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干支に纏わるエトセトラ  作者: 梨藍
とある少年の冒険
10/13

†夕飯†瑞智 桜Ⅱ

意気消沈な由貴の頭上を、カラスの群れが山へと帰り行く。気付けば今日も、夕焼けこやけの茜空だ。長い影を背にとぼとぼと歩く由貴は、どこか哀愁漂っている。


ナップサックがやけに重い。家へと続く石段も、今日はやけに重く感じる。


「ただいまぁ~……」


ガラガラと玄関を開けながら帰宅を知らせれば……


「あら、ゆんちゃんおかえりやす」


そんな母の声が出迎えてくれて、何だかホッとする。出迎えに出て来た母……桜は、いつもの和装だ。


「買って来てくれはった?」


朗らかに尋ねて来る桜に、由貴は素直に頷く。


「買って来たよ。何か肉屋さんがオマケにベーコンくれた」


そんな息子のどこか意気消沈した姿に、桜は少し考えてから笑みを深めた。


「ゆんちゃん、手伝ってくれへん?」

「え?いいけど……」

「宿題、まだ終わってないんやったら、無理せんでええんよ?」


母の言葉に由貴は首を横に振る。


「先輩んとこで済ませて来たし……」

「せやったら、一緒に作ろか。目玉ハンバーグ」


優しく息子の肩を二度程叩いて先へと促す。そうこうしている内に、出掛けていたらしい紗貴も帰って来た。


「母さん手伝うよ」


弟が沈んでいる理由を知っている(というよりも元凶の)紗貴は、思わず苦笑を漏らしながら台所に入った。こうして、親子三人仲良しクッキングが始まったのだった。


瑞智家の日常風景である。


「へぇ~……そんな訳があったんだねぇ」


紗貴はキャベツを刻みながら由貴に感心した様に頷いた。


「だよなぁ~……干支にこんな裏話があったなんてさぁ……」


対する由貴も、先程までの憔悴っぷりが嘘の様に元気いっぱいだ。ハンバーグのタネを勢いよくこねている。


「せやかて……辰は架空ん生物とちゃうやろ?」


桜は和え物を作りなから朗らかに言う。


「「えっ!?」」


驚きの声を上げる子供達。桜は相変わらずの調子でその声に応える。


「辰っちゅうんは“竜の落とし子”の事やゆう噂もあるんよ」


桜の言葉に思わず納得の二人。


「なるほどね……“子丑寅卯竜の落とし子巳”……これじゃ語呂悪いから“竜”って略したのねっ!」


紗貴の言葉に由貴が続く。


「ネズミだって“ね”って略されてるしな!」


こうして円満解決したかと思われたのだが……


「そういや姉ちゃん……首筋どうしたんだ?」

「え?」


―― 何言ってんの……


そう続く筈だった言葉は悲鳴に取って代わった。


「わああぁぁあぁあっ!」


そんな紗貴の叫びに由貴の絶叫が重なる。由貴の足元には包丁が突き刺さっている。


「姉ちゃん俺殺す気か!?」


危機一髪……ハンバーグのタネごと飛びのいた由貴は抗議の声を上げた。


だが、紗貴も必死だ。


「あんたが変な事言うからでしょ!?」

「いやだって姉ちゃん首筋に虫刺され……」

「煩い煩い煩い!」


何故かそう叫ぶ紗貴の顔は真っ赤だ。

心の中でどんなに相手を罵っても届く訳がないのだが……

恥ずかしいやら頭に来るやら……言わずにはおれない。


「緋岐くんの……馬鹿野郎!」

「……?」


由貴は訳が判らずハテナ顔だ。


桜は何やら悟ったらしく「あらあら」と呟くとクスクスと微笑みを零したのだった。


NEXT panelist→祖父

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