ジュージュー炒める音が聞こえてきた。
たくさんの音と共に、暖かくいい香りに包まれていると、涼音は、だんだん眠さが増して、コックリコックリうたた寝を始めてしまった。
「お待たせしました。遅くなってごめんね〜。
どうぞ、召し上がれ。」
少し低い落ち着いた声に、ちょっとビックリして、目を覚ますと、目の前には、暖かいスープと、パン、オムレツにはサラダが添えられていた。
「すいません。急に来て、こんなに出していただいて。」
「有り合わせだから、大したもん出来なくて、申し訳ないね。ご飯もなくて、冷凍のパンでねぇ。」
「いえ、ありがとうございます。」
そう言い終わると、涼音は手を合わせた。
「いただきます。」
どのご飯も、キラキラしていて、彩りもとてもキレイだった。
涼音は、その中のスープに、スプーンを入れた。
玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ベーコンの入ったコーンスープとでも言うのだろうか。
ひと匙すくい、口に運んだ。
野菜の旨みと、コーンとミルクの優しい甘さが、口の中いっぱいに広がる。
スープの温かさが、体に沁み渡り、緊張がほぐれていく。
もう一口食べると、目からは涙が溢れていた。
こんなに暖かいご飯、いつぶりだろうか。
最近は、コンビニのお弁当やレトルトばかりを食べていた。
コンビニのご飯やレトルトも美味しいけれど、そこにはない、温かさや優しい味が、体と心に沁みてきた。
(私、不安だったんだな。温もりが欲しかったのかな。)
涼音は、涙を拭いながら、黙々と、ご飯を食べ進めていった。
そんな姿を、エプロン姿の女性は見つめ、優しく微笑んでいた。




