17、再会と約束を胸に
城に上がる前には、お兄様とも出掛けた。
見えないお兄様の代わりに私が口で見えているものを説明して、街を回る。上手い説明とは言えなかったが、楽しんで下さっている様なので安心した。
もっと沢山、共に出掛けられたら良かったのに。
五つも歳が上だと、私が歩ける頃には、嫡子のお兄様はすでに跡取りとしての勉強を始められて、共に遊ぶことも少なかった。
かつては、王妃候補になることを反対されていたから領地を離れる時に逢ったのが最後。
過ごした時間は短かった。
現在なら、もっと時間を過ごせるのではないだろうか。
城に上がってからは、頻繁には逢えずとも候補者には定期的に家族と過ごせる時間が与えられる。無事、候補者としての努めを終えて城を出たら、嫁に行くまではまた共に過ごせる。
「お兄様、また一緒にお出掛けしましょうね?」
「あぁ。今度は……少し遠出をするのも良さそうだ」
「遠出!本当に?冗談なんて言わないで下さいよ?約束です!」
「冗談じゃない。約束だ。ディアーナが喜びそうな候補地を選んでおくよ」
「お兄様も行きたい場所ですよ?」
「そうだな」
お兄様からも嬉しい提案をされて、数年後になるだろう約束に胸を踊らせる。
ますます死ねない理由が出来た。
それが嬉しい。
エオとの再会。
お兄様との約束。
私はこの二つを胸に城へと上がる。
そこでの出逢いは……また私の運命というものを変えていく。
誰との出逢いが、良いもので、悪いものであったかは、その時が来てから解る。
ただ、やはり……
あなたとの
あなたたちとの出逢いは、私にとっては掛け替えのないものだったことは確か。
【危ない魔法使い】
第一章……完