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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
四章
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7、頭を悩ませること(side.G)


()は一般の騎士を装おっていたので中に入る前に別れたが、後で改めて“扉”と“器”のことで話をするべきだろう。

それに、ここを出れば、すぐにこのことで話し合いの場が設けられる。

どちらにしろ、ここにいても何も事態は進展しない。


ニュイテトワレとイグニスを連れ、一般の騎士でも入ることを許されたところまで戻ることにした。

階段を上がる度に、慌ただしく行き来する騎士の足音やが何か揉める声が聞こえてくる。予想は出来ていただけに呆れてしまう。

ミュロスの騎士達が一方的にグリーズの騎士達を責める怒号ともいえる声が響く。

“扉”を自身の手中に置きたいミュロス公爵だが、深くには入れないのでどうしても入ることが許されているノワールかグリーズ、ブランシュが受け持つしかない。ノワールは王家の護衛が主で、ブランシュは貴族ではないからと国の中枢を任せたくはないと貴族達が主張したことで王太后が候補からも外した。残ったグリーズがとなったが、ミュロス公爵は同時期に公爵となった彼の家が気に食わず、今回の様なことがあると必要以上に責め立ててくるのだ。騎士達も主人を習っているのか、日頃の鬱憤も含めて口汚く詰る。

日頃、品性云々を言っている奴らの言葉じゃない。

グリーズ側の騎士は今の当主と同じく、言いたい奴には言わせておけという姿勢(スタンス)でまともにミュロス側の言葉は聞いていない様に思えた。イグニスも溜め息を吐くだけで明後日の方向を見る。

ついでにニュイテトワレにも視線を向けるとあからさまな目の背け方をされた。

……あぁ、これは私に奴らを黙らせろと言っているんだね。

真面目な様に見えて、面倒なことは丸投げしてくるんだよ。最近は特に。

仕方がないから、少し凄んで散らせた。王位はこういう時便利。

後はイグニスにここのことを任せて、王宮に戻った。


自室に戻れば、()が何れ来るだろうが、案の定王宮に着くと王太后やミュロスらが集まって待っていると言われた。

正直、奴らとの話し合いの時間程無駄な時間はない。碌な案も無く、責任転嫁しかしない奴らとの話しなど。

行かなければ、間違いなく全ての責をグリーズに押し付けて事を治める。何の解決策も無いまま。奴らは自分達さえ満たされれば良しとするから、民が困窮していても気にも留めず、各所の少ない物資を独占する。物が十分あっても、物価を高くし民を苦しめるだろう。金儲けの機会と考えていそうだ。

そうしない為に苦言を呈しておかなければならない。


とはいえ、顔も見たくない奴らと逢うのは億劫だ。


「ディナに逢いたい……」

「陛下」

「解っているよ。でも、言いたくなる」

「…………」


本当、ディナに逢いたいよ。

ディナに逢って安心したい。


けれど、奴らの前ではこれから反対の行動を見せなきゃいけなくなってくる。ソフィアに惚れた素振りが必要だからね。

早くあの気持ちの悪い薬を断ちたい。いや、薬を断ったら断ったでもっと考えられないことがある。

抱き締めるだけなら未しも、ディナを悪女(ヴィラネス)に仕立て、ソフィアを新たな婚約者にして……婚姻も間を置かずにする様だから、キスやそれ以上も求められる。

そういった意味で好きでもない女を?

惚れたフリにも限界がある。

ソフィアの表情から期待しているのが目に見えて解るから、どう誤魔化すかが最近の悩みだ。周りもお膳立てする気満々だし。

今日ソフィアを王宮に泊める為の部屋を用意しているとニュイテトワレが何処からか聞いてきた時は頭を抱えた。

婚約者(ディナ)のことを、私がまったく気にも留めていないのだと思っているからだろう。そう仕向けてきた訳だが……既成事実まで作って、早く婚姻させたいらしい。婚姻してから間を置かずに婚姻する理由は子が出来たか、出来たかもしれないと急いだからとしたいのだ。

媚薬まで盛られる可能性があって怖いな。

流石に夕食前のお茶には淹れないだろうと飲んだけど、この先は考えものな気がする。


だから、“扉”の一件はタイミングとしては起こってくれて良かったかもしれない。

(わたし)が出向く程の急事である必要があるから。……しばらく、立て込んで逢えない体を装える。









【危ない魔法使い】






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