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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
四章
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9、誰が王か(side.G)


王太后は何も言わずに出て行った。

その表情は他人から見れば怒りを表している様に思えただろうが、あれは……哀しみだ。

息子に邪魔と言われた所為?

若く未熟な子供に実権を奪われた所為?

推し量るには、あまりに気持ちが離れ過ぎてしまった。

吐き出したくなる溜め息を呑み込む。


「陛下、王太后様は陛下を想って助言して下さっていたのですよ」


酷いことを、と言いたげにミュロスが言う。

助言?面白いことを言うよね。


「ならば、何故私の言葉を聞こうとしない?」


助言と言うなら、聞くべきだろう?

しかし、王太后も、ニュイテトワレとグリーズ公爵以外の貴族達も誰一人として私に視線さえ向けなかった。


「私の為と都合の良いことを口にしながら、自分達のことしか考えていないのだろう?違うなら、態度で示せ。国の長は王太后ではなく(わたし)だ」


当たり前のことを言わせないでほしい。

頭の悪さしか感じさせないから。

一部は不満を滲ませる表情をしていた。

王太后に忠を誓うことで多くの利を得ていた位の低い貴族だね。

また一部は頭を下げ、忠を示していた。

内心はどうかは知れないが……。


「では、今回の責任は誰に負わせるつもりで?」


頭の悪いミュロスはまだその話をしたいらしい。

この機に力有るノワールとグリーズを落としたいのだろう。呆れる。


「先程言ったことを聞いていなかったのか?今、誰が責を負うかは無駄な話だ」

「しかしっ……!」

「“扉”の魔力は元より、直に枯渇していた。充填する者がいないのだからな。それが少し早まっただけのこと」

「だとしても、猶予はあったはずです。なのに、グリーズやノワールが管理を怠ったばかりに!」

「本当にそう思うのか?」

「当然でしょう!」


馬鹿だなぁ。


「何故、魔力が失われた原因がノワールとグリーズの管理責任になる?」

「管理者だからに決まっています」

「いや、両家は飽く迄見守り役だ。管理を任せていた訳ではない。管理と言うなら、その“扉”の開閉を任せてあるミュロスになるのではないか?記述では四十年程前に“器”は満たされている。本来百年持つと云われる魔力が五十年も経たずに枯渇しようとしていた。エトやイグニスから聞いたが、ミュロスに“扉”の開閉を任せてからの十五年で驚く程早く失われていったそうだ。勿論、私もこの十年確認していた。どう説明する?」

「それは……」

「責を問われたくなければ黙っていろ、耳障りだ」


夕食時なのに、無駄話が長くて食べ損ねそう……。

そろそろ本題に入らせてよ。


「今、話し合わなければならないことは何か解る者はいるか?」


貴族達を見据え答えを待つが、誰も答えない。

大丈夫か?この国は。


「国の政を担う者が嘆かわしいな」


ニュイテトワレに視線を送ると、溜め息を吐いた。


「陛下、私から宜しいでしょうか?」

「うん、いいよ」


馬鹿共に教えてあげて?


「では、失礼して。“扉”による物資の輸送を行っていましたが、“扉”が使用出来ない今後各地で物資が不足し民が困窮するでしょう。その対策をせねばなりません」

「そう、まずは民を案ずるべき時だ。最後に“扉”を開いて一月近く経つ領は直に不足するだろう。日が経てば、各地にそういった場所も増えてくる」


対策するにもすぐにどうにかなるものではない。

“扉”を使えないから、輸送は足や馬車になる。

時間は掛かり、届くまでに確実に足りない物が出てくるだろう。特に食料は。

領主達にはもしもの時の為に食料も含めて物資を備蓄させている。

困窮するなら備蓄を民に、と言えばたじろぐ者がいた。

さては、備蓄品を横流ししているな?

他にも無償でということに良い顔をしない者も。

民から税を取って備えた物なのだから、当然だろう。何の為の税だと思っているんだ?


お前達が出し惜しみし民が亡くなることがあれば、その命で償ってもらう。









【危ない魔法使い】






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