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ガテン系の女 2 娯より、楽より、修業中   作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
2/43

松茸を1本 2

 


 

 「いや……」

 

 丁稚は釈然としない様子で、首を傾げながらも、松茸を受け取った。

 それも、そのはず、先程まで熱心に探していた場所だ。


 内弁慶で人見知りの千香良は自分の態度がおこがましくて、照れ臭い。

 用が済むと、黙々と残りの松茸をエコバックに納めていく。

 

 丁稚も、作業着のポケットをまさぐると、コンビニ袋を取り出して茸を入れている。

 どうやら、千香良と同じくコミュニケーション能力が低いようだ。

 ペコリと頭を下げると、言葉もなく、その場を離れた。


 千香良としても、下手に話し掛けられるよりも、立ち去って貰った方が有り難い。

 現場監督相手に気の利いた話なんて出来ない。

 

 しかし、千香良はほくそ笑んでいる。

 

 丁稚は間近で見ても、没個性で印象が薄かった。

 けれども、忘れないだろう。

 お互いに、不器用な態度だったが、以心伝心、何だか分る。

 千香良は、より一層の親近感を感じていた。


 そして、入山して2時間程。

 毎回、電力会社の鉄塔が建つ平地を昼ご飯の場所としている。

 

 皆、それぞれ、コンビニで買ってきた、おにぎりを食べながら、談笑している。

 

 千香良も今日は、コンビニでお昼を買ってきた。

 休みの日まで、母にお弁当を作って貰うのは申し訳ない。

 それに、話題のメロンパンが気になっていたので、コンビニで、買い物がしたいと思ったのだ。


「千香良、袋が膨らんでいるけど、採れたのか?」


 龍太が目聡く、聞いてきた。


「うん」


 千香良は努めて無表情を装うが、無理。

 口元が緩んでしまう。


「見せてみろ」


 龍太の言葉に、千香良はエコバックを差し出した。


「お前は……相変わらずだな……」


「えっ、採れたんですか?」


 現場監督達が身を乗り出して、食いついた来た。

 やはり、未だ誰も採っていないようだ。

 

 今年は厳しい残暑に加えて、9月の降水量が例年に比べて極端に少なかった為に松茸が不作。

 ただでさえ稀少な松茸を、初心者の監督達が見つけられるはずもない。


「結構、デカイのが6本、あるわ」


 龍太はエコバックの口を広げて、数を口にする。

 

「凄いな……」


 現場監督達は口々に感嘆を漏らす。


「親方と龍兄は?」


「あぁ、まだ駄目だな……」


 けれども、千香良は知っている。

 もう少し、行った所に4本。

 まだ、小さかったのを採らずに残してある。

 

「そういえば……丁稚も袋を手にしているじゃないか」


「僕、貰いました……」


 監督達が一斉に立ち上がり、丁稚のから袋を取り上げようとしていた……  

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