表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
四章
76/101

11、此の親にして此の子あり(side.G)


「あの子を大切に想ってはいるが、それとお前のことは別だ。王太后に気に入られていようと、(わたし)からも同様に気に入られていると思っているのか?自惚れもいいところだな」


王太后に気に入られている理由も純粋なものではない。

ミュロスは欲が深く、欲に素直だから、扱い易いだけだ。父も、その娘も。


図星だったのだろう。

顔を赤くして、怒りを滲ませている。

まぁ、掴み掛かって来ようものなら脇に控えるニュイテトワレに斬り伏せられていたが。

反応は気位だけは高い低位の貴族だね。少し、本当のことを言われただけで感情を隠せなくなるなんて。

ノワールやグリーズぐらい何を考えているか解らない様にならなければ、重要な(ポスト)は任せられないよ。

現在(いま)はまだ外交はしていないが、何れは始めるだろう。

その時、国の顔とも言える立場になるだろう公爵家の者が……その当主がこれでは先が思いやられる。

ミュロスは必ずその(ポスト)に名乗りを挙げてくる。外貨を自分の懐に入れる為にね。

そうなる前に、潰しておかないといけないかな。

息子の方は幼いながら、利口だ。

早く後を継いでほしいね。


「あの子がどういう立場になろうと、ミュロス家を特別に扱うことはない」


ソフィアのことは匂わせとくべきかな?特別に想っている様に。

どちらも特別に扱うつもりはないけど。


「お待ち下さい!」と言う声がするが、待ってやる必要は無い。

背を向け、お前との話は終わりだと示し、自室に向かった。


自室の扉の前に立った時に違和感を覚えた。

中に誰かがいる。

気配を隠すつもりは無い様なので、刺客ではないだろう。

ニュイテトワレを見ると首を横に振り、肩を竦めた。中に誰がいるか分かっているのだろうね。その返しで私も予想出来たけど。

この時間に婚約者でもないのに、男の部屋で待つなんて常識がないのかな?

夕方逢った時も変に期待していたみたいだし……。

軽く見ても、なんていうか……脱がせ易そうなドレスだった。

正直、引いたからね。表情には出さなかったけど。

露骨過ぎる。

なんで解ったかというと、私がディナに贈りたいと思っていたドレスの型だったからね。カーティスに何度も見せてもらったから覚えていた。

好きな女性(ひと)なら兎も角、気の無い女がそれを期待して着て来ると酷く冷める。

……ディナに贈るのは止めようかな。

下心に気付かれて、嫌われたくないし。

こうして、客観的に見れば気持ち悪かった。

早めに気付けて良かったよ。そういう意味ではソフィアに感謝だね。


で、あのドレスのまま私の部屋で待っているの?

まさか、お風呂に入って、寝着に着替えてはいないよね?

思い込みの激しい子だから、有り得なくないところが怖い。あの子だけじゃなく、周りも一緒になって思い込んでいるから余計に。

ニュイテトワレがいるから、何事もなく済むのは解っていても嫌だと思うよ。

どちらにしても、笑顔で抱き締めるぐらいしないといけない。

惚れ薬が効いている様に見せないといけないから。

溜め息が出る。

無心にならないと……。


扉を開けたら、何かを言う前に私の胸に飛び込んで来た。

危ないな……ニュイテトワレに斬られていたかもしれない勢いだった。剣を抜く前に止まったから良かったものの、ここで斬られていたら、愛する者を喪って嘆く男を演じないといけなかった?ゾッとするよ。


「ソフィア?」


内心は隠して、出来るだけ穏やかに声を掛けた。


「お兄様……お兄様、ひどいです!(わたくし)を一人にするなんてっ」


あぁ、まだ事態が解っていないのか。

ミュロス家の者なら、すでに話はいっている筈なのに。


「酷い?どういうこと?」


よく解らないことは、聞いてみるしかない。


「だって、お兄様が必要なぐらいの大事ですよ!?聖女(わたくし)が傍にいてお支えしないと!それに、“扉”に悪さをした不届き者がいるのです……お兄様以外に誰が聖女(わたくし)を守って下さるのです?」


……そうきたか。

此の親にして此の子あり、って言葉があった気がする。

この世は聖女中心で回っているのかな?









【危ない魔法使い】






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ