チート炸裂
お母さまは粗相がないように、と連日ドレス屋やら宝石屋を呼びつけ、ぐるぐる巻きにされる日々が続いたけど、記憶が戻ってから(記憶が増えた感じ?)この世界のドレスがなぜか滑稽に見えて仕方なくなった。だって、私からしたらコスプレのそれなんですもの。せっかくオーダーしてもらえるのにこんなく〇〇さいドレスも宝石も付けたくない・・・。必死に前世の記憶を手繰り寄せ、シャ〇ルだとか〇オールだとかのハイブランドのドレスや時折テレビで見かけたアイドルの衣装を思い出し、絵にかく。この世界にはチェックやストライプ、水玉なんかのパターンが存在しなかった。柄と言えば、重厚なバラとかカーテンみたいな柄だった。コルセットもぎゅうぎゅう締め付けるものじゃなくて装飾としてのもの、スカートを膨らませる場合もワイヤーじゃなくパニエにしてもらって足首までの長さにしてもらった(これ以上短いとはしたないらしい。徐々に短くしていくつもりだけど)。
これで走っても裾も踏まないし、安全だ。靴は靴屋と何度何度も話をして試作に試作を重ねようやくスニーカーを手に入れた。底を上げてエレガントでかわいいものに。なぜなら前世でヒールを履いていて外反母趾になったから。あれは私には無理だった。アクセサリーもゴテゴテしたものではなく、自分好みのものに(大抵記憶を辿って良い所どりしたんだけど・・)。お化粧品もメイクも然り。スキンケアの概念がなかったこの世界で潤いが大事だと熱弁し、保湿化粧品を開発(いわゆる自然派化粧品、へちま水とかみたいなもの)筆職人に頼んでメイク用に筆を作らせたり、綿花から化粧用コットンを作らせたりした。そして、スキのないマリーがそれに目を付け、お母さまと二人、ドレスや宝石を身にまとい、社交し、PRしまくってから領の生産ラインに乗せ売り出し、ますます領は栄えだした。その際、マリーが将来のために、とアイディア料をくれることとなり、私の資産も順調に増え始めた。
「ごくつぶしだったジューンがな・・・」
お父さまひどすぎやしませんか。でもまぁ、実際ごくつぶしだった。社交も適当だったし、勉強もそこまでできるわけじゃない、特技だってそんなない。料理は好きだけど、貴族には必要ない。気もそこまで回らないから社交界を渡っていくには心もとない。ただ、時折、違和感を感じられるだけ。お父さまが言うには魔力は多いけど、使うすべがないから毛穴から漏れ出るんじゃないかって。どこまでもひどいお父さまだ。でもそのおかげで我が領は飢饉にもならず済んだこともあったのだ。とはいえ、私が違和感を感じ、その裏付けを取ったのはお父さまとマリーだけど。そんなごくつぶしが返上出来て私としても万々歳だ。日本人たるもの、受けた恩は返さなければ。
もちろん、全て私の施策だとは伏せている。(とにかく通行人Aなのだ、私は)
いよいよ、第二妃の選定が始まった。