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ガテン系の女 2 娯より、楽より、修業中   作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
5/43

松茸を1本 5




『プラスター工房ムラオカ』から暫く車を走らせると、千香良は、強い西陽に目を眇めた。

 夕方の、この辺りには毎度、困っている。

 けれども、返って運転に集中出来て良いかも知れない。

 

 慣れとは恐ろしいもので、千香良は最近、運転が漫然。

 今も、丁稚は、どの現場の管理をしているのだろう……なんて、考えていた。

 どうせ、家に着く頃には忘れてしまう些細な気持ち。

 頭に浮かんだ意味すら分らない。

 

 龍太の言っていたことなんて、丁稚にしてみれば耳を掠めただけ。

 千香良は、実行には移さないと思っている。


 それでも、無意識に期待をしているのだろうか……

 刺激が欲しい気持ちは否めない。

 

 松茸狩りのシーズンは11月10日まで。

 終わってしまえば、また、マンネリの日常が始まるのだ。

 

 理不尽な出来事で、高校中退の憂き目にあってしまった千香良だが、その、お陰で左官の仕事に出会えた。

 結果オーライだと思っている。

 

 それに、通信制高校で高校卒業資格も取得済み。

 今後、建設業に必要な資格を取得するにも問題ないはずだ。

 

 しかし、誰にでも倦怠期はある。

 最近、仕事が惰性になっている。

 そして、何より、プライベートが退屈だ。


 元より、千香良には友人が少ない。

 そのせいか、元彼の三上とは別れた後も友人としての付き合を続けている。

 そして、それに付随して彼の従姉妹の弓や、友人達も遊び仲間のまま。

 けれども、やはり、社会人の千香良と大学生の彼等では、隔てが出てきた。

 特に医大生の三上は3年生になってから、遊ぶ間もなく学業に追われている。

 接点の三上が抜けては、他の人達との付き合いもフェイドアウトで決まりだろう。


 すると、秋の日は釣瓶落とし。

 西日が遠ざかると、空はアッ言う間に暮れる。

 

 千香良は、又、考え事をしている、自分にハットした。

 気が付くと、家はもう直ぐそこだ。


 BGMは『あいみょん』

 積極的になりきれない女の子の焦れったさ、を歌っている。

 分る気もするが、千香良は、それ程までに誰かを好きになった事がない。

 

 10代、20代の恋なんて刹那的。

 龍太に対する気持ちも…

 三上の対する気持ちも……

 思い起こせば気の迷い、何だったのだろう?と思う。

 

 そして、千香良ゆっくりと、自宅の駐車スペースに車を入れた。

 

「あら、沢山」


 待ち構えていたのだろう。

 千香良が帰るなり、母がエコバッグを覗き込んできた。


「乙葵さんが、賄いを楽しみにしているって、龍兄は店に5本やれ、って言うけどご飯を炊くだけなら、4本で足りるよね」


「そうね。でも、後の2本は?」


 松茸が絡むと、母も人が代わる。

 欲張りでしょうがない。


「榊さん、にあげる」


「美々ちゃん、じゃなくて?」


「だって、美々にあげるとお兄ちゃんと2人で食べちゃうもん」


 美々は榊の妹だが、千香良の高校の同級生でもある。

 高校を中退した千香良は、高校での仲良しグループとは疎遠になっていた。

 けれども、現場で榊に会ったお陰で、美々との仲だけは復活。

 今では親友と言える間柄になっている。

 

 そればかりか、兄と榊は以前から、趣味のドール繋がりの知人。

 加えて言えば、兄のドールの名前は美々。

 当然、兄と美々も仲良くなった。

 千香良は兄と美々に運命を感じている。

 しかし、当人同士は至って淡泊。

 気の置けない友人らしい。


「松茸って、その1本で揉めるのよ…」


 母の瞳が恨めしそうだ。

 千香良は、今更ながら、丁稚にあげた1本を悔やんだ。

 

 

 

 


 

こんにちは咲良ヤヨイです。


『ガテン系の女、 愛より、恋より……』を読んで下さった方も、未読の方も『ガテン系女 2 娯より、楽より、修業中』を見つけて下さってありがとうございます。


毎日の更新よりも、丁寧さを重視したいと思います。

投稿がイレギュラーになりますが、ご理解ください。


でも……

出来るだけ、頑張りますね。

よろしく、お願いします。

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