表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 志に異議アリ
8/10





高校二年のときにいじめられていた。

理由は、今でもよくわからない。


LINEグループから外され、無視され、

机には油性ペンで「キモい」と書かれた。

靴がなくなったことも、

体育でわざと当てられたボールの痛みも、

担任に話しても、

「思春期だからな」「気にしすぎかもな」と笑われた。



---


その後、加害者の転校で、いじめは“終わった”。


…周囲は、そう思っていた。



---


「今はもう平和でしょ?」

「前のクラスより今のほうがいいじゃん!」

「忘れて、前向きにいこうよ」


その“優しさ風の言葉”が、

なにより鋭かった。



---


彼女――真帆は、今、大学のカフェでバイトをしている。

接客は得意。

明るい笑顔は、「もういじめは終わった人」の顔。


でも、レジの横で、後輩の笑い声が聞こえると、

脳が勝手に“昔の音”を再生する。


誰かがヒソヒソ話す声、

自分の名前だけが浮いて聞こえる空気、

心がね、ずっと警戒してるんだ。

平気なふりをした筋肉だけが、どんどん鍛えられていった。



---


ある日、店に高校の同級生が来た。

「真帆ちゃん? 久しぶり〜!元気してた? あの頃はいろいろあったけど、

 結果的にあんた強くなったよねぇ!あたしもいろいろ悩んでたんだ〜笑」


にこにこ笑うその人の顔に、

真帆は思わず“笑顔”を貼りつけた。

手が勝手に震えていた。

でも、声はちゃんと出た。

「うん、いろいろあったね。今は元気だよ」



---


夜、帰宅後のシャワー。

水の音にまぎれて、

こぼれたのは、久しぶりの泪だった。



---


いじめは、もう終わった?

じゃあ、この夢は?

夜中に目が覚めるのは?

笑ったあとに吐きそうになるのは?



---


あの日、教室で捨てられた心は、

まだ拾われてない。



---


傷は、終わってくれない。


「忘れていいよ」って言われるたびに、

思い出すように、泪がにじむ。



---


だから今日も、誰にも見られない場所で

泪がこぼれる。

それだけは、まだ終わってない証拠だった。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ