3、違う道筋
数日が経っても、夢から覚めそうにはない。
では、あちらが夢だったのか。
随分、現実的ではあったのだけれど……。
家族で何度も食卓を囲んだ。
温かな家族との会話に、素朴だけれど美味しい食事。
普通だったことがこれ程、幸せなことだとは思ってもみなかった。
それに、自然が豊かなこの土地の水も美味しい。
王都の水は私の身体には合わなかったのか、お腹が少々……。その所為で、王妃の務めも果たせなかった。ずっと、部屋とあそこを往き来するしかなくて……。
悔いが残っているとしたら、そこだけ。
どんな理由であれ、陛下を拒絶することになってしまったのだから。
恥ずかしがらず、話していれば理解して頂けただろうか?一国の主なのだから、理解して頂けたかもしれない。
それを怠った為にすれ違いと誤解が生じてしまったのだろう。
私に罪があるのだとしたら、それだ。
王都には戻りたくない。
ただ、あの方とは……ちゃんと言葉を交わしたかった。愛情は、まだ無かったけれど、夫婦だったのだから。
「…………ーナ、ディアーナ!聞いているのか?」
「あ、申し訳ありません」
お父様のお話の最中に考え事なんて……。
今度はお父様をしっかりと見て、聞く姿勢を取る。
「……まだ少し早い話だが、お前には王太子殿下の婚約者候補の話が来ている」
婚約者、候補……。
あぁ、もうその話が来ていた時期だった?
私はもっと拓かれた都市に行ってみたくて、反対するお兄様に我が儘を言って王都に。候補として城に上がれば、外に自由に出られなくなるから、街を楽しむ為に早くにあちらに向かったのだ。
今、ここで、候補の話を嫌だと言えば、あの未来は回避出来る?
……ちょっと待って。
あの時、お兄様は反対したけど、お父様は……。
「貴族でもない我がブランシュの名が挙がるとはな。お前が王妃になれなかったとしても誉れとなろう?ディアーナ」
乗り気、でしたわね。
お父様は普段は穏やかな方だけど、怒るととても怖い方。
ここで断ったら、お怒りになるか。
候補として城に上がることが避けられないなら、早くに行って協力者を捜すべきかもしれない。
どちらにするのが、私にとって正しい選択なのか。
「無理して王妃になろうとする必要はないが、この先良縁には恵まれる筈だから、少し考えてみたら良い」
え?お兄様?
反対、しないのですか?
どうして……。
夢が、只の夢ということ?
でも……。
わからない。
回避を考えたから、強制力が働いた可能性も?
……大丈夫、これは強制ではない。
考える余地がある。
「はい。私が王妃など畏れ多いことですが、よく考えてみます」
今は、時間を少しでも稼ぐべきだろう。
これが本当に同じことが起きていくのかを確認しなければならない。
お兄様は、違うことを口にした。
なれば全てが同じとは限らない。
違う道が、私にはあるのだろうか……。
【危ない魔法使い】