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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
五章
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12、大人しくは待たない


「ヘリオ、何処へ行くの?」

「町の方にちょっとな」


そういえば、魔力を扱う練習を始めてからヘリオは私の傍に居続けていた。それまでは頻繁に出掛けていたのに。

もしかしたら、私の……為?

どうかしらね。何を考えているか解らないところがあるもの。

傍に居てくれたことに安心はしていたけれど。


「私も……行きたい」


一月、また経ってしまっている。

情報は遅れて届くし、そろそろガンの方にも何かあるかもしれない。すでにあったかもしれないし……。

その、新しい婚約者とのことも、気になる。


魔力が多少なり使える様になったので、少しずつでも動いていきたかった。

動く為にはやはり情報が必要。

情報は武器になるものだから。


「欲しいものがあるなら、代わりに買ってきてやるけど?」

「え……」


どうしよう。

ヘリオには直接私達の事情を話してはいないけれど、町に頻繁に行っていた様だから、私達のこともたぶん解っているわよね。

それでも、気にせず接してくれているのだとは思う。

魔力の使い方を教えてくれる様になってから、前より親しくなれたとも思うし、頼めば、聞いてきてくれるだろう。

一番知りたいのはガンのこと。

でも、ガンのことを話すのは……なんだか気恥ずかしさがある。

ヘリオなら、揶揄ってきそうじゃない?


悩んでいたら……。


「言い難いものか?……なら、一緒に行くか」

「良いの?」

「行きたいんだろ?」

「えぇ。えぇ!少し待っていて」

「何処に行く気だよ」

お兄様(テオ)に言ってくるの」

「これだからお姫様は……言ったら反対されんぞ」

「え」


え、それは困るわ!


「え、じゃねぇっての。あの過保護が許可すると思う方が可笑しい」

「あ、そうかしら?」

「そうなんだよ……面倒臭いから、行くのは昼過ぎな。アイツは狩りに出るだろうから、その後にすんぞ」

「……わかったわ」


ヘリオは準備があるからと何処へ行ってしまった。

一人で行かないでよ!と念押しておいたけれど、そのまま町に行ってない?大丈夫?


信じるしかないので魔力維持をしながら、いつも通りに薪を拾い、リュミの手伝いをして待ち。


昼前には何事も無く帰って来たヘリオも含めて四人で昼を食べ、その後、お兄様は村の者数人と狩りに出掛けた。


「何処の町に行くの?」

「色々仕入れるなら、ジルオロールだな」


氷潔都市のジルオロールは、“扉”のある、北で最も大きい都市のこと。

村から行くと、崖や谷を越えるのに迂回するか、お金を払い魔道具で運んでもらうかしなくてはならない。迂回したら三日は掛かるのだけれど。


「遠過ぎない?」

「乗り物用意した片道半時も掛からねぇって」


乗り物……雪の中でも走れるものなら、雪車(そり)かしら?それでも、日帰りは難しい。

行くと決めたのだから時間が掛かっても行くわ。

お兄様には後で叱られましょう。ヘリオと共に。


森に入る。

向かったのは、魔力の練習の場にしていたところ。

そこに、大きな鹿?の様な獣がいた。

白毛に立派な一角、目が……四つある。


「何これ?」

「……エルク、だな」

「魔獣でしょう!?」


どう見ても、魔獣だ。

ヘリオだって、答えに迷ったから返事が遅かっただろうに。


「うるせぇな。魔獣は元からいる獣が変化したもんだから、根本的に変わんねーんだよ。ほら、見ろ。エルクだろ?」

「何処が?一角だし、目が四つもあるじゃない?」

「そーゆう変化しただけだって。大人しくて可愛いぞ。……お前より」

「その余計な一言が腹立つわね!」


あなたよりは可愛いとは思うわよ!


私がつい大きな声を出しても暴れることはなかったから、確かに大人しいのだろう。

このエリク……が、背に乗せて町まで連れて行ってくれるらしい。


「よろしくね」


挨拶代わりに首を撫でると、頬を寄せ、擦り寄って来た。

うん、そうね。可愛い。ヘリオなんかよりずっと。









【危ない魔法使い】






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