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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
一章
6/101

5、後悔しかない人生


最も偉大な魔法使いを『大魔導主(だいまどうし)』と呼ぶ。

魔導大国(フィゴナ)建国時から他国の侵攻を退ける要となってきた、国で最も“力”の有る魔法使いに与えられる名。

そして、王と同等の立場と権限を持つ。


建国時から、王と共に魔導大国(フィゴナ)という国を創り、護ってきた者だ。


当代の彼は、数年前に突然現れた。

名も、顔も知れない。

名乗りはしない、フードを深く被り顔を隠しているから。

当時はまだ子供で、歴代最年少だろうと思われた。

得体の知れない者を……と声は上がったが、彼は全ての者の口を塞がせる程に強い“力”を持っていた。

認めざるを得なかったのだ。


そんな彼が何故私を……。

今、聞いたところで答えは無いかもしれないが、逢ってみる価値は十分にある。


王都に向かう流れになっていく中、先に彼が何処にいるかを調べさせる。

私個人に使える者はいないので、お兄様から信頼の出来る者を借りた。

調べる内容は勿論伝えなければならなかったが、問題無い。

王都に行くのだから、偉大なる魔法使いに逢ってみたい。

今の私は、子供の無邪気な願いとして誤魔化すには丁度良い年頃だった。

大魔導主(だいまどうし)に逢えるのは、王と、運良く王と同席出来た者ぐらい。

優秀な魔法使いたちが集められ、研究などしている魔塔の主でもあるが、彼は殆ど関わることが無いというから、そちらに期待は出来ず。

だから、調べるしかないのだ。

自宅が何処に在るか分かればいいが、神出鬼没で普段の所在も不明と有名だった。

最低、よく見掛ける場所だけでも分かれば良い。


心配は、今の子供の私が協力を求めて応じてくれるか。

逢えたとして、それが叶わなければ無駄になる。

私の今の状態に関する何かを知っているかもしれないと勝手に期待しているだけで、何も知らない可能性もある。いや、その可能性の方が高いだろう。あれ程の感情を見せていた彼が、知っていて、何の接触も無いというのは考え難いからだ。


こちらでも調べたいが、知る者などはいない。

聞けても噂で広まっている程度。他国の軍隊を一瞬で退けた、魔法で数キロメートルに渡る大穴を空けた、と言ったものだ。


かつての私は何をしていたのか。

知る時間も、立場も、有ったのに何一つせず。

ただただ無駄な時間を過ごしていた様に思える。

実際にそうだろう。

何もしていない。

何もしようともしていない。

愚かな自身に自嘲してしまう。


後悔しかない人生だった。

そう思う資格も無いのかもしれない。


けれど、後悔している。




一番の後悔は、()()()()()()()()()()こと。


私の大切な想い出の中にいる、()()()()()()()()()()を。









【危ない魔法使い】






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