†終幕†全員集合
爽やかな朝……昨晩、あんな話を聞いたからだろうか……どこか優しく見えた。
昨日までは羨ましかったうぐいすの囀りさえ、今は愛おしい。
「頑張って上玉引っ掛けてイチャコラしろよ」
遠くで今日もうぐいすが囀りの練習に勤しむ歌が聞こえる。
「おはよう」
そんな黄昏れる由貴に、後ろから声が掛かる。
「おはよ、緋岐先輩」
どこか大人びた微笑を返され、緋岐は思わずたじろいだ。
「……熱でも出たか?」
そんな的外れな気遣いに由貴はふっと哀愁を帯びた笑みを空へと向ける。
「先輩……俺は今センチメートルな気分なんだよ……」
「ああ、安心したよ……どこもおかしくない。馬鹿なお前のままだ」
一人納得がいったらしく、緋岐は頷く。隣を歩く将が苦笑を漏らす。
「センチメートルじゃなくて、センチメンタルって言いたかったんだよね、きっと」
そんな将の言葉に紗貴が付け加える。
「センチメートルな思いって何計ってんのかしらね……馬鹿だわー……」
身も蓋も無いが的確な言葉である。
「……あれ?さっちゃん首、何かに刺されたの?赤くなってるよ?」
風に吹かれて一瞬見えた首筋に咲く赤い花。
どう見てもそれは虫刺されなのだが……
「!?」
ばっと紗貴は首筋を手で隠す。
視線を感じて顔を向ければ、そこにはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた緋岐が居て……
「何か、質の悪い害虫に刺されたみたいなのっ!」
思わずムキになって叫んでしまったのだった。
「何を往来で叫んでるんだよ姉ちゃん……」
少し先を歩いていた由貴は、驚いたように目をしばたたかせた。
事情を悟った将の顔は、ほんのり赤い。
「ムッツリ助平が何か良からぬ事をしたんだろう?」
いきなり核心を突く言葉に由貴、紗貴、緋岐そして将の四人は足を止めて振り返った。そこには仁王立ちの蘭子が立っており、明らかに緋岐を睨み付けている。一瞬、緋岐と蘭子の間に火花が散る。
だがそんな緊迫した空気は30秒と持たなかった。
「ゆぅきぃ~!!!!!!」
蘭子の更に後方から土煙が立ち上る。凄まじい形相の敦が、有り得ない勢いで迫って来たのだ。
「うわああぁあぁぁあ!!」
条件反射で駆け出す由貴。
「待てこらぁ!昨日は良くも見捨てたなぁ!!!!!」
オリンピック選手もびっくりな速さで駆け抜けた由貴と敦を半ば呆然と見送る面々。
「……何があったんだ?」
将が思わず呟いた。
「昨日、少し敦に手伝ってもらったんや」
―― うわっ!?
音も立てず
気配も消して
突如ぬっと現れた後輩に、思わず目を見開いた。
「………蕎、おはよう……」
……一体何の手伝いを?そんな問いを溜飲して当たり障りのない挨拶を口にする緋岐。
賢明な判断と言えよう。好奇心は、時として身を滅ぼすものだ。
「そっ……そういえば謎は解決した?」
将がぎこちなく紗貴に尋ねる。
「うん、まあ……私も始めて知った事が沢山あったし……」
紗貴の言葉に皆興味津々だ。
「実は“辰”ってね……」
そう言って、昨夜仕入れた祖父の昔話を話して聞かせたのだった。
※※※※※※
「たっ……“竜の落とし子”にそんな悲話があったなんて……」
思わず涙ぐむ将に、どこまでも冷静な三人。
「ホンマかいな」
「……胡散くせー……」
「大変不本意だが、お前に一票だヘタレ」
良くも悪くも妙にリアリストなのだ。
「……で、何で拗ねた顔してるんだ?」
蘭子が誰にともなしに尋ねれば、蕎が口を開いた。
「捨てられたんで拗ねはるんやろ……」
―― そう……
結局真相は闇の中。
―――伝説―――
それは「かたりごと」を中核にもつ、古くから伝え来った口承文学の事である。
語り継がれた話は月日と共に
姿を変え
形を変え
今に伝わる。
真実は偽りに埋もれ
何人にも暴かれぬまま
静かに時のゆりかごで眠り続けるのだ。
―― だからこそ……
信じた事こそが真実であり
―― そして……
マコトの事は個々の中にしか存在し得ないのだ。
END
はいっ!というわけで、ここまでお付き合い頂きましてありがとうございます。
はじめましての方も、こんにちは。
今回のお題は【十二支】ということで、色んな豆知識を散らばめてみました♪
豆知識ばかりでなく、罠も沢山仕掛けてみたので騙されないように注意して下さいねっ!
担当は“辰”です。少しでも「ぷふっ」と噴き出して貰えたら、大成功です☆
今回の目標は「如何に馬鹿でくだらない話を真面目に書くか」でした。
少しは失笑して貰えましたか?余りのふざけっぷりに怒らないで下さいねっ!
あなたの息抜きに少しでも貢献出来たなら嬉しい限りですwww
感想でも愚痴でも何か頂ければ、飛んで跳ねて喜びます♪
では、またいつか、何処かで会える日を夢みて……




