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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
四章
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13、残りの薬(side.S)


“扉”のことで気を揉んでおられるお兄様の為に美味しいお茶を淹れて差し上げようと朝から王宮に向かいました。

しかし、また邪魔が。

ノワールの後継に仕事の邪魔だからと、執務室にも入れてもらえません。

少しはしたないけど、中のお兄様に入れて下さいと声をあげてお願いしましたが、ノワールの後継が自分のところの騎士に(わたくし)を追い返させたのです。

(わたくし)に触れていい男性はお兄様だけだというのに、なんて無礼な!

お父様も言っていますが、ノワールは品位に欠ける家なのです。古いだけの、老害のような家。早く無くなってしまえばいいのに。


お兄様のお仕事が休憩に入る昼頃にようやく会えました。

お茶は昼食後にとのこと。


お昼をご一緒したかったのに、お仕事の都合で片手間で食べられる軽食で済ませると言っていました。

そんな食ではお体を壊さないか心配ですが、少しでも満足して頂けるように美味しいお茶を淹れます。


軽食を食べ終わった頃にお茶を持っていきました。

残りの薬を全て入れたお茶。

薬は無味無臭なのでお茶の味を邪魔することはなく美味しく飲んで頂けるでしょう。

これで、お兄様は完全に悪い魔女から解放されて正気に戻ります。


早く(わたくし)を貴方の幸せなお嫁さんに……。




────ガシャン。



……え?


お茶を飲み終わったお兄様の手から、カップが落ちたのです。

「うっ」と呻く様な声を出し、胸を押さえます。顔色がどんどん悪くなり、額に汗を滲ませて…………(わたくし)の目の前で、倒れました。

なぜ?

ノワールの後継がお兄様に駆け寄り、声を荒らげます。「今すぐ医師を呼べ!」「ミュロスの娘を捕らえよ!」と。

ノワールの騎士たちが執務室に何人も入ってきて、乱暴に(わたくし)を押さえつけます。

(わたくし)はミュロス公爵家の人間なのに、なんて無礼な!

声をあげても、態度を改めてません。

そうしている内にお兄様を連れて行こうとするのです。

駆け寄りたいのに邪魔をされて駆け寄ることも出来ません。(わたくし)光の魔法(ちから)なら、お兄様を癒して差し上げることが出来るのに。

そのせいでお兄様にもしものことがあれぱ、許しません。絶対に、許したりはしません……!


「離しなさい!(わたくし)を誰だと思っているのですか!?っ……お兄様!お兄様っ!!!」


(わたくし)のこうした言葉をまともに聞く者はいませんでした。

ノワールの騎士たちに王宮の一部屋に閉じ込められてしまったのです。


あぁ、悔しくてたまりません。

お兄様が倒れられるなんて……。

それを癒せないなんて。

誰かが毒を盛った?

(わたくし)を嵌めるためにきっと軽食に毒を盛ったのです。


……誰か、ではありませんね。

悪い魔女(ディアーナ)です。こんな姑息なやり方をするのは!

(わたくし)と仲睦まじい様子をどこかから隠れて見て醜い嫉妬をしたのです。

洗脳が解けて自分から気持ちが離れたお兄様を手に入れられないならと、殺してしまおうと毒を盛ったに違いありません。

なんて酷い人!

ノワールもグルかもしれません。

同じ“悪”の血を引くのですから。


それから数日、軟禁されました。

お父様にも、お母様にも会えず。侍女さえ付かないままです。

部屋で質素な食事が運ばれてくるのを待つだけでした。

お兄様の容態を聞いても答えてはくれません。

不安ばかりが募りました。

不当な扱いをされるのですから当然です。

食事もあまり手を付けられません。

今度は(わたくし)に毒が盛られるかもしれないのですから。安心して眠ることも出来ませんでした。


数日後に部屋から出され、お父様に会えた時は安心して涙が出ました。

この不当な扱いをお父様が怒って下さったことにも安心しました。

そして、一緒にノワールに対して抗議するために王太后様(おかあさま)のところへ。


しかし、王太后様(おかあさま)(わたくし)たちの顔を見るなり「自分達のやったことを理解していないのか!?」と叱咤するのでした。


……なぜ?









【危ない魔法使い】






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