かかあ天下の真相は
『†要請†瑞智 紗貴Ⅱ』と、『 †夕飯†瑞智 桜Ⅱ 』の間に起こったであろう小話です♪
若干、きわどい表現有り。苦手な方は回れ右ッ!!
緋岐と紗貴の関係を尋ねたら、大体返ってくる言葉は「将来かかあ天下」「尻に敷かれる」こんなものだろう。
それを耳にしたところで、緋岐は悪い気はしない。
むしろ……
※※※※※※
とにかく、紗貴は自転車で急いでいた。春先の心地よい風に吹かれながら、優雅にサイクリング……というわけでは決してない。
学校で内田教諭から見せられた、笑撃……もとい、衝撃の弟の解答用紙。
まさか、そのやり直しもせずに、謎だか、疑問だか知らないが、フラフラと出歩く弟に、堪忍袋の緒はもうブチ切れ状態だ。
だがしかし、先手必勝!
(由貴の行動パターンなんて、まるっとお見通しなのよッ)
心の中で、高笑いだ。
自転車を無心にこぎ続けること5分程度で、目的の空き地にたどり着いた。
もちろん、ここでも偽装工作に抜かりはない。
万が一にも、由貴に悟られないよう、本命の場所には真っすぐ向かわず。ちょっと離れたところに自転車を停めるという徹底っぷりだ。
弟の野生の勘を侮って、何度逃げられるという辛苦を舐めさせられたことかッ……知らずに、拳を握りしめる。
そこから、全速力で……もちろん、付近に弟の気配がないか、細心の注意を払いながら、一気に目的のアパートの階段を駆け上がると、インターフォンを鳴らす……前に、ドアが開いてそのまま中に引き寄せられた。
「なんでわかったの緋岐くん。って、ちょっと離れッ!!?」
離れて……という言葉は、緋岐に飲まれてしまった。腕の中から見上げて来る紗貴の口を塞いでしまったのだ。
—— と、紗貴はプチパニックだ。
(待って、私……さっきまで自転車こいで、走って上がってって……汗かいてッ……)
どんなに男勝りだとか、豪快だとか言われていても、そこは年頃の女の子。気にならないわけがない。
ちょっと雰囲気に流されかかったが、ドンと力いっぱい押し返した。
「あのね!!私今、すっごい汗かいてるのッ……べたべたしてるから、ダメッ!!!」
付き合い始めてもう随分と立つのに、この初々しい反応が緋岐からすると可愛くてたまらないのだが、それを言うと照れが天元突破してしまい、そのまま機嫌を損ねてしまうという一連の流れにたどりつくので、苦笑でごまかす。
「わかったよ。とりあえず、中に入れよ」
「お邪魔シマス」
言いながら、緋岐に促されるまま、中に入る。紗貴的には汗が気になって仕方がないのだが、緋岐にしてみればこの状況は上げ膳据え膳でしかない。
ショートパンツにストッキング……おまけに、春先とあって上も魅惑に満ちている。なんと薄手のカーディガンの下はこれまた薄手のタンクトップで鎖骨から下のきわどいところが丸見えという、まさかのご褒美に、手を合わさずにはいられない。
いつものお騒がせお馬鹿コンビに、今日ほど感謝した日があっただろうか。
「とりあえず、お茶飲むだろ?」
なんて言いながら準備する間も、ラグの上に座っている紗貴から目が離せない。高いところで結わえた髪からチラリと覗くうなじがしっとりと汗ばんでいて、なんともなまめかしい。
「ありがと。ホント、突然ごめんね?逃げられちゃって……見てよ、この回答ッ!!!ばっかじゃないの!?」
だがしかし、紗貴にしてみればそれどころではない。背負って来たナップサックから、弟のテスト一式を取り出してローテーブルに広げる。
お茶を前に置きながら、その回答を手に取って、緋岐は頬を引く付かせた。なるほど、これはない。
「このテストで出た範囲と、この宿題は……由貴がここに来た時点で俺が責任もって叩き込む」
「ありがとう!流石、緋岐くん!!」
ガバッと、感無量と言わんばかりに手を握りしめて来る紗貴は、もう無防備としか言いようがなくて。
するりとその握りしめられた自身の手を抜き取ると、紗貴の耳朶からうなじまで、つと指でなぞる。
「!?……ちょ、と……緋岐くん……?」
くすぐったいやら、恥ずかしいやら、先ほどまでの勢いはどこへやら。真っ赤になると、および腰になって若干遠のきかかった紗貴を、緋岐は逃すまいと反対の手を腰に回して退路を断つ。
「髪、結構伸びたよな……」
言いながら、ゴムを外してしまえば、ふわりとくせ毛が落ちる。緋岐を誘うような、何とも言えない甘い香りに抗うことなくそっと引き寄せると、紗貴の顔が真っ赤に染まった。
「ああああのね、さっきも言った通り、私、今……あッ……」
—— 汗かいて……とかなんとか言いたかったのだろうが、とりあえず塞いでしまう。
もう、何度もしているはずなのに、慣れることなく必死に逃げようとする紗貴を、だが緋岐が逃がすわけがなくて。がっちりホールドされたまま、緋岐にされるがままに貪りつくされた紗貴は、開放されたころには、新しい空気を求めてはくはくと息をすることしかできなくなっていた。
くたり……と、緋岐に身体を預けた状態のまま、恨めしそうに見あげる。
「緋岐くんの……変態ッ……」
荒い息の合間に、涙目のまま言い放てば、それはもういい笑顔が返ってきて、紗貴は自分が墓穴を掘ったことを悟った。
潤んだ瞳に、火照った身体……それが、たとえ自転車を漕いだ後に全力疾走したからであったとしても、そんなの関係ない。しっとりと汗ばんだ肢体は、それはもう蠱惑的で。
紗貴がどんなに睨みつけようと、その潤んだ瞳ではただ誘っている様にいか見えない。
「紗貴、やっぱり世の中、等価交換だと思うんだよ。俺はこれから由貴相手に頑張るわけだから……ご褒美、必要だよな?」
お伺いを立てているようで、全く立てられていない。身の危険を感じた紗貴がそろりと身体を離した瞬間、スルリと紗貴の肩からカーディガンが滑り落される。そのカーディガンを拾おうと伸ばされた細い手首をやんわりと遮るように握れば、ヒクリと紗貴の身体が小さく跳ねた。
誘われるまま、紗貴の鎖骨に口を寄せる。
いつの間にか、緋岐の膝の上に乗せられているのだが、プチパニックに陥っている紗貴は自身の現状に気づけず、渾身の抵抗といわんばかりに緋岐の頭を両腕で掴んで、必死に自分から遠ざけようとするのだが、もはや力も入っておらず、ただいたずらに緋岐を煽っているだけだ。
あまつさえ、緋岐から与えられる甘やかな刺激に声が出そうになるのを懸命にかみ殺しているのだが、その様すら今の緋岐には毒にしかならない。
やっとの思いで緋岐を自身から引き離すと、息を整えて無意味な抗議の声を上げる。
「い、いやいや……あのね、緋岐くん……いつ、由貴来るか判らないからね?私、そろそろお暇ッ……ひゃッ!!?」
(ホント、今更なんでこんなに照れるかな)
内心溜息を吐きながら、ひょいと紗貴を抱え上げると、向かう先は一択だ。どんなに鈍い紗貴でも、そこは判る。
(判る、けどッ……)
何とか逃げようとする紗貴に、余裕の緋岐。その攻防はそう長くは続かず……いつものように、紗貴が押し負ける……どころか、緋岐の変なスイッチを入れてしまうのだが、それはまた別の話だ。
結局、紗貴が目を覚ましたのは夕暮れ時になってから。
疲れ果てて眠ってしまった紗貴を起こしに来た緋岐に、真っ赤になりながら問い詰めたのは、言うまでもない。
「由貴、来たんでしょ!?私がいるってバレてないわよね!!?」
紗貴にとっては一大事だ。姉として沽券を守り切れるかどうかの瀬戸際なのだから。
だがしかし、緋岐にしてみれば、正直どうでもいい問題だ。むしろ、弟であろうと、なんでろうと、この紗貴の姿を見せるなんて言語道断。絶対にあり得ないことなのだ。
「大丈夫。ここの部屋の扉は締め切ってたし、紗貴、ぐっすりだったから……でも、酷くないか?ここで、他の男の話?」
—— ギシッ……
ベットが軋む音に、再度紗貴が真っ赤に染まる。
「あのね、他の男って……弟よ?由貴よ!?」
否定すればするほど、煽ることを紗貴はまだ学習できていなくて。
熱を孕んだ緋岐から逃げられるわけもなく。
結局、紗貴が家に帰ることが出来たのは、17時を大幅に回ってからだった。
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そう、「かかあ天下」だとか「尻に敷かれる」だとか、言いたいやつには言わせておけばいい。というのが、緋岐の包み隠さない本心。
(むしろ、可愛いことは、俺だけ知っておけばいいこと)
強いて言うなら、惚れた弱みを握られているだけ、なのだ。
END.
全年齢対象ですから!!あとは、想像にお任せしますッ!!!!(逃走)




