お前が城へ行くのだ
「ジューン、そこに座りなさい」
お父さまに促され、マリーの横に座る。ええ、もう何、怖いんだけど!
「お父さま、あ、あの・・」
「ジューン、この間、国王の一人息子が結婚したのは覚えているな?」
「覚えております。セルリアン家から、メアリーさまがお輿入れされたのですよね」
「そうだ。そして、半年が経ったので、そろそろ第二妃の選定が行われる」
半年前に盛大な式があって、私たちも貴族として参列した。
我が国は、公爵家が2つあり、その公爵家から代ごとに第一妃を出すことになっている。
それは絶対で、その代わり、子供は第一妃は産まない。
完全なる政略結婚でどうしても産みたい場合は産んでもいいけどそれは公爵家で責任を持って育て、政治的な立場には置かないと言明されている。(この場合、種も王家じゃないところかた調達するんですって。え、意味不明。)とにかく、第一妃は国王と共に立つ、戦友のような立場なのだそうだ。
なので必然的に第二妃が子供を産むために登場するわけだけど。
これまたややこしくて、第二妃が生んだ子供は公には第一妃が産んだってことになって政治的側面の教育は第一妃が担うそうだ。そして第二妃の実家が外戚として力を振えることはなく、無駄な派閥争いなんかも起こらないって言われている。もし第二妃が産めなかった場合は、第三妃が迎えられる。流石にお輿入れの前に審査が(どんな審査やねん)入るせいか、第二妃がほぼ産んでいて第三妃までは滅多にないらしい。
「もうですか、早いんですのね」
「今から選定しても少なくとも半年は掛かるからな、それでだ。ジューン。ミディアム家にも第二妃の打診が来たのだ」
・・・。へー。マリーが行くのかな、かわいそうに。
「マリーならきっと勤め上げてくれると思いますわ」
「・・・ジューンよ、候補はお前だよ」
・・・え?
「え?」
「そもそもジューンは領の仕事をマリーから引き継ぎ、領を安定運用、繁栄させることができるのか?そして自分で伴侶を調達できるのか?」
これが実父のセリフだろうか。グッと詰まった私・・。
確かにマリーはよくできた子でお父さまの仕事を小さいころから手伝い、何なら隣の領の中堅貴族の次男坊と早々に婚約まで結んでいる。
「お姉さま、大丈夫です。そもそも第二妃になるまでに色々関門があるそうですし。決まるもどうもまだ確定したわけではないと思いますよ。それになんだかその選定も面白そうじゃないですか。」
確かにタイミングが合わなければこんな面白いことに巡り合うなんてない。
「わかりました、お父さま、選定を受けます。」
お母さまはずっと真っ青な顔をして黙っている。
「お母さま、大丈夫ですか」
「ジューン、ああ、かわいいジューン、お願いだから目立たず、騒がず、通行人Aみたいな感じで粗相せず帰ってきてね、お母さまはいやよ、家族全員首と胴が離れるのは・・・」
「お母さま・・・!ひどい」
いや、これもお母さまなりの励まし・・・いや、本音であろう。この人は良いにつけ悪いにつけ、お姫様なのだ。私はオオボケの部分だけは母似、それ以外は父似で、マリーは儚いお母さまの形をして中身はしっかり者のお父さまにそっくりなのだ。
「とにかく、選定の内容に関してはかん口令が敷かれており全くわからない。とはいえ、何も準備をしないわけにはいかない。ジューン、とにかく、粗相がないようにだけしてくれ」
謎の励まし?命令を受け、私は書斎を後にした。