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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
五章
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11、師とは言えない師


「出来たわ!」


二週間も掛かったが、枝を隙間無く魔力で満たした。勿論、以前の様に圧縮もしてはいない。

森の中で、いつの間にか用意された木で出来た長椅子に座って練習を続けていたのだ。


私の座る椅子の端とは反対側の端にだらけて座る……というより、横になっていると言える体勢のヘリオは「へぇー」と気の無い反応を返して来る。

ほら!と目の前に見せ付けると「やっとか」とこの頑張りを否定されて、ムッとしてしまう。

これまで、魔力なんて殆ど使ったことの無い初心者なんだから、よく頑張ったでしょ!?もう!


「次はその維持だ。それなら、飛散しても周囲に害は無いから何処でもやれる。維持(キープ)したまま日常生活を送ってみろ」

「え、維持したまま!?」

「寝る時は解いても良いぞ」

「日常生活って」

「今までやってただろ?(まきぎ)拾ったり、ルミ婆の手伝いしたり」

「まさか、この枝持ち歩けと言うの?」

「何?イヤ?」

「それは……」


まぁ、嫌ね。

何処からどう見ても枝でしか無いもの。


ジッと見られた気がしたかと思えば、ヘリオは身体を起こして私の手を掴む。

矢鱈、手を掴んでくるのよね。何なの?


掴んだ手を引かれ、私が……倒した木の上部が転がる前に来る。

いったい何なのか、首を傾げていたら……ヘリオが空いた手を動かすと木が何か細長い物に変わっていく。

これは……。


「杖?」


そう、魔法使いが使う様な杖。

ヘリオの手がそれを握ると、こちらに差し出す。


「これなら良いだろ?後でちゃんとしたヤツ用意してやるから、今はこれで我慢しろ」


我慢……?


月を思わせる先端に、美しい細工が施された柄。

木だけで作られた物の中でも最上の杖だろう。


これはちゃんとしていないのか?

渡された杖を手にして、じっくり見ても違いが解らなかった。


「でも、これを手に持って作業はし難いわ」


枝より嵩張るもの。


「魔力なんて手に持たなくても込められる様になれよ。言っておくが、戦闘中なら手に持ってから魔力を込めてたら死ぬぞ?腰にぶら下げるなり、背負うなりしてる時から魔力は込めておくもんだ。抜いてから、即相手の頭に振り下ろせるからな」

「………………」


何の講義よ。


戦闘という戦闘はする気はないわよ?

身を守りたいだけだもの。

まぁ、身を守る上でもそうしていた方が良いかもしれないから、やってはみるけれど。


手にしていなくても、魔力を込めるか。

杖と触れたところを意識して流せば良いということかしら?

腰に下げられる長さなので、後で腰紐を用意しておかなくちゃ。


とりあえずは、帰るまで杖に魔力を込めて維持することに集中した。

歩いているだけで少しずつ零れていくのが問題ね。

集中、集中……!


何とか、腰に下げた状態でも魔力を込められる様にはなった。

数日経てば、歩くだけなら維持も。

だが、刺激があると飛散してしまう。特に、グランはいきなりじゃれ付いてくるので、その度に。

魔力も何度も込める直しては飛散させる。時には込めている最中にも飛び付かれるのだから、堪ったものではない。

「良い練習相手じゃねーか」と笑うヘリオを魔力を込めた杖で殴ったこともある。「師匠に何すんだ、バカ」と言われるけれど。

木みたいに折れることも、たん瘤も出来ない頑丈さだ。

魔力で強化でもしているのかしら?


ヘリオと共にいる時間が増えて、お兄様には「仲良くやっている様だな」と微笑ましげに言われて何とも言えない気持ちに……。

仲良くはないわ!

前にも増して揶揄ってくるし、その度に殴ってやっているのよ。


しかも、態と殴らせてるのも気に入らない。

「だんだん魔力維持出来てきてんな」と殴った後の杖に残る魔力量を指摘してくる。


いつか、ヘリオが防ぎ切れない魔力で殴ってやるわ!

こんなおちょくり方をして、私の魔力の師なんて言わせない。









【危ない魔法使い】






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