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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
三章
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幕間、主の《じかん》


窓際に置かれた椅子に腰掛け、日を浴びていた。


「今更、エマの(のろ)いの噺を持ってくるとはね」


窓の外を眺めている様で何処か遠くを見つめて、彼は忌々しげに呟く。

独り言の様にも聞こえるが、誰かに語り掛ける様でもある呟き。

彼以外、誰もいないと思われる部屋で別の声が聞こえてくる。


「まったくだな」


彼は驚いた様子も無く、口元を緩める。


「彼女は誰のことも恨んではいなかったのにね」

「それは正しくねぇな」


いつの間にか、部屋の真ん中にあるテーブルと共に置かれたソファーに深く腰を落とす者がいた。

声の主だ。

黒いローブを纏い、フードを目深に被った男。


男に対し、「そうなの?」と首を傾げる。


(のろ)いってのは悪意から生まれるものだ。綺麗な心のままじゃあ生まれない」

「確かに。今の俺なら、誰かを(のろ)えそうな気がするよ」

「止めとけ。……人を、(のろ)い続けた結果どうなった?そのツケを払わされることになったのは()()()だ」


ぶっきらぼうな言い方ではあるが、その言葉の奥には心配という感情が込められていることを知っている。

「因果応報だね」と言えば、男は苦々しく「悪いな」と零した。

彼は、別に男に謝らせたい訳ではなかった。


『お前は何も手放す必要はないよ』


他の誰でもない、自分自身の行いを思い返しても言えたこと。


『護り切れないものがあるなら俺が護るから』


優しく手を差し伸べ、期待させるだけさせて、何もせずに勝手に逝った。

自嘲する。

自嘲して、気持ちを改める。


「貴方には感謝しているよ。機会(チャンス)を与えてくれたから」


男に向き直り、笑う。


「あの子の……ううん、あの子達()()を今度こそ護る生命(じかん)をくれたことを、感謝する!」


そんな彼を見て、男も口角を上げた。

目深に被ったフードに隠れた、黄金色の……宝石の様な眸を眩しげに細める。


「じゃあ、もう()()は必要()ぇな……大魔導の主」









【危ない魔法使い】






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