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幕間、獣の行方は…
赤い獣はヒトリ、行く。
足跡を残さず、匂いも残さず。
「あの方は、まだ囚われている」
嘆く様に、呟く。
「これじゃあ、だめ」
呟いては、進み。
「あたしがぁ、解放してあげなきゃ」
進んでは、声を弾ませていく。
「あなたから、自由を奪っている“楔”をぜーんぶ……今度こそ壊しますねぇ」
ふふふ、笑いを零す。
ゆっくり大きく踏み出して両の手を広げ、その手で游がせた。
周囲から小さな光が点々と浮かび上がり、手の動きに合わせる様に踊る。
それもほんの僅かな間。
獣は、手の動きを止め、足を止めた。
そして、静かに佇み、暁の大空を見上げて、また呟く。
「だから、あたしだけを見て……」
祈る様に……。
【危ない魔法使い】