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危ない魔法使い  作者: 一之瀬 椛
一章
3/101

2、幸せを願う


これが、死後に見る夢なのか。

それとも、これまで見たものが夢だったのか。


ふふ……物語に、死後に過去に戻ってやり直すものもあった。

そんなことは有り得ないとは思うのだけれど。

実際はどういったことなのか、まずは私の()を確認してみないとね。




振り返って、もう一度、その景色を見る。


かつては、かつての十二の私は、ここから遠くを眺めていた。

こんな田舎ではなく、もっと……もっと、広い世界を、知らない世界を見たいと願っていた。


けれど、知った世界は、私が望んだものじゃなかった。


「我が儘ね……」









【危ない魔法使い】









我が国フィゴナは、魔法使いの国として知られる魔法に長けた国。

土地もまた魔法に満ち、その辺に生える草木や落ちている小石にも宿っている。

他国の土地にはないことで、魔法の力を身に付け出した国々がそれらを求めて……いや、狙って、というべきだろう。押し寄せてくる。

時には武力を行使して、だ。

その為、国境沿いは特に狙われ易いのだが、フィゴナには周囲を囲む森がある。恐ろしい魔獣の巣窟になっており、他国の者では数分と持たない危険な場所。

それにより、国は護られている。

ただ、所々に穴はある。森の途切れた場所が。


私の家は、この自然に囲まれた国境沿いを治める領主で、その穴を護る役割を担ってきた。

フィゴナで一番、強い騎士の家。

貴族ではなかったけれど、私の自慢だった。


屋敷前に、自分が帰ってきたのだと実感する。

幼い頃は、早くこの家を出ようと考え。

大人になれば、早くこの家に帰りたかった。

これが夢だとして、ここで夢が終わってしまってもかまわない。

今、幸せだと思っているから。


「ディアーナ?……帰ったのか?」


……あぁ、なんて幸せな夢だろう。

お兄様だ、お兄様が目の前にいる。


清く美しい(ブランシュ)の申し子。

盲目でありながら、それを感じさせない立ち居振舞い。

私が一番憧れた方。


お兄様の手を握る。私はここにいる、と。


「ただいま帰りました、お兄様」

「お帰り、ディアーナ」


落ち着いた、優しい声にホッとした。

あの頃と変わらないお兄様。

我が儘ばかり言ってごめんなさい。

今の私が言うには、まだ早い。

けれど、あの頃のような我が儘は言う気はない。


私がいなくなった後、お兄様は……家族はどうしたのだろう。

どうなったのだろう。


もう一度、家族との時間を過ごして、私は決意する。

もう、繰り返さない。

この夢がいつまで続くとしても、お兄様たちと幸せに暮らしていけたら……それでいい。






思ってはいても、時は同じように繰り返される。


変える為に必要なことは……。

変える為に、私がすることは……。


我が儘は、また言わねばならない時が来るかもしれない。






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